銭など寄進の品を収めるために今上陛下に拝謁することになったよ
さて師走に京の都の座や細川勝元や山名宗全のところまで駆け回り、なんとか銭4000貫(約4億円ぐらい)と下賜品として使えそうな美術品や反物、武士用の刀や具足などの物品を集めた。
「これを機会に西軍との和解の話も進めてくれないか」
「これを持って朝廷へ東軍との和解の話もしてほしい」
細川勝元や山名宗全は俺を仲介として朝廷へ和解の話をしてほしいらしい。
「か、かしこまりました」
そして応仁の乱を境にその前は7500貫文はあったらしい皇室の年収は、荘園収入で620貫文、内裏修理費としての献金や雑収入を含めてもようやく750貫文有ったかどうかぐらいまでに減っている。
だからこそ正月の行事が開催できなくなったりもしているんだよな、公家が平安京から逃げ出したのもあるけど。
だからその差分を集めよと言われてもかなり無茶だとは思うけど。
大内や細川のほうが明との独占的な交易により莫大な銭をもっているはずなんだが、双方とも軍事費に使っているからそんな余裕があるわけもない。
争っても得るものが殆どない合戦に莫大な銭米をつぎ込むって、究極の無駄な気がするんだが道理や合理性だけでは話しは進まないのが現実であれば仕方ない。
そして俺には正式に殿上可能な六位蔵人の官位が与えられ、今上陛下へ拝謁がかなってしまった。
俺は花の御所の玉砂利の上に平伏して御簾越しに拝謁をしているところだ。
「今上陛下、ご出御」
今上陛下の側付きである女官の声とともに御簾の向こうで衣擦れの音がかすかに聞こえ、誰かがそこに座るのがわかった。
「伊勢備前守従五位下平盛定朝臣が子、駿河介六位蔵人平盛時朝臣。
銭4000貫並びに米俵、絹反物のご寄進」
日野勝光は扇で口元を隠しながら言う。
「うむ、今上陛下においてはそちの寄進を許すとのことである。
喜ぶが良い」
俺は口上を述べる。
「は、今上陛下におかれましては、ご機嫌麗しく恐悦至極に存じ奉ります。
此度は過大なる官位を頂いた上で今上陛下への拝謁を許可して頂きましたこと、誠にありがたくそのお礼を言上する為に、罷り越しました」
日野勝光は扇で口元を隠しながら言う。
「うむ、六位蔵人よ、これからも今上様のために力を尽くすが良い」
「はは、誠にもったいなきお言葉にございます」
「うむ、来年もまた来て朝廷への寄進を望むと
今上陛下はおっしゃられて居ますぞ」
「は、かしこまりてございます」
こうして俺は朝廷に金づるとしてターゲットロックオンされたらしい。
同じような事は大樹である将軍に対しても行ったが、これは申次衆として仕方ないかもしれない。
なんかもう疲れ果てたし駿河に早く下向して温泉にでも入ってゆっくりしたいぜ。