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とりあえず風魔に官位を与えるために色々やらねばな

 さて、山窩である風魔は朝廷の支配下にない者、まつろわぬものとして差別の対象になっているのが実状。


 彼らが渡来人の末裔である可能性が高いのは足柄の直ぐ側に秦野があり、渡来人である秦氏と秦野は深い関係があるらしいからだな。


 もっとも狩猟採取などがメインの生活であるということを考えると、縄文系の生き残りという可能性も高いが。


 で、彼らの頭領である風魔小太郎へ官位を与えることに関して言えば難しいといえば難しいし簡単といえば簡単だ。


 これはすでに鎌倉時代の承久の乱で荘園を大きく減らした朝廷が、儀式や法会の資金を調達するため、金銭と引き換えにして衛府や馬寮の三等官(尉、允)に御家人を任官させたり、有力御家人を名国司、ようは実体のない国守の名称に補任することがたびたび行われており、衛門や兵衛といった名前を武士が称する用になった。


 後の南北朝時代にも北朝方の足利尊氏や南朝方の北畠顕信らがそれぞれに配下となった武将に、叙位任官を朝廷に取り次ぎ与える風習があった。


 これが、室町時代以降になると、守護大名が家臣や服属してきた被官に対して官途状を発給し受領名を例えば駿河守とかを授与し、その官名の私称を許す事例が表れるようになった。


 無論これは正式に与えられる場合もあるし、朝廷の関知しない僭称である場合もあった。


 でそういった事情をよく知らないと上総守を名乗ってしまったりもするわけだ。


 まあ僭称の場合には、公式の場では官名を名乗れないのでそれを略したりもするわけだが。


 また、先祖が補任された官職や主家から与えられた受領名を子孫がそのまま用いるケースも現れ、朝廷が関知せず、武士が官名を私称する自官という慣習も定着している。


 そして正七位上の左衛門少尉、右衛門少尉、左兵衛少尉、右兵衛少尉あたりは鎌倉時代以降、官職としては有名無実化したが、武官の職は武士から広く好まれ鎌倉から江戸期を通じて多くの武将たちが任ぜられ、江戸時代には村において責任ある立場の家の成人年齢に達した者や、寺社や橋などの造営のための寄付を行った者などに対して、村の合議を経てそれが認められればその名が与えられた。


 ちなみに遊女や猿楽、浄瑠璃などの役者が太夫を名乗るのも同様だな。


 で正七位上くらいであれば素性がはっきりしない地侍でも任官自体は可能だ。


 とは言え系譜として平安時代末期から鎌倉時代にかけて、摂関家領である相模国波多野荘を本領とした豪族である相模波多野氏の系譜としたほうがいいだろう。


 相模波多野氏は坂東武士にしては珍しく朝廷内でも高い位を持った豪族で前九年の役で活躍した佐伯経範が祖とされ、経範の妻は藤原秀郷流藤原氏であったため、波多野氏は佐伯氏から藤原氏に改め、藤原秀郷流を称し、波多野義通は源義朝に仕えたが、義朝の遺児源頼朝が挙兵すると、波多野義常は頼朝と敵対し、討手を差し向けられて自害し、衰退していく。


 なお丹波波多野氏とは全く別の家なのがちょっとややこしいがな。


 俺は従五位下駿河守だが被官である大道寺重時はまだ無位無官なので彼の分も官位を貰う必要があるだろう。


「お前さんが従六位上左衛門大尉、風魔の頭領が正七位上の左衛門少尉あたりが無難かね」


 俺がそう言うと大道寺重時が苦笑した。


「どうせ名ばかりなのだろう?」


「まあ、そうなんだが正式な官位をもらうというのは案外馬鹿にできんのさ」


 あの細川勝元でも従四位下右京大夫なのだから俺の従五位下駿河守というのは伊勢という家だからこそ与えられたものでもある。


 とは言え従五位上や従五位下まで「貴族扱い」で正六位上以下は地下人なのでその間には大きな壁があるのだが、大道寺家は伊勢と同じ桓武平氏維衡流のはずで俺のいとこでもあるので問題もないだろう。


 無論、将軍あてとして実際には日野兄妹や細川政元や、前の将軍たる足利義政に対しての十分な付け届けは必要だろうけど。


 そろそろ富士金山や安倍金山の採掘などもおこなうべきだろうな。

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