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冒険者教育論  作者: ゆきつき
2章熱血体育祭、文化祭
17/30

16.徒競走

『さあさあ、やって来ましたよ、この時が!セイチ学園体育祭1年生の部、開幕です!』


 まあそういう訳でございまして、体育祭当日。

 足の骨折だとかあばらの骨折とかは無事、完治。本当なら全治2か月とか言われた怪我を、頑張って1か月で治した。まあなにか意識してた訳じゃないから、俺の自然治癒能力に感謝しかない。

 まあでも、左腕に風穴開いた怪我は今もなお、包帯でぐるぐる巻きにして、腕を吊るしている状態。まだ動かすな、と医者には言われた。

 あ、因みに足の骨折とかも治る前から動かしまくってたせいで、医者に怒鳴られるという貴重な経験をした。まあでも動かしてでも医者の見込みより早く治ったんだし、俺の勝ちだろ。


『いやぁ。今回は優秀な生徒が多いですからね。どうなると思います?』

『私?そりゃあうちのクラスの子たちがトップ10を独占するんじゃないの?』

『相変わらず、自分の生徒に甘いですねぇ。まあうちも譲るつもりはないですが』


 先生が、デレた。


「おいおいおい」

「死ぬわ、俺達」

「先生がデレた、だと?」

「天変地異が起きるぞ!」


 まあうちのクラスの男子は頭がちょっとばかし狂ってるから、先生がデレて大はしゃぎ。馬鹿じゃねえのって思うぐらいには、大はしゃぎ。

 まあそうは言っても、俺も同じぐらいにはびっくりしてる。え、空から槍とか降ってこないよね?


『まあ前置きはそろそろ良いとして。第一競技の発表!』

『今年はどんなのかな』

『もっと盛り上げてよー』


 ちゃんと打ち合わせしといてよー。


『では、発表します。デレデレデレデレデレ、でんっ! 10㎞走です!』


 10㎞走って。そんな100m走みたいに言われても。規模がちょいと違いすぎるんじゃ。


『じゃ、説明しますねー。お願いします』

『私に丸投げか。まあ良いけど。10㎞走は、学園の周りおよそ10㎞を、その名の通りに走ってもらう事です。ですがここは特進があるセイチ学園。能力の使用が許可されます。ですが、やりすぎはダメです。相手を妨害するのは良いですが、相手を気絶させるような規模の能力の使用はダメです。まあ他は基本的にはOKなので、妨害しながら、1番を狙いましょう』

『はい、ありがとうございましたー。そういう訳で、スタートラインに集まってくださーい。あ、スタートするまでは能力の使用は禁止ですから。暴力行為も禁止ですから』


 うーん。にしても、10㎞かぁ。怪我が再発したりとかしないかなぁ。いや医者からはまだまだ絶対安静とか言われてるけども。

 でも俺はそんな事は無視して体育祭に出場する。何故かって?俺は青春の1ページに体育祭を楽しんだという項目を追加したいからだ。


「あっ、リヒトじゃん、うぃっすー」

「げっ、ヴァン。どうして」

「一緒に行こうぜー」

「そうなると思って距離を取っていたのに」


 あ、そうそう。実況側は盛り上げる為に今からやる競技は~、とかしてたけど。第1種目は何をするのか、既に俺達は知っていた。

 つまりまあ、あの実況のあれは、ただの確認行為だ。まあ三十路手前ぐらいの女性がキャッキャウフフするのを楽しむ時間だった訳だ。ただの観客を楽しませる行為だったわけだ。

 ちなみに先生がデレてくれたから、俺は十分楽しめた。


「ま、いいじゃないのー」

「それの、どこが、良いと言えるんだ!」

「痛い痛い、やめてよ。まだ怪我が治ってないんだから」

「だから一緒は嫌だったんだ。気を遣う必要が出てくる」

「大丈夫。置いてかれるなら、それまでだから」

「そう簡単に割り切れないんだよ人情ってやつは」


 あらやだ、ヴァンったらイケメン。


『そろそろ良いですか~?』

『じゃ、スタート』


 え、そんなあっさりとスタート宣言するの?え、マジで?


 おっと、後ろから人がなだれ込んでくる。


「おら、さっさと行くぞ。ここで良い記録を残せておけば、スポンサーになろうと思ってくれる企業が出てくるんだ。本気で行くからな」

「あ、待ってー」


 冒険者の基本収益は、スポンサーだったり違ったり。



________





 じゃらじゃらじゃらじゃら


「でな?俺は新聞部に突撃してやったわけよ。この間のちんこ事件に対して文句を言いに行ってやった訳よ。そしたらな?何て言われたと思う?『すみません、すみません。あの子が勝手にやった事なんです』、だってよ。あり得なくね?ただでさえ学園記事に載せちゃならんレベルのプライバシーが暴露されたってのに、それが個人の暴走で起きたんだぜ?全くどうかしてるぜ!まあ話には続きがあってな?なんとハタさんが俺の写真で稼いだ分を、全額譲ってくれるって言うじゃないの。その金がまーかなりあったの。いやぁ、これだけあれば、1か月もやし生活ができるってもんよ」

「はぁ、はぁ。色々とツッコミどころはあるが、一つ。なんでまだ喋る余裕がある訳?」

「アロウも喋ってるじゃーん。ぐいぐい。いやぁ。見る?見ちゃう?」


 腰につけてた小袋を取る。


「ほら!いやぁ、こんな大金を手にしたのは初めてかもなぁ。初めてうまいと思えるもやしを食えるってもんよ」

「どーりでさっきからじゃらじゃら五月蠅いと思った。ってかこんな場所に金なんて持ち込んでくるな!」

「ふざけんな!こんな大金、誰の見張りも無く置いておいたら盗まれるだろ!」

「ヴァンの大金の感覚は一般人の普通ぐらいの金額、いや子供のお小遣い程度なんだよ誰も盗みなんかしねえよ!」


 そ、そんな…

 こんな、大金を?盗みやしないと?そ、そんな。馬鹿な。


「えー。いや、金の価値は人それぞれ。俺が大金だと思えば、それは大金だ!」

「もー自分1人で会話してくれ。疲れる」


 疲れるって。まだ谷あり崖ありの9㎞ちょっと走っただけじゃん。

 あ、もうすぐゴールか。いやぁ、どのぐらい走った?30分とちょびっと?うーん。このぐらいだったら、怪我無しで20分とか25分で走りきれたはずだけど、やっぱ怪我してるせいで走りにくいなぁー。


『6着は、リヒトリヒト。総合成績1位のリヒト君がこの順位は波乱の予感か!?』

『7着は、え?ヴァン?』

『おっと、見た感じですと、腕を怪我して吊るしてますねー。そんな彼が、リヒト君に続いての7位!えーっと、成績は、んーっと、少なくとも、10位に入っているような生徒ではないですねー。ますます波乱の予感がしますよ、今年の体育祭は!』


 7着か。まあ妥当かな。

 ちなみに10㎞の世界記録が26分とちょっとだそう。障害ありで能力使用ありにしても、30分とちょっとで走ってる彼等は異常です。そしてそんな場所に怪我してるヴァンがいるのもさらに異常です。異常さで言えば、オリンピック現在1位を走っている選手の横をカメラを持ちながらずっとインタビューしてくるぐらいには異常です。

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