24.決着
いやはや。俺、想像以上に片腕しか使えないというハンデを味わっていた。それはもう、土の味を味わう程度には、苦戦を強いられてた。
「土、いや石か。利用できそうだな」
とりあえず、地面に立つ。
「受け身取るのうまいな、片腕しか使えないくせして」
「生憎と、体の使い方は抜群だと自負してるからな」
さてさて。木刀を握ってないとリヒトの攻撃を防ぐことはできないだろうけど、正直剣を抜群に使い慣れてるリヒトとほとんど素人の俺じゃ、多分木刀を持っていても防ぎようがない。
そしてまあ、俺、剣での攻撃もできなくはないけど、正直素人に毛が生えた程度の実力で、ピンポイントで紙風船を狙って破壊するのは、ちょっとまだ厳しいだろうし。
うん。木刀、捨てよう。
「あとは、」
「おいおい、怪我の事気にしないのかよ」
「勝負ごとだから、手加減なんてできないからな」
腕を吊るしてた布を棄てる。包帯は、流石に取らない。手の怪我を晒すのは、流石に怪我を悪化させるだけだから、それはしない。
でも腕を吊るしてた布を棄てたおかげで、左腕も自由になった。これで幾分か戦いやすくなった。
ちなみに。左腕についてた紙風船は外した。だって左腕を動かすにあたり、左腕についてる紙風船なんて邪魔なだけだもん。
つまり残ってる紙風船は、頭のだけ。紙風船、残り1つになった。
「十分舐められてる気分だけどな」
「大丈夫。のこり2つを割るのと、1個も割られないようにするのは簡単だから」
「こなくそ」
「んじゃ、行くぞ」
「来いッ」
うん、動きやすいね。流石は両腕自由になっただけある。
右足での蹴り。左肩を狙った蹴りで、結構蹴り上げてる状態。
勿論これは躱される。まあしゃーない。なんたって大振りな蹴りだったから、動きが読まれやすい。だから躱されるのは予想済み。
「ペッ」
「は?」
口から石を吐き出した。さっき頭を地面に擦り付けられてた時に見つけた石を口に含んでいた。とても不味かった。
でもまあ、こうして不意打ちは綺麗に決まった。
「これで互いに風船は1個だな」
「マジか。随分な不意打ちだな、おい」
「効いたろ?」
「恥だとか外聞を気にしないのか」
「そんなんを捨てて生きれるのなら、俺は喜んで捨てるね」
まあ今は生死が懸かってる訳じゃないけど。
まあ勝つためにやってる事だから、そんな苦痛じゃない。まあ土の味となんか鉄っぽい味がして、とても吐き出したいけど。
「っと、一応剣は拾っておいて」
「まあ、割られなければいい話だからな。お互いラスト1つを懸けて、ラストバトルと行こうか」
「生憎と、俺はまだ戦いを続けさせてもらうけどな」
_______
そこからは、まあいい勝負をしたんじゃない?俺はどうしても手負いってのがあって、終始リヒトが優勢だっただろうけど。
そして現在。剣での鍔迫り合いが発生中。
えーまー、現状を簡潔に述べるのであれば。俺は片腕で、リヒトは両腕を使えて、そんな状況での力の比べっこ。まーどう考えても俺には勝ち目がない。だって左腕で支えられない分ってのは、かなり大きいのよ?腕相撲した事あるでしょ?片手と両手どっちが勝つってなったら、圧倒的な実力差が無い限り、両手使う奴が勝つだろ?そういう事だよ。
「っと、そんな不意打ちまがいな事は俺には効かんぞ」
左腕を咄嗟に頭の前までもっていった。
リヒトが左手を使って、俺の頭の紙風船を割ろうとしてたから。おかげで怪我してる左腕で防ぐことになった。
「それを言うのなら、ボクも同じだぞ」
「ちょっとぐらい不意打ちに対応してくれなくても良いんだよ?」
「誰がそんな」
「ぶっーーーー!」
「うわっ、汚っ!」
口の中にある全水分を総動員させ、目潰し。と言う名の、唾を吐きかけた。
「今だ」
「なっ」
手で紙風船がある場所を守る。あと攻撃されないように、適当に俺のいる方に剣を振り回す。
だがな。残念だったな。俺の攻撃は不意打ちに不意打ちを重ねたものだったのだ。
「ぷっ」
ふっ、もう二度と、地面に落ちてるものなんて口に含みたくないぜ。
「何が」
「かーんたん。俺の口の中には、だいたい10個程度の石ころが入ってたのでした。ちゃんちゃん、って話よ。まー、一度見せたから警戒するだろうけど、その警戒をも利用する、ってな?どう?細かい不意打ちと言うか、罠を張り巡らせたおかげで、口に石があるなんて考えもしなかったろ?」
「確かにそうだけど」
「それに、まあ常識的に考えて、地面の石を何個も口に入れるなんて考えないよなぁ?だからとった作戦だった。どう、うまくいったろ?まあ接近しないとこの攻撃は通用しないというか、そんな遠くまで石を飛ばせないし、飛ばしたとしても風船を割れる威力がないけど」
いやぁ、口の中に入ってた石を全部出す。
うばぁ、っと、唾液もいっぱいでた。……いっぱい、でたね?
「ってな訳で、リヒトも脱落だな」
「くっ、いつかこの雪辱を晴らすからな」
「……、男に唾は掛けられたくないよ?」
「誰がそんな汚い真似するって言うんだ。まあ頭に来てないと言えば嘘になるが」
「おら、さっさと退場せい。俺は最後の戦いに、挑まないといけないんだッ!」
「確かに、フォーセさんが相手なら、苦戦は必至だな。ってか一切攻撃できないんじゃないのか?女だからって手を抜いて」
「いや確かにフォーセさんに攻撃するなんて言語道断だけど、ここまで来て手を抜く真似は、失礼だと思うから、精一杯戦うけど」
「ま、健闘を祈ってる。ボクを倒したんだ。せいぜい1位になってくれよ?」
「実技の成績だとフォーセさんの方が高いのによく言うよ」
「ボクより強いんだから、フォーセさんに勝てる可能性だってある訳だ。それに、どうせならよく知ってる友人を応援したいだろ?」
「リヒト君っ!好き」
「はいはい」
もー。本気だったの、にっ。
「俺とリヒトが必死にタイマンしてる間に、どーやって2人を脱落させたの?見た感じだと、片方は紙風船全部残ってたけど」
「ヴァン君になら、教えてもいい」
「え、なにその俺だけ特別みたいな言い方。惚れてまうやろ」
まあ既に惚れてるんだけどね奥さん。
「ん、んんんん?」
う、動かない。全く動けない。ぴくりとも動け、あいや、ピクリとは動けた。腕をぴくぴくさせたりとかはできる。でもそれ以上ができない。
つまり何が言いたいのかと言えば、フォーセさんのところに向かっていくこともできなければ、攻撃されても防ぐことができない。だって動けないのだもの。
「ごめんね。でもあまり傷つけたくはないの」
「あーっと。せめて説明を」
「簡単に言えば、影縫い。ヴァン君の影を、その姿で固定した。だから体はそれの姿から動けない」
「あー」
つまり、なんだ?とりあえず、詰みって事だな。だって動けないのだもの。
「ごめんね」
「謝りながら割られるのは、なんだかなぁ、って感じだけど」
『いやぁ。優勝はフォーセ。予想通りは覆らず。私としては、もっとリヒトが活躍する場面を見たかった』
『あんたの個人的話はいらないのよ。まあ予想外と言えば、ヴァンが2位になったのはなかなかに想定外の出来事では?』
『確かにそうですね~。それに彼、VIP賞、取っちゃってますからね。向かってくる敵をことごとく返り討ちに合わせてましたからね。いやぁ、怪我してなかったら果たしてどれだけすごかったのやら。その実力を見てみたかった』
『で、3位はリヒト。総合成績1位の名は伊達ではないのか、3位に落ち着いたね。まあ本人にしたら、1位を狙えるような成績だし、それに見合う以上の実力があった分、とても悔しい思いをしてると思うけど。次は頑張ってほしいわね』
『ふぅー。生徒想いのいい先生だね~』
『う、うっさいわね。ただ実況として、客観的な事実を述べただけよ』
先生が、デレた、だと?
いや今のはデレとはまた違う?まあでも、先生がああやって頑張れとか言う事は極稀だから、十分デレたと言っても過言だ。
『じゃ、そういう訳で。順位を競う競技はおしまい!次はレクリエーション!レクリエーションで行う競技を発表するぞ~!1つ、借り物競走、2つ、玉入れ、3つ、玉転がし、4つ、綱引き、5つ、リレー。この中から必ず1つの種目には出てくださいねー』
ってな訳で。俺の体育祭は2位と言う、まあ好成績で幕を閉じた。まあレクリエーションが残ってるけど。
あ、あとVIP賞も俺が獲ったらしい。やったね、これでスポンサーが付くよ。
フォーセの能力は、対人戦では無類の強さを誇ります。まあ気合で影縫いとかは解けるんですけど、ヴァンの気合じゃ解けません。頑張れ。
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