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二章〜奇跡を信じた 〜

動作確認のため上に申請しても拒絶される。

何事かを探っても途中で妨害されてしまう。

仕方なしに足を運ぼうとしても当該区画が全て立入禁止にされている。

しかも連絡すら着かない。

情報を送っても返答すらない。

申請は通ってるのに一日せずに不可の押印を押されて手元に戻ってくる。

詳細に記述しても同様だった。

はあ。何がいけないのか。それを教えてください。と送信しても返信なし。仕方なしに足を運んでもどうしてか門前払い。

なんでよどうしてだ。という疑問と一緒に帰ってきた。

それが現在。


椅子に浅く座りながら空を見ている。

独自の経路を使って情報を集めた。

勿論、多角的にだ。

一つの視点では間違った情報も紛れている可能性があるためだ。

だからこそ時間を消費して手に入れた情報を纏めると。

何かがあったまでしか判らない。

何か脱力してしまい暫く何も手につかなくなった。


奮いたたせることも無く何かやる気分が出た。

何故だろう。

取りあえずの課題を洗い出そう。


関節部分に使用していた部材が思いの外、強度が高すぎて動きに柔軟性が無くなっていた。

他にも心臓部に近い管の数本に欠陥が見られた。

素材から洗い出して吟味し直すしかない。


嘘だろ。

そう口に出た言葉は誰に聞かれることなく虚しく世界に溶けていく。

手元にある設計と図面。

そして揃えた筈の大量の部品。

時間を掛けて検査すると注文より異なる数字が表示された。

有り得ないことだった。

注文には幾つも何度も目を通し計算し誤差の無いよう出していた。

更に幾つもの印を押してもらうために自身で出向いていた。目の前で自分自身の手の上で。

そして注文を完了しても間違いが無いかを最終確認し、間違いが在るなら訂正して注文先に平謝りして再計算した図面を渡した。


それなのになんだ。これは。


その言葉しか出なかった。

全ての品物。全ての数値。

一つも合うものが無かった。

いや。形状は似ていたが構成する材質が異なっていた。つまり。別物であり数値も許容を超えているか下回っていた。

しかし目視では判らない僅かな差。

いやいや。否定する。

直前まで長さも測定していたのだ。

その時の数値は注文通りだったし、誤差も範囲内だった。

近くに置いている部品を一つ手にして測ってみると誤差を超えていた。

頭が混乱していく。

何度も読み返し見返し誤差の範囲も表示していた。届いたものを開梱し直ぐに測って範囲内に収まっているとこれも。何度も確認した。

そして完成したが動かない。

分解して部品全てを再調査して外れていた。一つも残らず。

脱力しかけたがしている時間もない。

しかしだ。

調査しようにも当該の中間地点は何故か規制され近づくことさえ出来ないときた。

納期に間に合わない。

そう考えて。

いつの間にか意識が飛んでいた。

拒絶を口にしながら起き上がると。目の前に重武装の警備隊が構えていた。


抵抗出来ずに拘束され連れられたのは初めてなのに初めてではない部屋。

全身を固定され見せられたのは知らないはずの映像と画像。数多は既知にもならずが全てを知っていた。

過程を無視して頬を流れる液体は黒々として流れ拘束具をを伝い床に落ちると。世界は反転した。


何度か瞬きして思考の靄を払うように首を回すと骨が鳴った痛みに暫く苦悶していると、何をしていたのか思い出した。

書類の整理をしていた。

思い出したのは現在、地下書庫の整理を任されている最中だということ。

疲れて眠ってしまったのだろうと納得して身体を起こし持っていた媒体を書庫に戻す。


一通り終わらせ一息着こうとして肝心な事を思い出し受付の端末を起動し一覧を更新する。

これで一段落と。

ふっ。と息を一つ吐き出して机に保たれ掛かってから何故、誰でも出来る事をしているのだろうか。と考えを巡らせて視線を書棚へ向ける。

この書庫は一般に開放されていない機密指定の媒体を管理整理するための場所であり権利者は常に一人だけと決まっているらしいが詳細は知らない。

内容は難しくなく時折降りてくる機密指定された媒体の内容を確認し調査し内容に関する事柄を簡潔に記し収納する。

それだけの仕事。簡素で何もない作業。

勿論、誤字脱字等の修正を申請し返ってきたなら再度の確認で直っていることを確認し同じように簡潔に記して収納する。

仕事としては楽な部類だろう。

しかしこの場所から出ることはない。

監禁という方が正しい。

理不尽と思えるが何か。

「してないよ。」

記憶を遡って思い出した。

理不尽にして理解する事もなく強襲拘束運送され一方的な言葉の羅列を当てられ反論する事も出来ず収監され。翌日どころか短時間で何かの手続きを進められ目隠し枷をされ何かに乗せられて運ばれたのがこの場所だと思い出した。


何がいけなかったのか。今でも判らないし解らない。

収監されるために乗せられた護送車も監視すらない一人だけで入っていた。

異常だった。

到着して連れられたのは良く解らない部屋。建物らしい何処かに入った時点で目隠しだけは外された。

場所を聞いても答えてくれず通されたのは一つの部屋。

何もなく椅子一脚。

近づいて座ろうとしたら殴られ床に押さえつけられた。

反論できず。

「傲慢だな。」

頭を押さえ付けられた状態で誰かの声がした。

知らない声。

「この椅子は高貴な我らに相応しく用意された物。身分を弁えろ。」

理解出来ない。

だが話は勝手に進む。

「さて。お前のした事は愚かしい極まりない。だがあの方々は寛大だ。極刑。総図書館の司書を任ずる。と言うことだ。」

聞かされた言葉を吟味しながら昇華して。

は。という言葉しか出なかった。

「なに。軽く一万日程勤務すれば自由を約束されるだろう。では連れて行け。」

こうして反論さえすることもなく。また目隠しされ連れてこられたのが総図書館と呼ばれる場所だった。

窓もない。出入り口すらないこの総図書館とやらは何を管理しているのか当初は理解できなかったが次第に解って今は世界の機密を管理しているのだと理解した。

数日掛けて地下だという事も判った。

そして。

一息着くため受付の向こう側に入り椅子に座る。机に腕を枕にして顔を埋める。目を閉じて眠りたいのに眠気は一切無かった。

諦めて顔を上げると気にはしていたが無視している在るもの。

それは取っ手もない扉。

引き戸かと思ったが動くこともなかった為に飾りかと答えを出して作業しているが気にはなる。あからさまというか異質過ぎる。

なので休憩がてら扉を何度か調査したが手で叩くと奥に音が響いていた。

何か部屋が在るのだと。

それ以降は暇を見つけて調査したが扉自体が動かないので進展もなく諦めて黙々と仕事をしていた。

しかし興味は尽きず視線は自然と扉へ。

壊す。という方法も考えたけど何が起こるのか解らないので早々にその考えは切り捨てた。


気にしつつ作業は続けていたが、ある時、扉から何かの音がした。

聞き違いだと思って作業を続けていると何度か音が鳴っていた。

近づいて扉に触れると扉を伝って音が聞こえ振動を感じた。

何もせず動かずいると大きな音を最後に扉から音はしなくなった。

少しの恐怖と抑えつけるような興味が勝り触れた手に体重を乗せてみると何の反発も抵抗もなく扉は開いた。


扉の向こう側には床と天井と壁だけで何かが在ることもなく、そして一歩を踏み込む事を戸惑って躊躇していると何か頭上から音がして背中を何かに押され入ってしまった。

振り返ると何もなかった。

そう。

在るはずの扉は形跡すらなく閉まる音さえ無かった。

それは最初から壁しか無いというように目の前には壁だけが存在していた。

軽く叩いても壁の音は重く、反響すらない。

扉が消えた。としか考えられなかったが、慌てても何も生み出さないので冷静になることに努める。

深呼吸し改めて振り返ると、驚いた。

驚くしかなかった。

見たこともないのに知らないのに。見たし知っている。そしてそれは何を意味するのかを。

目を擦ってもう一度みると消えていた。幻想でも見えていたのだろうか。

そう考えさせられるような現実感があった。

在ったであろう場所に近づくと何もなかった。振り返っても壁しか無い。

しかしまた押されるような感覚の直後に尻餅を着くと誰でも思うが結果は違った。

壁から見ていた物が存在し自身の身体を固定し壁には無かった筈の大きな画面が設置されていた。

何か恐怖が入ってくるような感覚と拒絶したいという思いから目を閉じようとして閉じられなくなっている事に気づいた。

口にも何かを入れられているのか舌を噛むという行為も出来ない。

そして画面に映し出されるものは知らないという範囲を超えて何度も見ている嫌な映像や画像が永遠とも言える時間に見続けさせられこの人生を終えた。


気づいたら朝になっていた。

全身が汗で濡れて床まで濡れていた。

着替えを出して洗濯物入れに入れて部屋を出ると虚力に襲われ瞼を開けられなくなる。

瞼は閉じているのに意識は在る。

複数人で担がれ何処かへ運ばれている。

全身が重く指すら動かせないままに何処かへ降ろされた。


首に小さな痛みと冷たい何かを入れられる感覚と全身の重さが無くなっていくのは同時だった。

起き上がると目の前には知らない人物。男か女か判別は難しい。

声も多重に聞こえさらに認識出来なくさせているのだろう。


説明されたのはある場所へ行きとある図面通りにあるものを造る事。拒否権はなく。決定事項だと言われ頷いて目隠しされ何かに乗せられ連れられたのは製造工場のような内部に大量の部品と工具。

そして、中央に置かれている机には複数の図面が積まれていた。

全て確認して。

数年単位で掛かるだろうなと考えていると図面の端に期限が書かれていた。

一人でやれと言う。それも突貫に近い日数で。

首を横に振りながら製造開始である。

不愉快だ。

知らないのに何故か簡単に組み立てられている。

それも見ただけで何をどう組み込むのか。図面も1回しか確認していないのに解っているように組み立てられる。

そして完成した巨大な存在はいつの間にか消えて自分もげんかいて机にもたれ掛かりながら眠った。

寝たら駄目だと警告されているが限界を超えすぎて無理だった。


その後も時間や立場場所が違えど最後は全く同じ状況と状態で自分の命は散っていく。

それを何百と繰り返し何千と考え何万と抗っても同じ結果に希望を何度も信じて身体は良くても心が擦り減り限界を迎えていた。

そして繰り返す度に記憶は無かったように消えるのに今回は前回まで全ての記憶が継承されていた。

それは繰り返された実体験を疑似体験するようなもの。それも1秒以下の感覚で。

普通なら頭が壊れるが何万という経験は肉体より精神を鍛え上げ狂うことを許さなかった。

世界を呪いたくなる。が今の立場と場所時間を調べると平凡な日常を送る平凡な市民の一人に過ぎなかった。

前回までの立場を考えると拍子抜けするが警戒は怠らず一日を過ごしてみる。


何も起こることなく一日が終わる。

今は自分の家に帰って簡単に食事を済ませてでも神経を尖らせて寛いでいた。

手に持った飲み物を一気に飲み干して瞼が重く警戒しないと。という意識は在るのに抗えずそのまま眠ってしまった。


ひっ。

と目を開けると飲み干した容器と今朝の色々を話す画面。

そして昨日と同じ服。

変化もなく次の日が始まっていた。

机の上に置いていた時計の時刻を見ると別の意味で血の気が引いた。

慌てながら着替え用意し鍵と鞄と端末を持って部屋を出た。

ちゃんと鍵を掛けて。

今日も一日が始まる。警戒は怠らない。


あれから半年経過した。

現在、友達と喋りなながら休日を満喫している。

もう警戒はしていない。

気を緩む瞬間に。というのを考えて張り詰めた空気を出していたが何も起こらず何も成らず。

こうして平和な日常を送っている。

友達とは少しの切っ掛けで意気投合し休日も出かけ、こうして暖かく緩やかな平穏を享受している。

前回までの事は今、夢として自分の中に落とし込んでいるし折り合いも何とか付けられている。

実は誰に話したかは忘れたけど精神病を疑われ病院を紹介され数ヶ月の通院を余儀なくされた。

今はあれが何かは解らない。夢なのか現実なのかも調べようもない。しかし前回までとこれからの人生はもう切り離して考えられる。何故なら友達もいるし刺激はないけど平穏な日常が送れている。他愛ない話をして一日を過ごし、そして部屋に戻って快適な疲れを湯船に溶け込ませて流し晴れた気分で一日を終える。そしてまた新しい一日が始まる。

もう何かに怯える必要はない何故ならこの世界は何万という繰り返しの果てに辿り着いた希望の先なのだから。

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