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この時代の食糧事情

 さて、現状の京の食糧事情だが京都の市街で合戦をしていた頃よりはだいぶましにはなった。


 現状では一日に朝夕2回の食事で白米六合や玄米四合に害獣駆除や山での狩で得た野兎、猪、鹿、羚羊、熊、穴熊、狸や水鳥などの鳥獣の肉や鮒や鯉、鮎、(カジカ)などの川魚を煮たり炙ったり干したりしたものに野菜の漬物と味噌汁という献立になっている。


 禅宗の影響で、動物性の材料を一切用いない精進料理も発達したり、神社の物忌み期間中の獣食の禁忌も厳しくなったりして、平安時代には禁止されていなかった鹿や猪肉までもが禁令に含まれ、その期間も数十日程度にまで長くなっているが、その他の宗派では僧侶も肉食をするようになり、野兎や水鳥の肉は普通に食べる寺院も多くなっているらしい。


 これは精進料理にこだわっていては馬匹として大豆が武士によって買い占められ、値段が高騰する豆腐が致命的に不足する状況になっているのも理由ではあるようなのだが。


 またその時時によって間食をとったりはするけどな。


「もう少し食事における米の割合を減らすというかおかずの割合を増やせればいいのだがな」


 一緒に飯を食っている大道寺重時が苦笑して言う。


「我らはまだまだマシな方でありましょう」


「まあ、たしかになあ。

 米もろくに食えないやつもまだまだ多いことを考えれば贅沢か」


 戦前くらいまでの日本的な食事の原型はこの時代には出来ていたと言ってもいい。


 それにしても米がほとんどなのは糖尿病などにも繋がりそうであるし、もう少しなんとか出来ないものだろうかとは思うのだが。


 そして、室町時代では米の基本的な調理法が蒸すから炊くへと変化している。


 ただし伝統を守ることにうるさい朝廷の皇族や公家は、米を蒸した「強飯(こわいい)」を食べているが、武士やそれなりに裕福な商人や地侍などは羽釜で煮た後に蒸すという方法で”炊いた”やわらかい「姫飯(ひめいい)」を食べるようになっている。


 もっとも米を炊くということが出来る羽釜自体は平安時代からあったらしいが、成人男性は基本的に炊いたものは食べず、女性や老人、幼児などが食べるものと区別されていたらしい。


 そして「餝飯(ほうはん)」と呼ばれる僧の料理が元の、飯の上に野菜や乾魚を細かく切って煮たり焼いたものをのせて、それに汁をかけて食うお茶漬けもしくは雑炊のようなものも食べられるようになっていて、鮒などの魚を飯と一緒に食べる「なれずし」なども食べられるようになっている。


 調味料としてたまり醤油や昆布や椎茸、なまり節のような柔らかい鰹節による出汁が普及し始めた時期で、料理には出汁を使う事が普通になっても来ていたのだが、現状では昆布だの椎茸だのを入手できるほど余裕はない家が多い。


 そして味噌に出汁が使われるようになったことで、だし入りの大豆を擦り潰した味噌汁が作られるようになってもいる。


 鎌倉時代までの、味噌は粒を残したままの納豆のようなもので、大豆を柔らかくして汁に入れて食べるのが目的でもあった。


 武士の戦場での主食は玄米をかために煮たおかゆで、おかずは鯉や鮒、鮎などの主に川魚の焼き物と野菜の漬物などを食べているが、笹の葉で包んだ梅干入りのおにぎりや菜飯おにぎりなども携帯に便利な食料として珍重されている。


 応仁の乱で一時中断されたが、酒宴では華やかな本膳料理が饗されていたりする。


 一汁三菜といった飯、おかず、汁物の組み合わせを本膳(一の膳)・二の膳・三の膳で食べるのだが実際には食べられず見た目を楽しむだけのものも多いから、随分と無駄なことをするものだと思うのだが、たとえば食べない餅などは最終的には神前に供えるお供え物して使うらしい


 そして宴会の際には足利義満や足利義教の時代では嘔吐することを当座会(とうざのえ)と呼んで称賛していたりもしたようだが現在では流石にそこまではやらないようだ。


 貧しい庶民は麦粥や雑穀に野草を混ぜた粥などを食べるだけだったりもするのだがな。

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