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冒険者教育論  作者: ゆきつき
3章受験応援キャンペーン
29/30

27.やる気が満ち溢れてる受験生

「えー。君達が試験を行う会場は、都会エリアになります」


 この学園、あまりにも広すぎて、色々なエリアがある。平原エリアだったり森林エリアだったり。


「では、私についてきてください」





_______________





「いやー。威勢のいい受験生がいたもんだな」

「ボクとしては、あんな大勢のいる前で試験官を下に見るような発言はいただけないけど」

「いいじゃんいいじゃん。冒険者なんて実力社会な訳だし、威勢のいい方がいいだろ。まあ多少の礼儀も必要だとは思うけど」


 俺の感想としては、嫌いじゃないタイプ。


「にしても、ここですら200ぐらいいなかった?」

「まあ少なく見積もっても、100は居たな」

「それが複数グループある訳じゃん?」

「だな」

「一体この学園、合格倍率どーなんてんの?10倍とかじゃ済まないんじゃないの?」

「かもな」

「いやぁ。すっげ」


 よく合格できたよ。


「にしても、奇跡だったな。お前の妹、このグループだったじゃん」

「だあ」

「なんだよ、冷たいなぁ」

「とは言ってもだな?妹だからって手加減をする事なんてできるはずないだろ?それじゃあフェアじゃない」

「律儀だなぁ」


 リヒトには、一つ下の妹がいる。そしてその妹が、丁度俺達が試験官を務めるグループに入っていた。


「じゃ、もし俺がお前の妹に勝負を挑まれても、本気で相手していいの?」

「……、ボクの妹は、そう簡単に負けないさ」

「フゥー、シスコンだねぇ」

「まあ、ヴァンとあいつが戦って、それで負けるなら、それまでの事さ。それに、あいつは賢い子だから、実力差が開きすぎているボクやお前なんかに勝負を仕掛けるような真似はしないと思うけど」

「あ、そう?」


 ちょっと戦ってみたいと思ってたけど、残念。


「じゃ、試験に挑みますかね」

「だな」





________________






『えー。試験の制限時間は100分となります。全力を尽くしてください』


 こちら、都会エリア。

 都会エリアとは。簡潔に述べれば、ビルやら煙突やらが沢山ある。そして死角と言うか、開けた場所が殆どない。

 だから不意打ちとかを狙うにはうってつけ。1対1の真剣勝負をしようとするには、ちょっと場所が悪い。まあ都会だから、道路も結構広めにあるけど、それでもタイマンをするような広さが備わっている訳ではない。


『では、スタート』


 まあ、折角の都会のビル群と言う事で。空間を広く使う。


「……」

「……」


 リヒトとアイコンタクトを取る。


 ちなみに俺は、15mとかぐらいの高さのビルにいる。都会の超高層ビルとかと比べれば低いかもしれないけど、残念ながらこちらの都会エリアのビルは高くても30mとか、そんぐらいの高さ。だからまあ、このビルは特別高い訳でもないんだけど、低いってほどでもないかなぁ?


 で、リヒトとのアイコンタクトの理由は、まあ頼むぞ、任せられた、みたいな事。


「ラッキー」

「げっ、っと」


 俺とリヒトは喋っちゃだめなんだった。相手を煽るのもダメだし、下手なこと喋ってアドバイスになる事もあり得るから、とりあえず一言も喋っちゃダメって事になってる。

 いやまあちょっと声が漏れる程度だったら良いだろうけど、流石に嫌がる声を発するのは、失礼よな。


「じゃ、150ポイント、頂きますね」

「んー」


 そのビッグマウスは、相手の実力がわかっていないのか、それとも自分の実力に絶対的な自信を持っているのか。どっちか。

 ちなみにこの受験生、丁度となりの、20m超えのビルに居た。……馬鹿と煙は高いところが好き、って言葉は正しいのかな?


「!!」

「マジですか。これ躱すのか」


 いやいやいや。マジですか、って言いたいのは俺の方よ?

 普通さ?5mちょっとの高さから飛び降りる時、着地に意識が向かうじゃん?だって5mなんていう高さは下手しなくても骨折するような高さなんだし。

 でもその落下する速度を活かしつつ、俺の心臓を狙ってきやがった。わかる?いきなり、利き腕の肩とかじゃなく、左胸、つまり心臓を狙ってきた。

 まあこれは命の獲りあいじゃないから死ぬことはないけど、そういう戦いだったら、いきなり心臓を狙いに来たって事だ。

 それも着地の心配とかをする事なく、的だけを狙っていた。


「はぁ」


 一定の距離を取る。


 嫌だなぁ。確かにビルの屋上の上から戦場を把握しようとしてたから、ウォーミングアップを取る事は出来なかっただろうけどさ。どーせならアップを取ってからやりたかった。


「行きますよ」

「……」


 無駄にビックマウスなくせして、なんで敬語を使うんだろうか。一応センパイを敬う気持ちと言うのは持っているのだろうか。嬉しいねえ。


 今度は心臓を狙うのではなく、左肩を狙ってきた。確実に狙えるところから狙う方針に変えたようだ。

 でもな。いくら利き腕じゃない方の肩とは言え、そう簡単に攻撃される訳にはいかないのよ。だって片腕、まあ肩を攻撃されれば、利き腕じゃないとは言え肩を攻撃されたら、なんだかんだでパフォーマンスが下がる。これは経験談。

 だから、攻撃される事なく、完封することを目標とする。


 と、思ってみたものの。学園側からは、出来る限り俺達に攻撃してくる奴は攻撃するなとのお達しがある。何故か?それはどう考えても俺達の方が強者であって、その強者に挑むだけの心意気だとか自信を評価して、出来る限り実力を評価する機会を増やしたいから、俺達がその挑戦者の的に当てる事は出来る限り避けろ、との事だ。

 まあ何が言いたいのかと言えばだ。そいつらの心意気やよし。生かしておけ。ってな感じ。


 だから、正直俺達としては、逃げの一手しか選択肢がないというか。だって俺達は実質的に学園側から攻撃を禁止されている訳だし。攻撃されたら攻撃してもいいって言われてはいるけど、出来る限り攻撃するなとも言われている。どっちだよ。だから取れる手段が逃げしか残って無いというか。

 でもここで逃げたら、まあ受験生にビビって逃げた、とか色々言われる可能性がある。まあ俺は見知らぬ人からの評価なんて、正直どうでも良いんだけど。それでも勝手に学園の評価も下げられ、その下げた原因である俺が色々と厄介な事言われるのは嫌だから、真面目に戦うしか選択肢がない。


「……」



 まあ、喋るなとは言われてるけど、挑発するなとは言われてないので、とりあえず煽る。戦いの基本その一。とりあえず煽る。まあ煽ったら厄介な事になるけど。でも俺より格下であろう相手には、とりあえず煽る。その方が相手も本気を出してくれる。


「随分と余裕ですね。その自信、これから粉々にしてあげますよ」

「……」




______________



 この試験は、武器を持っていても構わない。まあ真剣を使うのはダメなんで、刃がある部分に布を巻いたり、鞘に入れたまま使ったり等の制限は掛かるけど。

 ってか武器なんて使ってても、的に当てないといけないのは特定のボールだから、正直武器は邪魔にしかならないけど。まあ敵を戦闘不能にしてから、3つ全部の的にボールを当てる、って言う選択も取れなくもないから、まあ邪魔ってほどでもないのかな?


 で、この受験生が使うのは槍。よく言われている、槍使いと戦うには、三倍の実力がいる、みたいなあれ。まあリーチが剣よりも長いからね。その分有利に戦えるって訳だ。


「くそっ、当たらない」


 顔や肩を狙った突きの3連撃。

 そこから派生させて振り下げ。まあこの程度なら難なく躱せるとも。

 で、槍が地面に着いたら、棒高跳びみたいに、槍を支えとして、自身で攻撃。

 っと見せかけての、俺の目の前ぐらいまで跳んだら槍を大きく薙ぎ払う。残念な事に、空に逃げる選択を取らされた。

 まあもちろん相手の思うつぼな訳で。蹴りを仕掛けてくる。が、空中にいる分、動きが雑になっている。そのため動きを読むなんて用意な事。最小限の動きで蹴りを躱す。

 そして蹴りを空ぶった受験生を足場に、ちょいと後ろに跳ぶ。と同時に、受験生を蹴とばす。


 んー。今日は調子が良いぜ。


「クソッ!」





____________





 いやぁ。自分でもね。びっくりしてる。びっくりしすぎてビックになりそう。は?

 話を戻して。いやぁ。今日は何故だか、()()()()()()()()()()()。マジでびっくりするぐらいに見える。

 例えるのなら、そう。相手の次の動きが見えるぐらいには、相手の動きが見えた。


「……」


 だからね。あの受験生の攻撃は、俺が言っちゃなんだけど、可哀想なぐらいに俺に当たる事は無かった。


「ハァ、ハァ、どういう事だ?オレの攻撃が、全く当たらないだって?当たれば、当たりさえすれば」


 そーいや、この受験生は能力を使ってないな。まあ俺も能力を使ってないし(まだ使えないだけ)、他人の事は言えないか。


 にしても。こいつ、よく動けるなぁ。もう20分以上は全力?での攻撃を繰り広げてたし。

 よく言われてるけど、全力での攻撃は、100m走を全力で走ってるレベルで体力を消費する。それを20分。まあ100m走での走りで考えれば、10㎞ちょっとを全力(100mを全力で走る速度で走ってる前提)で走ってる感じかな?うーん。疲れるだろうに。よくやってるよ。


「……」


 うーん。でも俺は一切攻撃してないってのも相まって、常に相手を煽りながら戦ってたみたいな感じじゃん?だから熱が入っちゃって、諦めるっていう選択肢を見つけれてないんだよね、あの受験生。さてどーっすかな。


 まー、喋るなとは言われてるけど、ちょっとぐらいなら喋ってもいいだろ。そう、独り言。独り言を言うぐらいは許されるはず。


「あー。俺なら、無難にクリアの点数を集めてから、挑みたい相手に挑むかなぁ?じゃないと試験は失格になるしなぁ」


 正直、俺はこの受験生に受かってほしいとも落ちて欲しいとも思っていない。どーでもいい。それが俺の気持ちです。

 でもね。目の前の敵に盲目的に挑もうとする受験生を見たら、ちょっと憐れみと言うか、可哀想と思ってしまって。ついアドバイスをしてしまった。


 そしてまあ。折角制限時間が沢山あるんだから、俺以外にもいるであろう、受験生での強者だったり、補習生兼試験官と戯れて、それで自分の実力を示して欲しい。

 なにも自分の実力を示すのに、黒の的を持ってる試験官を倒す、ってだけじゃないからな。……、まあ、俺はそうしたんだけど。


「それと、もう一人の試験官に挑んでみるのもいいんじゃないのかなぁ?相性ってのもあるし」


 まあ、リヒトもそう簡単に倒されるような強さはしてないけど、この受験生の動きはとても素晴らしかったから、うまく行けばリヒトの的を一つぐらい当てる事ができそう。


「ま、何もしないで帰れなんて言われても納得しないだろうからね。はい、さっさとどっかへ行くんだな」


 他の人の事を考え、一番ポイントの高い心臓を貰っておいた。

 正直、このレベルの実力があるのなら、並の受験生じゃ相手にならない。下手したら、1ポイントすら取れない可能性が高い。

 だからね。絶対に取れないであろう心臓の5ポイントを、わたくしが頂く。まあ俺が的にボールを当てたところで、何も得ないんだけど。

 あ、試験官をやっている給料はでる。でもポイント数でのボーナスはない。だから真面目にやるだけ無駄だったりもする。


「なんでだ!なんでお前なんかに、オレの攻撃が一切当たらないんだ!」


 うわぉ。逆ギレだよ。本当にあるんだな。


 うーん。それにしても、なんで俺が受験生の攻撃が一切当たらないのか、か。

 まあ一言で言えば、俺がこの学園に入学してる生徒で、あっちはまだこの学園に入学してない中坊だから、って答えが一番しっくりくる気がするんだけど。

 正直、こういう時ってマジレスされるのが一番腹立つじゃん?

 だからここは、学園に言われてる通り、無言を貫き通す。だって俺に最適解を出せる自信なんてないもの。


「……」

「こういう時に限って何も言わないんですか。ズルいっすね」

「おら、残り1時間以上もあるんだ。再挑戦したいならもう一回来ると良いさ。でもその試験官を余裕で倒せるって思ってた驕りが消えないのであれば、今度こそ俺はお前を倒す為の動きをするからな?」


 正直、この学園に入学するには、実力は十分だと思う。けど先輩を倒す実力としては、些か不足している。

 そこに自分は強い、こいつらには負けない、って言う驕り。自信なら良いんだよ。驕りだからダメなんだよ。そうすると自分の実力を全部出そうとしないんだもん。それがダメなんだよ。


「……」


「うん、行ったな。やー。疲れた。今日に限って動きがよく見えたから良いものの、普段通りだったら、なかなかに危なかったなぁー。やー、動きが見えてよかったよかった」


 さっきまで散々格好つけてたけど。正味、今日が調子が良くて、相手の動きが手に取るようにわかる状態だったから、あの受験生の猛攻を躱せた、ってのはある。


「さて。俺も乱戦が起きてる場所に向かうとしますかね」


 乱戦が起きてる場所に俺が乱入して、更に場を荒らしたい。というか、これが試験官の役割。どれだけイレギュラーな事になっても、普段通りの動きができるのか、それを確認するため。


「リヒトは大丈夫かなぁ?まああいつだし大丈夫か」


 おっ。良い感じの乱戦してる場所発見。荒らしに、行こ。

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