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二章〜最後の景色〜

懸念していたことは概ね解決していた。というのも自分自身が行動しなくても周りが連携して事態収拾を計っていたからだ。


その一つに島へと入る物理的な情報。様々な媒体にて島内の手許に届けられるそれは精査されてはいたが精度は低く問題を引き起こしていた。何度も。

解決したのは昨年に島の情報管理を一元化し島に滞留していた病を全て取り除いた管理室長の存在が大きい。

そしてその部下達の手柄でもありこの功績を持って管理権限を与えられた。

そして深部近くに設計開発設置された一区画が情報管理部門である。

その管理権限を使ってとある捜査をしている。

個人的な興味もあるが。一つは不安に駆られたのと情報が綺麗すぎた。整っていた。

だから何。と聞かれたら簡単には答えられない。

でも。あの環境で過ごしてきた時間は現在居るこの場所より長く様々な過去を見てきた。

その中で有り得ないと考えた。

考えてしまった。

だから手を出さずにいられなかった。

それが間違いだと気づいたのは遅く。

軍部が強襲し部下含めた全員が拘束され施設は閉鎖された。

しかし移動途中で隊長の端末に連絡が入り応対すると驚きと溜息と諦めで全員の手枷を外していった。

無罪放免と言うことらしい。

そして装備等を収納してその場で釈放されて戻った。

その姿を最後まで見届けてから本部へと帰還した。


という報告を受けて天井を仰いだ。

何かの理由を付けて調査せよ。

という名目で件の部門の者達の背後関係を調べようとしたが妨害により失敗した。

それが端末に表示されている結果だった。

しかし解せない。

強襲した理由は真っ当で無理はなく完全な越権に等しかったからこそ止めるために介入したとも言えた。

それを連行途中で停められる存在は一人しかいない。

島の全権を所有する者。

島主。

それも現在ではなく先代のであろう。

そうでなければ強襲の完了と連行途中での無手続きでの即時釈放は有り得ない。

急いで抗議の一報を入れた。

しかし返ってきたのは当たり障りのない答え。

抗議を入れても返ってくるのは惚けたような言葉と端々に読み取れる此方を見下したような文言。

直接の謁見を申し入れたが返答が止まった。

何度も申し込んで反応が無くなり訝しんだ。

調べようとして緊急通報が入った。


現場に到着すると悲惨な光景が目に飛び込んだ。

隊員一人の家族。その亡骸が無造作に放置されていた。

亡骸に多数の切り傷と両目が抉り取られ片目を口に片目を心臓部の上に丁寧に置かれるという酷い死に方をしていた。

調査により隊員の肉親であるという事が確定し。

憔悴する隊員には申し訳ないが報告するしかなかった。包み隠さず。

報告後隊員は暴れたが制圧し薬を投与して拘束し暫く独房へ入ることとなった。


捜査は依然として進展なく。数日が過ぎていた。

物証は皆無。

侵入経路は正面だと言うことは監視装置等で特定できたが犯人の姿は見えなかった。

力としたなら風か金属か、それとも特殊な方とも考えられるが依然として核心に繋がる証拠はない。

隊員は心を病んで除隊してもらい病院へ入ってもらった。

懸念は解消できたか。と。聞かれたなら否定も肯定も出来なかった。

元隊員は確かに病院送りになったがそれだけだ。ましてや精神の傷は癒える方法が無いに等しい。解決できるなら精神系統の者達に委ねるというのもあるが、それはその者の記憶を改竄し存在を否定する事だ。なので今は時間に任せるしかなかった。


その結果が再びの惨状を、招いたのだろうか。

数日後。

病院隔離病棟から連絡を受け隊長以下数名が元隊員の入っている部屋に入るともぬけの殻。

それも全くの生活の痕跡も無く綺麗過ぎる程に綺麗だった。

職員に依れば昨日までは酷い荒れようで壁には幾つもの色々な染みや爪痕があり床には踏み場もない程に剥がされ壊され。

そして、備え付けのベッドは布団だけでなく土台まで修復不能な壊され方をしていたらしい。更には便器も汚水が漏れ出て此方も修復するより取り替えたほうがマシな状態だったという。だが目の前にあるのは何事もない綺麗な部屋だった。

壁に染みは一つもなく、床も新品同様というより新品で光沢を放っている。

ベッドは何事もない様に綺麗に整理され布団には皺一つ無い。

便器も傷も無くそして欠けてすらない。綺麗なままである。

独房という他無い部屋の狭さ。そして窓には出ることもできない様に厚い硬盤を嵌め殺しにされ、さらには唯一と言って良い扉も食事の提供のための小さな窓くらいしかない。この状況で元隊員は何処へ消えたのか。

前後を調べるために監視室へ向かった。


案内された部屋は幾重もの扉と多くの身体検査の後に漸く入ることが出来た。

目に映るのは部屋正面に備え付けられた巨大な画面。数十に分かれた画面一つ一つには部屋が映し出されていた。それは元隊員の部屋も同様だった。


映し出された元隊員の部屋を手元の画面にも表示してもらい消失前後の確認作業に入った。

翌日。部下を伴って足を運んだのは最上階の人が寄り付かない場所。

扉には鎖と板を打ち付けてあり簡単に出ることが出来ないようになっている。

扉の脇には2人そして正面には一人が立っている。

報告を聞き送信された情報を確認し増員を申請して鎖と板を外し扉を開ける。

床に貼り付けるように指示しその様に目の前で施されて現在もそうだ。と考えていた自分を呪いたくなる。

そう床には鎖しかなく床も綺麗なままである。

外の三人に確認したが誰も一人とて入っていないという。

その言葉通りに映像を確認したが扉は来るまで開けられていない事が確認できた。

室内の監視を映し出すと鎖に繋がれた元隊員が暴れていた。が動けないように特殊鋼を使用した鎖のため脱出不可能である。

だが元隊員と床の間にすき間はないが突如霧のような円が発生し元隊員だけを飲み込んで消えた。

理解が追いつかなかった。

三人含め緊急配備を掛けた。

あの独房と同じ現象が起きていた。


あの時、前後を確認していると元隊員は暴れていた。酷い有様を更に酷くして。

しかし何も無い空中に霧の円が現れ元たいいを飲み込むと小さくなり消えるのかと思われたが、まるて時間を巻き戻したかのように部屋が修復され何事も無かったように綺麗な部屋に成った。直後!職員が入ってきた。

これが昨日見た映像だった。

そして同じであるが異なるのは部屋が変わらない事くらい。

懸念しながら捜査に向かった。


元隊員は直ぐに見つかった。

正確には見つけられた。

その連絡を受けて部下を伴って向かったのは。

学園の中庭。

人払いは済んでいるというので向かうと。

朗らかな笑顔と陰険と苛立ちの後ろでしゃがみながら何かを持って何かを言っている。

その内の一人は深い縁がある。

しかし他の者達は知っているが積極的に関わりたいとは思わない輩だ。

その内の一人は言葉すら交わしたくもない。

隊長が距離を上げながら後ろの部下に制止を促し止まる。

「生きていたんですね。」

「よく言われるわい。」

「無駄話はなしで。ふむ見当たりませんが。」

「生き急ぐのはお勧めしませんねぇ。此処は中継地点なだけですよ。」

「かくふふ。し、失態を隠す積もりならむ、無意味だ。」

「本当に嫌な気分だがそれも面白い。」

「それで何処に在るんですか。」

無視して話を進める。

「それを知るのはほれボウズ。速く教えてやれ。」

と会ってからずっと何かをしている少年に話が振られた。

「ああ、ぁあ。て僕ですか。んん。あぁそれはご苦労さまだですだすます。お探しの品でしたら少し待ってください。はい送りました。その場所に行けたら手に入りますよ。この先に関してこの場にいる此方の方々は一切の関与をしないと宣言します。」

怪しげに何かを言っていたのが幻なのかと言うほどに涼しげな対応をして情報は寄越された。

端末を確認するとそれは。

「その場所は現在、警戒範囲指定という言い訳を元に誰も近づく事ごできない状況を先程作り上げました。急いでください。事が最悪に至る前に。もし、無理であるなら相応の対処を執行ますので。」

何か言おうとして。

「だ、そうだ。ほれとっとと行った行った。」

この先の質問は受け付けないという遠回しを受けて素直に従った。


目的地まで距離はあり最速を手配し少し待ってから乗り込んで移動していると。端末に連絡が入った。

端末を開くと添付された映像と共に一文。

慌てて映像を再生すると。

ため息と停止を命じてそのまま戻るよう命令した。

部下達は怪訝な顔をしていたが端末を見せて映像を再生する。

それは高い位置から取られた映像。

腕を折られているのか有り得ない状態であり鎖で足を貫いて近くの柱へ繋がれている。

酷いとは誰でも思う。

しかし何も起こらなかったが映像が乱れて視界を何かボヤケたモノが現れ覆い尽くすと消えた。後に残ったのは鎖だけ。


戻りながら連絡をする相手はあの老体である。

しかし連絡が着かない。本当に関与する気はないという意思表示なのか。と考えたが三度端末が鳴る。

表示されたのは向かおうとしていた場所から遠い場所。

現在位置からは比較的近かった。

溜息しかないが行き先変更を告げて深く座り直す。

部下達も何か言いたげだったが飲み込んだ。

同時に深い息が出る。


短時間で着いた場所は海に面した倉庫街。その一つには立ち入り禁止の看板と規制線のための紐が括り付けられていた。

紐を通り過ぎ指定の倉庫へと向かう途中に連絡が入った。

表示されているのは目標の座標。それは向かっている倉庫を示していた。だが前触れなくその表示が消えた。

急いで向かい倉庫の明け放たれた扉の前まで行くと目の前に飛び込んできたのは内部に張り巡らされた鋼線。人の気配はなかった。

いや。人が居たのは確かなのだろう。鋼線の一部が赤く染まり滴っている。

しかしそれ以外に何もなく。強いて言うなれば、撮影機材が放置されているという点がこの状況の中で異様さを放っていた。

機材を慎重に調べると中には記録媒体が挿入されたままであり、機材ごと回収することとなった。

後日、調査の結果、記録媒体には矢張り元隊員の姿が収められており同様に最後は消えて終わった。

何が何なのか理解に苦しみながらこの映像を上級秘匿物として封印することに決めて施設最奥に封印されることとなった。

また端末が鳴る。

それが次の場所だった。

徒労に終わるだろうと思いながらその場所に向かう準備をしていると部下が知らせてきた。

どうやらこの場所は管轄外であり管区に対しての書類を提出しなければならない。それを今から揃えるとなると時間は足りないどころか無い。という。

だがその心配はない。

それらを全て飛ばして統括へ話は付いており許可証も移動の間に手渡される手筈になっている。そう説明すると黙って出ていった。


移動。と言っても徒歩でしかも勤務している支所の裏手にある境界の向こう側。それは管轄外であり別の管区なのだがその境界の向こう側には一人異なる色の似た制服を着た女性が立っていた。

だが喋らない。無言で許可証を受け取るが用意されたのは隊長の分だけで部下の物は用意されていなかった。抗議せず受け取り、境界を超えて振り返り戻るように無言で指示して一人で向かった。


何故ゆえにという疑問。

あの女性が着いてきていた。

喋らない事が条件なので無視に近い態度で目的地へ向かっているが。気になってしまう。

しかし仕事なので無視し続けて着いたのは一件の家。

容易に来られたのは何かの意図と思われるが答えは用意していない。

着いて来ている女性に聞こうとして止めた。

喋らない事が条件であると思い留まりながら改めて家を見ると体が飛ばされ、後ろに居た女性も巻き込んで瓦礫に埋もれた。

幸い瓦礫はそれ程の高さに積もらなかったので自力で脱出できたが在った家が綺麗に無くなっていた。

更地になり家が建っていたとは考えられない綺麗な状態。

端末が成った。

開くと通話と表示されていた。

出ようか悩んでいると女性に肩を叩かれ出るようにと無言で指示されたが悩んでも意味は無いと思い至って通話する。

通話口の向こうから聞こえたのは若いが知らないようで知っているような声だった。

「なんだ。」

『無駄なので簡潔に。次で捕獲できなかったら此方で対処します。それでは。』

返答すらさせてもらえず通話が切られた。

端末には次の場所が表示されていた。

思考を停止させたい衝動を抑えて何度も見直して。変わらなかった。

その場所はどう考えても有り得ないとしか言えない場所。

何なのか理解できないまま女性が肩越しに端末を覗き込んでいた。

「へえ。総本部なんですね。」

初めて声を聞いた。

綺麗な声だと思った。


総本部。島の警備を管理する組織。その総本部。支部ではなく。だ。

混乱しかなく端末を落としそうになった。

乾いた笑いが出た。

なんなんだっ。という言葉。

しかし、理解が追いつくより先に移動することとなった。

女性とは別れた。

着いてくると思っていたが監視のためだろうと自分で納得して総本部へと向かった。


島の治安には二つの組織が担っている。

一つは島の要人。即ち島主や関係者。開発に関わる人。さらには学区内の事件や事故等を担当する島内警備部隊。

もう一つはそれ以外の事件や事故そして通門の番も含まれる島警備部隊。

大まかにはこの2つたが細々と分かれているのは別の話。

隊長や元隊員は後者に属している。

そして総本部とは二つの警備部隊の統括部門であり情報収拾から人材派遣等多岐に渡り島の治安を維持している統括組織。二つの部隊の上位組織であり管理組織でもある。

その本部は島の中央より少し外れた場所に在り物理的には学区内に居を構えている。


向かっているのは総本部の上階ではなく。

地下深くに存在を噂されている兵器庫。

その存在を確認した者は居ないが噂は一人歩きし今では虚偽だと言われていたが。

端末が示すのは正にその兵器庫だった。

入口には受け付けがあるが手続きをせず横の改札を隊員証を使用して通過し昇降機に乗って地下へ。

扉は幾重にも重なって開くに時間が要した。 それ程厳重なのだと理解したが開かれた向こう側は。

雑然としていた。

兵器等なかった。

語弊があるかもしれないが、そう雑然とした大きすぎる部屋だった。

正確に述べるなら。何もなかった。

只々広い空間に机が一つと一人。

周囲には何も無い訳ではなかったが、あるのは無数と言うほど大量の端末。それも全てが起動して幾つもの表示を重ねては消えてを繰り返している。

距離があるので一言言うも反応はなく。仕方なしに近づき机を叩くと驚いて顔を上げる。

相手の話を聞くという時間の無駄を省いて質問した。

しかし知らないという。

そんな筈はないと食い下がっても同じ答え。何かあるのかと端末を開くと言葉が表示されていた。

察して表示された言葉を読み顔を上げると目の前に顔があった。最初の者の顔ではない。

驚きながら口を開こうとして。この先の行き方を教えられ揺れる感覚に刺激され気付くと怪訝な顔の者が居た。

最初の者とは違う。

だが気にしたら負けない気がして先程の聞いた行き方を試すの床と一緒に降りていく。

長い時間降りていたが漸く到着し開いた扉の先には一つの檻。その中には目的の元隊員が眠っていた。

何も起こりませんように。

そう願いながら近づくと。

元隊員は予備動作なく起き上がり顔だけを向け怒りを打つけてきた。

取りあえず目的を果たすために戻る事を提案したが。

「残念。遅かったです。」

それだけいい。これも前触れなく予備動作も無く檻から姿が消えた。

元隊員の背後にあの霧の円が見えた気がした。

端末が鳴る。出たくないが出るしかない。

端末を開くと、呆れと憐憫と少しの嘲笑で締め括られて最終対処を引き受ける。少しは期待したのに外れました。仕方ないので此方で処分します。

という文面を最後に端末は閉じた。


桜鈴島から幾らも離れた海上に一人。空に座って長距離射撃を携えていた。周囲には水平線しかなく、通る船もない。

だがその表情は決意に彩られ、また悲壮も見えていた。

深呼吸を数回繰り返し武器を構えて水平線の向こう側へ照準を合わせる。

最後の深呼吸を終えて引き金に軽く指を掛け照準器を覗く。しかし空と水平線と海しか見えない。

だが構わず引き金を静かに引き絞った。

銃口から弾丸が発射され海上を進み水平線の向こう側へと消えた。

直後、頭に流れる()()()()()()が呼び起こされ後悔と懺悔に体を蝕まれて『また』という言葉を最後に目を閉じた。


世界変位するのだろう。

何時もと同じ。

そう思い出し目を開けると。

迫る絶大甚大莫大無慈悲な力が見える水平線全て回避不能な範囲を埋め尽くし残された力も無い状態の標的を世界から無残に無情に無礼なほど理解する事も許されず消し去った。

後に残るのは静寂な海と空。

そして揺蕩う幾つかの雲。


何処かで誰かが笑って。何処かで誰かは怒り狂っていた。

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