二章〜行動の結果〜
私は現在、戦場跡を回って処理をする仕事に就いている。
戦場跡には様々な遺物が残っている。
それは使用された兵器や武器等の残骸から兵士の体と所有物等々。それらを回収して洗浄してから身元の判る兵士は家族の元へ送り身元の判らない物は一律に火葬して共同墓地へと埋葬する。
兵器や武器は解体洗浄し使えるものは売り捌き、使えないものは溶かして金属として売り捌く。
無意味な仕事の様に思えるけど戦争の跡に残るのは静寂と残骸と物を言えない体と様々な匂いを混ぜた混合臭。それと敵対会社の社員。
見つけた物は見つけた者の所有物。基、会社の所有物となる。会社勤めなら会社が一括管理してくれるが私の様に個人となると立場は弱い。
だが運良く色々な物を回収出来ているので懐は少し暖かい方ではある。
まあ儲けていても諸経費等々で生活費には微々たる位しか残らないが。それは帰る場所がある者であり根無し草な私は関係ない事である。
さて戦利品を粗方回収し終えて本日の宿に戻ってきたのだが、何やら揉めているらしい。
近づかぬがなんとか。
宿屋の主に話て鍵を受け取り部屋へ向かおうとして。
手首を掴まれた。
振り返ると見知った女性が怒り半分困惑少しに懇願を混ぜた表情をしている。
振りほどいても良かったのだが諦めている。
「で、何があったのですか。」
無言で引かれて問題の中心まで連れられる。
人混みを掻き分け問題の前まで着くと男二人に女二人罵倒しあっていた。
頭痛がしてきた。
「何度も言わせないで今からでも遅くない。」
「何を言ってるんですか。ほら止めてください。」
疲れる事を更に。と言葉にしながら4人に近づいて。
「で、今回の原因はなんだ。」
白熱した罵倒は過熱され聞く耳を持ち合わせてないのか。
濁った声を出しながら机を叩く。
違う。叩き壊した。上に乗っていた物は事前に移動させて。
驚く4人が此方を向いた。
手を叩いて一息入れる。
「で、何事が原因で口論なのかを説明してほしい。」
だが興奮した4人に譲る。という気概はなく同時に話し出した。
聞かされる言葉は何を言っているのか判らない。そして解らない。同時の言葉の羅列は雑音と差はなく、次第に不快な表情をする人が増えていく。
「はい止め止め。頭を冷やせ。」
しかし止まらない言葉の暴力のような嵐。
店員を呼んであるものを持ってこさせる。熱量が増量する。加減を知らずし過ぎる。
店員が持ってきたものを受け取って4人に掛けたものは。
冷やしに冷やした水。
「頭を冷やせと言ってるだろ。」
滴る水は床を濡らし落ちた水の溜まりに堕ちて混ざる。
襲い掛かってこようとする3人に対して軽く対処し、何もしなかった者に対して状況の説明と理由を聞いた。
困り事は勘弁して欲しいと周囲に言っているが、中々どうしたものか。面倒を全てではないが押し付けてくる。
その最たるものが大小の喧嘩である。
規模は罵り合いから大乱闘まで多岐に渡るが全てに対応していた。
いや、させられていた。という方が正しい。
仕事としてこの戦地跡に来ている。単身で。
この場まで来るだけでもそれなりの費用は嵩んでいるもので、赤字を出すわけには行かないのだ。なので、本来なら余裕など無いのに、どうしてか面倒を押し付けられてしまう。
現に同時進行している案件が2つほど。極力内々に終わらせようとしているが時間がない。
どうしたものか。と考えていると肩が押され何歩か下がった。
聞いていたのか。
そう言われて質問に対しての答えを聞いている途中で思案していた事に気付いて。
聞いてなかったことを告げると殴りかかってきそうだったので少し飛び退くと、床だけでなく地面ごと抉り飛んだ。
悲鳴は受付の向こう側から。
慌てて来た店員は床の現状を見て更に狼狽する。
建物を壊すな。という注意は耳に入らず、睨まれる。店員には賠償する旨を伝え退いてもらった。
「さて。興奮するのは勝手だが、人や物に迷惑をかけるな。」
興奮し目を釣り上げ息も荒い。
「これは無駄か。」
全員の目の前から消えたように見えたのだろう。
私は普通に歩いて興奮した者を気絶させたに過ぎず、倒れる者を支えて床に寝かせた。
「さて起きているのだろう。相変わらず面倒事を丸投げしようとするなっ。お前は班長だろう。もし、気絶の振りをし続けるのなら会社には報告してもらうが構わないな。それとも痛みを受けるかい。」
見ているが反応はない。
「はは。どうやらお気に召したようだ。宜しい。では前回の数百倍で穿とう。」
誰も目を離していなかったし目の前の人物に対しての認識も出来ていた。
だが、その手には凡そ人一人が持つに似つかわしくない武器が手に収まっている。
構える動作もなく結果だけが残った。
床に先程より小さな穴が深く抉られていた。
倒れていた者は起き上がりと同時に体を捻り同じ場所に倒れまだ気絶している者を蹴り飛ばし、反動を使って床を転がり立ち上がっていた。
拍手を送った。
「流石に何度も経験していたら避けるよな。うんうん。さて時間も迫ってるので最初に戻るが、何が原因で口論になったのかの説明を求める。黙秘するのも手だと思うが賢明な判断とは行かないな。」
背後で悲鳴が上がっていたが無視した。
「睨み合いとか、牽制とか、そうだ何かを代わりにとか無しだ。さて推測だが戦利品の分配なのかそれとも本社の方針が変わったのかね。それか思ったより額に成らなかった事で口論に成ったのか。さて何かな。」
悪意は増々感情を隠そうともしない。
「答えようか。」
「はっ。アンタに聞かせる答えなんて持ってないよ。」
「それが応えなら。非常に冷めるな。ではこの戦利品は全て此方で処理させてもらう。軽く見積もっても数千も成らないか。」
四人が手にした戦利品はお世辞にも高品質とは言えず。傷も多数あり、凹んでいる部分も小さいがある。
「纏めで売り払ったとしても旅費で消えて終わりかね。そう睨むな冗談だ。が、これでは本社にも無理だ。なので俺のこれをやる。」
肩に掛けていたカバンから取り出したのは何かの部品。
歪で部品として使えないと一目見なくとも判る。
だが店内がざわつく。
「戦場とは関係ないがこれを贈呈しよう。持っていても売れないし、そちらの上の方なら上手に扱ってくれるだろう。どうだ。」
それは裏の筋の間では真しやかに囁かれている噂。
乗り物に関係しているが何の部品なのかは誰も知らない。しかしその価値は計り知れず億とも兆とも云われる曰く付きの逸品。
持ったものに幸福か不運が呼び込まれるとも言われており手にしたい輩は後を絶たないとも噂されている。
《歪なる不穏の小さな部品》と呼ばれている。
出所不明の品である。
全員の目色が、明らかに変わる。
「言っておくが、カルウェ君に譲渡したのであって他の者達に権利も権限も譲渡も禁止される。ああ、される。と言ったがこの状況で横槍した。」
続きを言おうとして歪の品が盗まれ、店を出ていった。
追わないのか。と誰かが言ったが慌てない。
呆れながら外に出ると盗人は四肢を変色させ頭部も変形し元の顔が分からなくなっていた。そして、そのまま命が尽きていた。
地面に転がっていた歪の品を拾い店に戻る。
「さてこれで所有者以外が持つ触れる特定の距離まで近づくなどするとあの人物のように最悪な人生の終わりを迎えるだろう。」
それは禁忌というに相応しい効果。
所有者以外の所有を認めず、意思を持ったように害意を与える特別な道具。
一般的には呪具と呼ばれる物品である。
何故この様な物を持っているのかは私自身が知りたい。
気がつくと持っていた。唯一の手掛かり。
そう思っていた時期もあった。
少し前にこの品は私には関係ない物だと判明してから何度も捨てた。だが何度も戻ってきていた。それも自分の荷物の奥にである。 今はもう諦めて持ち続けていたが、漸く手放せる。
何か感慨深いもの。は感じないか。普通に厄介。でも無かった。私に特段の影響もない。だからどうして着いてくるのか謎だったが次の所有者が決まった。
「いや、いりませんよ。そんな曰く付きの特級品なんて。」
予想外に拒否された。
「いや。これは世界に一つしかない逸品物。この機会を逃したら後悔することになるはずだ。多分。」
「いや、そこは言い切れよっ。」
「ふはっは本当に受け取らないのか。」
首を縦に振った。
「そうか。これを逃して次に欲しいと懇願されて何かを差し出されたとしても2度目は絶対にない。そう言ってもか。」
肯定されたので鞄に仕舞う。
「でだ。なにを揉めていたのか理由を素直に話してくれないかな。解決できるかもしれないだろう。」
見続ける無言で。
そして口を開いた。
私は後悔している。
少々だが。
あの者達の口論の理由。それは仲間を置き去りにして逃げてきた。という。要は囮にしたということだが二人は後悔し助けるべきだ。と言い始め、残り二人は反対した。諭そうとしたが熱くなり口論まで発展し周囲が止めることもせず暴力へ移行する寸前で私が介入した。という。
その囮とした仲間の人相を見せてもらい場所や時間経過も含め詳細に説明させ現在、その場所に近い地点へ来ている。
助けるとは一言も。
しかも退路を断たれて送り出されるし。
切り替えよう。
遠目に見てもあれは。と言葉が淀む。説明の中に目的地点までの道中に必要な事柄を含ませていなかった。
見えてはいるのだ。
見えているがその地点まで僅かな時間であっても命が無限にあろうとその場所で永遠に繰り返す命の終わりと再生。
地面から滲み出る毒の霧。 絶えることのないその毒霧を回避して先にある洞窟まで辿り着く。普通に考えて不可だろう。
防毒装備一式は持っている。1人分だけ。
そう行きは良いのだ。問題は帰り。
まあ儲けに出るしかないな。
空を仰ぎ見ると何処までも重い雲の様な霧の塊。
正面を向き直しても変わらない景色。
首を回して気持ちを穏やかにする。
はずが攻撃を受けた。
既の所で避けられたが元いた場所には小さな穴ができていた。
全身に走る痒みにまたその場所から離れるように走る。目的地は毒霧の向こう側。
だが迷いは等価にて命の終わり。
息を吸い込み一気に走り抜ける。
防護服に着替える時間はない。私の命さえ危ういのだ。
服は通過の度に劣化していく。
洞窟。
戦場跡周辺にはこうした洞窟が幾つか形成されていた。
過程を考えるより先に誰かが入り中を調査して財宝等を持ち帰ったという話が広がり今は戦場掃除を理由に洞窟や穴等に入り財を築く者たちが現れていた。
だがそう簡単な話でもなく、中に入って二度と戻ってこなかったという者達も少なからず居る。
さて今回、こうした洞窟は事前情報では低級から中級に近いと格付けされているがこれは。
目に入った洞窟の中には動物の腐乱や完全に白骨化した物が散乱していた。
地面を見つけるのも苦労しそうなほどに所狭しとあり、一歩を踏み込むにも僅かな躊躇により背中に走る痛みで意思とは関係なく一歩を踏み入れた。
直後に天井が崩れて閉じ込められる。
通過の過程で服は服の機能を果たさず布切れと言われても反論できない状態に成っていた。
下着だけは少し劣化しているが無事である。
全裸よりましだと認識して背中に嫌な空気が触れると咄嗟に避ける。
瓦礫の破砕音が聞こえ欠片が壁や天井、そして自分に打つかり地面に落ちる。
地面に寝転びながら背後を見るとこの世を否定する存在が現れて嫌な笑いを挙げていた。
膝までの身長。襤褸布を腰に巻き片手に拳よりやや大きめの石を握っている。
その睨みつける視線に乗る感情に知性はなく。吐く息も腐った匂いを漂わせて鼻が曲がりそうだ。
油断はない。
断言できる。
油断はしなかった。
だから視線思考仕草。
嗅覚以外は全て研ぎ澄ましていた。
だが現状。手足を杭で固定され体を捌かれていた。
苦痛もこの物達の食料なのだろう。
痛覚麻痺さえされず刻まれて数日経っていただろう。
意識はもう無いに等しく。生さえ手放したくなった。
笑いながら一撃を心臓部と脳に貰い意識は混ざり交ざってこんな場所に居る。
そして幾度も繰り返した何百度目か理解すら拒絶する程に停止していた。
そして操られの様に身体を動かし続け最後は何かの声に導かれて赤黒い光に触れて自分を取り戻した。
最後に何かの言葉を掛けられたがもう、覚えていない。
そして意識は過去に戻っていた。
これまでと異なるのは前回まで全てを記憶しているという事。
だがこれはもう戻れない。最後だと意識できていた。
虚しぃ笑いしかない。
体は心まで緊張して忘れていた時より上手く動けなかった結果、全部とは言わないが失敗し過ぎて救えた命も、救えず。止められた事も大多数が止められず。更には信頼される人物にも裏切られて敵対関係を構築してしまった。
もう最後だと思うと何かの邪魔で動かなくなる。
この場面はもう外せない。
これを外すと終わる。
あの変性空間。
原因を排除すれば自分の未来を変えられる。
存在が。
複数の存在が世界を曲げて合わせて混ぜて世界が構築されていた。
どれか一つでも排除できるなら悩む時間もない。
行動する。
先に弱いはずの一つを排除していく。
思考は人足り得ないもので簡単に誘い出す事に成功し事前準備も整えて秘密裏に葬った。
最後に小さく泣いていたが誰にも届かず命を絶った。
世界は平穏になるだろう。
その考えが甘かったのだろう。
弱い存在の仲間が報復してきた。多方面から。
それは結果として私を孤立無援にさせ誰にも手出しが出来ない状況へと追いやられていた。
ああ。これが、因果応報というものか。
何か諦めを受け入れ憎しみの感情が籠もった無限をにくらって気付くと知った空間に存在していた。
ぁあ。また戻ってきたのか。そして同じ事を繰り返し時間を忘れた頃に解放されて終わった。
悲鳴を挙げていた。
あれが最後だと誤認していたなんていう過去は過ぎ去り。
もう数えるのも諦め繰り返しは天文的な数字と成っているのだろう。
失敗は繰り返さない。そう決めて別の道を進んでも帰結が同じなのだ。もう心が絶叫し止まることを是。とするようになる。
しかし停める方法も停まる仕方も解らない。
調べようにも記憶が書き換えられ時には消されている。
あと数回繰り返せば心は壊れ自我が消えるだろう。
そう理解しても目の前の事は理解を越えている。
おいおい。としか言えない。
目の前には知らない人物3人。いや隠れている者を合わせて4人か。
これが何か判らないが逃げに徹する事を念頭に置きながら話を聞いてみる。
だが話し合いなどするつもりは無かったようで着いてくるように指示され逃げ出した。
逃げ切ったはずだ。
そう考えた時点で目隠しされ拘束されている。
口は幸いに自由に動かせる。しかし簡単に言葉を出せる事態でも無いことは見えないが理解できた。
扉が開く音。そして足音。軽いな。子供か。いや少し大きいか。
やあ。始めまして。
頭に直接声がした。
今回は初めて会いますね。いや幾つあるのやら。さて長い前置きは好きじゃないんで短く簡潔に。
声は幼いようで大人びて。しかし有り得ない程に貫禄がある。
考える前に話を聞いていましたか。聞いてないでしょ。はぁだから嫌なんですよ。もう一度です。これを聞き逃した場合はもう知りません。けほっ。さておめでとう。アナタの長い旅は終わりました。これより先はアナタ自身がアナタの意思で人生を歩んで下さい。アナタを最後に弄ぼうとした諸々とかは始末しときました。ああだからと言ってこれまでを取り戻そうとして箍を、外し過ぎないように。それはまあそうなったで面白いですが。さてアナタに打ち込まれていた数々の仕掛け、そして施された大きな力は全て除去しました。後は数回に分けて経過を見ますが問題なければ世界を渡るという経験はもう無いでしょう。ではもう一度。おめでとうアナタは無限の道という監獄を抜け出して、普通に誰でもが享受することの出来る人生を歩く権利を手にしました。何か問題があったならこの場所まで来てください。多分懇切丁寧に嬉々として対応してくれるでしょう。ではこれにてアナタの。アナタとして永遠に与える魂の苦痛という疲弊の先の終着点を回避したこの出会いに拍手を贈ってお別れです。会ったとしても見えたとしてもそれはアナタの意思から外れ日常に溶けて消えて忘れ去られ思い出すこともなく夢として認識し二度とアナタを玩具にする存在は現れないでしょう。では幸いを。
はっ。と目を覚ますと正面に見知った扉。
自分の部屋だと認識するのに少し掛かって手元の時計を見ると。
時間が迫っていた。
急いで支度し鍵を持って部屋を出る。
そうそう。アナタが数百前に手にしていた財産は普通なら強奪に近い形で譲渡となっていましたが、少し裏道を使いまして全て回収させて戴きました。後ほどお渡ししますので忘れずに紹介した場所まで来てください。ではさようなら。




