9-1.
最終章スタートしました!
4月は第一王子の生誕祭がある。
王族、貴族一同が王城に集まる大規模な企画だ。
わたしはソランティア王子を助けた後から、王様と王妃から気にかけていただくこともちょこちょこあった。
この前、わたしが小さくなってしまった時は、王城でお世話になり、朝食も一緒にいただいたし…
一般人のわたしにとても良くしていただいて、いいのだろうか?と思うことばかりだ。
栄誉授与式で王様に騎士団へ入るのではなく、魔法学校の教授になりたいと伝えた。
通常、黒魔法の使い手は騎士団へ入ることが決まっている。
しかし、王様は私の望みを聞き入れてくれた。
黒魔法のイメージを変える!という私の夢に大きく前進できた。
黒魔法は、世間が恐れるほど悪いものじゃない。
私がそれを学んだのは、絶望の中で光を見つけたかったから。
自分と向き合い、心の深いところにある真実を受け入れるための魔法なの。
そういえば、一年時の合宿の頃からだった。黒魔法の本来の良さや美しさを見せたいと思ったのは…
騎士団に入るのが夢だと思っていたけれど、わたしの真の望みに従った結果は教師という道だった。
今回、第一王子の生誕祭にお招きいただいたとき、『わたしは市民ですから』と参加することが場違いなのではないかと伝えると、『あなたはもう、家族みたいなものだから』と押し切られた。
家族?どうして?と疑問に思った。
ドレスや当日のセットなども準備してもらえるという。
至れり尽くせりだけれど、頑なにお断りするのも変なので、有り難く参加させてもらうことにした。
当日は貴族であるゼロも参加するとのことだったので、ゼロにエスコートしてもらうことになった。
カリンダも参加すると聞いていた。
学校の知っている人もたくさん参加するみたいだ。
王城の会場は横にも上にも広く、天井には美しい空と天使が描かれていた。
天使の絵がゆっくりと動き、何か物語が進行しているようで、こんな魔法見たことないと感心した。
あの魔物との対峙が今も鮮明に思い出せる。
一つの世界でこんなにも違いがあるなんて…
今のこの瞬間の幸せを噛み締める。
ソランティア王子ももちろん出席している。
隣国のラングリンド王国のシランヌ王女との婚約がなくなり、王族から抜けることもあり、次から次へと貴族令嬢たちがアプローチしていた。
しかし、それよりも何よりも、わたしが驚いて思考停止した瞬間があった。
王族だけが白のタキシードを着ているのだ…
白のタキシードに金の刺繍、そして片肩に赤いマントをつけている。
わたしの頭の中で、冬の舞踏会の記憶が一気に蘇った。
校長先生からのサプライズで仮面をつけた相手も白いタキシードに金の刺繍だった。
ーじゃあ、仮面をつけた相手は…
ソランティア王子だった…?
あのときの温もり。
あの歌声。
わたしだけが知っている、やさしい瞳。
全部が一つに繋がっていく。
心臓が、バクンと跳ねた。
まだ決まったわけじゃないけど、もしそうだったらどうしよう…
一般市民のわたしと王子では到底釣り合わない。
私は市民。
しかも、黒魔法の使い手。
昔なら、忌み嫌われていてもおかしくない存在だった。
それなのに、今は王子のそばにいて…
彼の視線を感じた気がした。
これでいいの……?
こんな幸せを、私がもらっていいの……?
胸の奥が苦しくなる。
魔物を倒した時も、王子にたくさん助けてもらって、王子がいなければ成し遂げることができなかった。
生死のはざまから戻ってきたときも、一番に想ったのはソランティア王子だった。
自分の気持ちに気づいてしまった。
今、舞踏会の状況を見てもわかるけれど、王子に相応しい貴族令嬢がたくさんいる。
わたしは無謀な恋をしてしまったのでは…
もう自分の気持ちに嘘をつくことは限界だった。
認めたくないけれど、気持ちがどんどんふくらんでいく。
もう止めることはできない。
一人で思考を凝らしていると、なんと青春祭で結成したアイドルグループのパフォーマンスが始まった。
…え?アイドルグループ、登場?
ここ、生誕祭だよね?王族主催の…!
だけど、観客の熱気はすごくて、ペンライトの海が光の波をつくっていた。
型破りの舞踏会は参加者の想像の上をいく。
会場が美しい演出の魔法であふれ、観客もいっせいに盛り上がる。
生誕祭でアイドルのパフォーマンスがあると、誰が想像しただろうか。
引き続き、応援よろしくお願いします!




