第十一話 魔王
「え?」
「……?」
俺の発言により、ジュリアと魔王の視線が俺に向く。そして二人とも、俺の発言の意味が分からないようである。首を傾げた。
「えっと……ジュリアと魔王陛下の共通の話題が、俺……いえ、私なのでしょうか?」
二人の視線を受けながら、俺は疑問を口にした。思わず一人称が崩れたが、それは仕方がないことだ。何せジュリアと魔王が好き合っている筈なのに、話題が俺である。動揺してしまう。
「え? アレン様についてお話をするのは、何かおかしいのですか? 魔王様?」
「……いや? アレン王太子に関して我々が話すことに不可解さはない」
ジュリアと魔王は顔を合わせると、不思議そうにする。二人の間に好きな人同士という甘い雰囲気は感じられない。俺にとっては、この状況が一番不可解である。
「……大変失礼を承知で伺います。魔王陛下が何故、貴重な食材をご提供して下さっているのですか?」
二人の関係が俺の予想とは違うようだ。そうなると、ジュリアの幸せルートはどうなるのか分からない。先ずは魔王が国に帰らず、ブルーリナ王国に滞在している理由を訊ねる。先ずは二人の関係と状況を理解するのが一番だ。
「……? 何故か?」
俺の質問に魔王は再び首を傾げた。普段の彼を知らないが、ジュリアを幸せにできる唯一の存在として親しみがあるようだ。
「あ、魔王様。もしかして、アレン様にお話しされていないのではないですか? アレン様を元気にする為の食材を探しに往復されていましたから」
魔王の代わりにジュリアが声を上げた。何故、他国の王太子の為に魔王が食材探しに赴くのだ。本当に謎である。
「……嗚呼、そういえばアレン王太子には話していなかったな」
合点がいったようだ。魔王は頷くと、俺を見据える。魔王の口から何が語られるのかは分からない。同僚の情報では、ゲーム内ではアレンと魔王が会話することはないからだ。
「…………」
一体どのようなことが告げられるか、固唾を飲む。
「実は……我は幼少期に反乱分子との戦いで、ある人間に命を救われた。その者は結界魔法に秀でていた。魔族である我にお守りをくれた」
魔王が静かに語り始めた。その内容に驚きを隠せない。同僚からは聞いたことがない話である。ブルーリナ王国の歴史は長いが、結界魔法を使えるのは俺を含め二人だ。そして結界魔法が得意なのは一人しか居ない。
「……っ、ま、まさか……」
予想外の話に俺は驚きを隠せない。
「あの時、ブルーリナに助けられたせめてもの礼だ。命の恩人の子孫を手助けしただけだ」
驚愕する俺に、魔王は口元を緩めた。
「……え、えっと……。あ、ありがとうございます……」
まさか、初代国王であるブルーリナと魔王が関係しているとは予想外である。それにしてもいくら命の恩人の子孫とはいえ、魔王自ら食材を集めてくるとは破格の待遇だ。俺は戸惑いながらも、お礼を口にした。
魔王にこれだけのことをしてもらったのだ。後日、国を上げてお礼をする必要がある。それにして命の恩人であるブルーリナ本人ではなく、子孫に対しても恩義を感じるとは義理堅い魔王だ。流石はジュリアを幸せにできる唯一の存在である。
「気にするな。我が好きで行っていることだ」
「……それでも、ご助力とご協力を賜りましてありがとうございます。魔王陛下」
穏やかな表情のまま、魔王は気にするなと告げる。だが俺も一応は王太子だ。落ち着きを取り戻すと、感謝の気持ちを込めてお礼を口にする。
「では、アレン様の疑問は解消されたということですね!」
ジュリアの明るい声が響くが、俺の疑問は未だ解消されていない。
「いや、未だだ。ジュリアと魔王陛下は……お互いをどのように思っているのですか?」
俺は直接的な言い方で、二人の状況を確認することにした。




