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AIとの戦い

私は、西江 郁、40代のおにいさんだ。

最近、私はあるものと戦っている。


――AIだ。


(正確には、勝手に負けている)


文章を作らせれば、私より気が利く。

資料を作らせれば、私より見やすい。


(私の存在意義はどこだ)


「西さん、この提案書……」


南さんが言う。


「はい」


「めちゃくちゃ良くないですか?」


「うむ」


「これ、西さんが?」


「……」


(言うべきか)


「……共作だ」


「共作?」


「私と……機械のな」


「AIですね」


(バレたか)


北井くんがすぐに反応する。


「それ、ペイしてますね」


「うむ」


インちゃんが飛び出す。


『ジブン、イラナイ』


「やめろ」


――その日。


得意先。


例の「ひろゆき部長」。


今日は様子が違う。


「えーっと……」


(歯切れが悪いな)


いつもなら屁理屈の嵐なのに、妙に弱い。


会議が終わった後、私は聞く。


「どうした」


「いや……」


珍しく言いよどむ。


「実はさ」


「うむ」


「この前の会議で……」


「うむ」


「勘違いしててさ」


「ほう」


「強く主張しすぎて……」


「ほう」


「結果、謝罪することになって……」


「……」


(珍しいな)


「やらかしたな」


「そうなんだよ……」


(落ち込んでいる)


そのとき――


『インコー』


インちゃん登場。


『ハルシネーション』


「核心だな」


「え?」


ひろゆき部長が反応する。


「何それ」


私はうなずく。


「AIが間違った情報を出すことだ」


「……」


「つまり」


「……」


「人間もやる」


「……」


インちゃんが補足。


『ニンゲン、モットヤル』


「言い過ぎだ」


私は続ける。


「部長」


「うん」


「それはミスではない」


「……」


「“人間らしさ”だ」


「……」


(我ながらいいこと言ったな)


ひろゆき部長、少し顔を上げる。


「……そうかな」


「うむ」


「AIは完璧を装うが」


「……」


「人間は間違える」


「……」


「だから価値がある」


インちゃんがすかさず。


『タマニハ』


「余計だ」


ひろゆき部長、少し笑う。


「なんか……救われた気がする」


(よし)


南さんが小声で。


「西さん、いいこと言いましたね」


「うむ」


北井くんも。


「それ、ペイしてます」


(当然だ)


――その瞬間。


私はふと気づく。


「……あ」


「どうした」


私はスマホを見る。


「……この文章」


「はい?」


「さっきのやつ」


「はい」


「AIが作ったやつだ」


沈黙。


全員、止まる。


「……」


インちゃんが一言。


『マルナゲ』


「やめろ」


ひろゆき部長、固まる。


「……え?」


「つまり」


私は淡々と言う。


「私は今」


「……」


「AIの言葉を、そのまま言った。AIだけに愛がある。」


「……」


みんなで沈黙。


時間ともに、ダジャレも流れていくところで、無理やり、南さんがつぶやく。


「じゃあ……」


北井くんが続ける。


「救ったのは……」


インちゃんが締める。


『AI』


「……」


(やってしまったな)


だが、そのとき。


ひろゆき部長が、ふっと笑う。


「……いや」


「うむ?」


「それでもいい」


「……」


「言ったのは、西さんだろ?」


「……」


「AIが作っても、ダジャレであっても」


「……」


「人に届けなきゃ意味ない」


沈黙。


(深いな)


私はうなずく。


「なるほど」


インちゃんがつぶやく。


『イイコトイッタ』


「お前が言うな」


ひろゆき部長、すっきりした顔で帰っていく。


――帰り道。


南さんが言う。


「西さん……」


「なんだ」


「結果的にすごいことしましたね」


「うむ」


「AIを使って、人を救うなんて」


「うむ」


北井くんが言う。


「それ、めちゃくちゃペイしてます」


私は少し考える。


そして言う。


「……いや」


「え?」


「違う」


「……」


「私はただ」


「……」


「コピペしただけだ」


沈黙。


インちゃんが最後に一言。


『ソレガ、イチバンツヨイ』


「……」


――これが本当の意味での、

AIとの戦いとは、使うか使われるかではなく、気づいたら使われているという現象である。

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