23.試合開始!
『ルールのおさらい!どーぞ』
『自分ですりゃいいのに。えー、ルールのおさらいね。ルール1、体のどこか3か所に紙風船を付ける。それを全部割られたら負け。最後まで残った人が優勝。沢山紙風船を割った人が勝ちではなく、最後まで紙風船が残っている人が勝ちです』
俺が紙風船を付けた場所は、頭、左肩、左腕!
この紙風船を付ける場所って、基本的には自分が守りやすいような場所に付ける。なにがあっても、脇腹とか、そういうもし攻撃された時の影響がでかそうな部位には付けない。まあ守りきれるのであれば、どこに付けようが関係ないけど。
じゃあなんで俺は左腕だとか左肩とかの、未だ怪我が健在の場所に付けているのかと言えば。だって怪我してる場所に攻撃するなんて、出来た人間ならそんな事できないだろ?だから。人の情に訴えかける作戦。
頭はまあ、おきまり、みたいな?そこには絶対に付けないといけない感じがした。
『殺すような攻撃以外は基本なんでもあり。でも度が過ぎた攻撃を繰り返す場合は失格にするので、その辺りの匙加減、選手の皆さんは気を付けて欲しいです』
度が過ぎた攻撃って、まあ骨折だとかそーゆー攻撃を沢山したらダメ、って事だよな。まあ常識的に考えて、意図してそんな攻撃をするようなサイコパスってのはいないだろ。
常識外にそういう奴等はいるから、俺の常識にはサイコパスなんて存在しない。
『まあそんなこんなで、選手も全員舞台に上がったね』
『はいじゃあ、皆さん、怪我しない程度に頑張ってくださいね。はい、スタート』
「……」
このバトルロイヤル、欠点と言うか、これに限らずにバトルロイヤル系だと、どうしても起こりえる事態。
全員が様子見。
だって誰がどこかに攻撃を行くってなったら、その分背後の警戒とかは疎かになるじゃん? って事は誰かがハイエナしようとする訳じゃん?
もちろんそんなの誰もが理解してるから、できる限り動きたくない訳よ。どちらかと言えばハイエナ側でいたいのよ。
これがテレビとかで披露するパフォーマンスとかだったらね?そういう見ごたえのない展開にはしないよ。でもね?ここにいる奴等は本気で勝ちを狙ってる奴等だからね?そんな見ごたえとか、見所さんとか、そういうのは気にしないのよ。
だから結果的に、全員が様子見、ってなる。
まあ、フーコとかみたいに、遠距離攻撃できる能力だったら、この様子見に加わる必要はないだろうけど。うん。1番最初に動いたら、それはそれで狙われそうだからできないか。
『あ、そうそう。ここで1番紙風船を割った人はVIP賞があるよ。なんとあの有名企業がスポンサー契約が』
そう言った瞬間、全員がババっっと動き出した。なんだよ皆、現金な奴だな。そんなにスポンサー契約か大事か。大事だな。収入源だもんな。
まあ学生だからほとんど学園外での活躍ってのはないけど、それでもこの頃からスポンサー契約に応じてくれるって事は、それなりの報酬も貰える訳だろ?お給料は無理でも、服とかの支給があったりだとか。
こりゃ頑張るしかない!
『さあさあ、盛り上がってまいりましたよ!果たして誰が生き残るのか!』
『下馬評だと、フォーセが1番人気、かな。2番がリヒト。まあ単純に、成績と照らし合わせた結果って感じですね』
『ですがこの乱闘、何が起きるかわからないから良いんです!予想通りが起きない、それがバトルロイヤルなんです!』
さて誰を狙うか。順当に行けば、能力以外は点でダメなフーコが狙い目だけど、こいつは他のメンツからも狙われるだろうしな。別の人間を狙うべきだよな。さて誰を狙おうか。
「は?俺が狙いってか?」
フーコにだいたい3人、俺に7人ぐらい向かってきた。え、フーコより俺の方が紙風船割りやすいと思われてるって事?そんな心外な!
そりゃ片腕骨折してるし、足も治って1週間程度しか経ってないから、それほど激しい運動はしてこなかったし、なんならまだ安静にしてろって言われてるぐらいには怪我は酷いけども!
なんだって俺を狙うんだ!
「やめろよフーコでも狙ってろよあいつの方が能力しか能がない奴だしねらい目だろうが」
「能力も体術もできなさそうなお前を狙う。ただそれだけだろ」
「おめえその言葉、後悔させてやっかんな!」
まあこの7人のうち、果たして何人が隙だらけの背後を狙うハイエナ野郎なのか。まあ俺は向かってくる奴の相手をするだけ。気にしない。
ちなみに俺が能力を使えない(ダンジョンで風を使ってたようだけど、俺自身憶えてないので、周りも知らない)事は羞恥の事実だ。
だから能力も体術もできない、フーコ以下認定を受けた。酷い。俺がフーコ以下だって?そんな酷いよあんまりだよ!
『おっと、弱いものいじめか!?』
『それをさせるための煽り文句だったじゃん』
___________
ふぅ。 疲れたぜ。
『え、っと。誰がこんな事を予想できたのか!?』
『ま、まあ、ヴァンは試験の時に欠席しただけで、本来なら実技の成績はトップ10に入れるような、実技だけは優秀な生徒だからね。まあ、うん。こうなるのも予想外ではないとも言えなくともないけど、うん。怪我してる状態で負けるなんて、うちの生徒と言い、あんたのところの生徒と言い、ちょっと残念としか』
『うちの生徒だってそんなやわな鍛え方はしてないはずなんだけどな。どーなってんの、あの子』
『強いて言うなら、野生児、としか』
うん。向かってきた7人、全員打ちのめした。
いやぁ、片腕を使えないのって、想像以上にハンデになるんだな。動きが滅茶苦茶になった。まあそもそも木刀なんて持ってる時点で、動きがボロボロだったけど。
そして7人を打ちのめす対価として、左肩の紙風船を割られた。痛い。
けど7人分のほとんどの紙風船を、俺が割った。17個。これが俺が割った紙風船の数。残りの4個は、誰かが背後から隙を伺って割った。
で、残りの人数、5名。俺、リヒト、フォーセ、ユキ、ノエルの5名。
『おっと、ここでまた沈黙』
『まあしょうがないですかね。ここまで残ってる分、安易に近づいたら風船が割られるでしょうし』
はてさてどーしよっか。実力で言えば、フォーセ、リヒトと俺が同等ぐらい、ユキ、ノエル、ってな感じになると思うけど。だから近づいて勝てるとしたら、多分ノエルだけ。
ユキは能力と体術をハイブリッドに使いこなす、ハイブリッドな野郎だから、こっちも能力を使えないと厳しい可能性がある。負ける事は無くとも、ユキはとりあえず相性は悪い。
でもなぁ。正直ここまで残ってる奴って、苦戦は必至だからなぁ。他への配慮とか絶対できないし、防御が手薄になるだろうしなあ。
あ、もちろんさっきまでも苦戦はしてた。苦戦はしてたけど、あいつらが勝手に怪我人、まあ左腕が死角みたいな感じで戦ってくれてたおかげで、幾分か戦いやすかった。
『さて、誰が先に動くのか!』
『なにかきっかけが欲しいところですね~』
さてどーしたものか。
「マジか!?」
「どうせだ。タイマンといこう」
「リヒトの相手はしたくねえんだよ!」
突進の勢いを利用した、木刀での突き攻撃。
これを右肩を後ろに下げ、というか体をねじり、これを躱す。
が、突きの勢いを殺さず、すかさずに俺が躱した方向への薙ぎ払い。
防御?木刀で?いや、こいつを使った攻撃のいなし方、防ぎ方は知ってはいるものの、ちゃんと使いこなせる訳ではない。
だからこれで防ぐのは、ちょいと厳しい。なにより突きの勢いを利用した両手での攻撃と、片手でちゃんとした防ぎ方も知らない剣での防御。どう考えたって、向こうに利がある。
「!! こっわ」
「なんでそれで躱せるんだ」
剣を突き立て、それを軸に体を浮かせた。というか跳んだ。ジャンプした。
ただ、軸になってる剣に、リヒトの攻撃が直撃したため、バランスは崩す。わかりやすいように伝えるのならば、背負い投げを喰らった状態みたいになってる。背中から地面にダイブしようとしている。
そうなってくれば、勿論剣を振り下ろしてくる。頭に一本。
やっべえよ。頭に付けたのはお約束とか以前に、普通にしてたら頭の上を狙うのって逆に難しいってのと、そこだけは攻撃されちゃダメな部位だから、何がなんでも守らないといけない部位の一つ。だからそこにしたのに。
こんな無防備な状態での攻撃は、流石に躱せない。
そして頭に木刀が直撃すれば、しばらくふらつく。最低な場合、頭から血を流して、ぶっ倒れる。
さあ困ったぞ!
「せいっ!」
「なっ」
体を九の字に曲げ、靴を蹴り飛ばした。リヒトの体のどこかに当たったという訳ではないけども、想定外な行動を取れたおかげで、リヒトの攻撃の手は緩んだ。
そう。これは殺し合いじゃなくて、ただ紙風船を割る試合。だから機を狙った奇天烈な動きをしたら、意外にも戸惑ってくれたりするもの。
「あっぶねえ」
「一筋縄ではいかないな」
そんなこんなで、周りに人が残っている状態で、リヒトとの対決が始まった。どーかこのタイマンが邪魔されませんように。
ちなみにヴァン予想の実力差ですけど、あれ本人は自分が怪我してない状態で考えてます。けどまあ怪我してても、ユキと言いノエルと言い、多分ヴァンには敵わないですけど。あ、タイマン想定です。




