17.ボッチに厳しい、2人組を組んでください。
『さてさて。全員ゴールしたかな?』
『じゃ、ポイントの振り分け方を説明しますよ』
この体育祭はこう、体育祭と言うより、いわゆる陸上の10種競技的な感じで、ポイントを集める感じだ。いや、体育祭も普通に順位によってポイント加算されるか。こう、そのポイントが、個人に振り分けられる感じで、クラス対抗じゃない。完全な個人戦なのだ。今更だけど。
『最下位から1ポイント2ポイントと言う風に増えて行き、最終的には100数ポイント、ではありません!』
『えーっと、隣のがうざいので、私から説明しますね。1位から16位までは、10000ポイントプラス順位分のポイントが付与されます。まあ詳しく知りたい方は、こちらの掲示板をご覧ください。そして生徒達は手元にポイントが書かれたハチマキが届いている頃でしょう』
あ、来た。えーっとなになに。俺は、10009ポイント。まあ高いんだろうな。興味無いけど。
俺は順位どうのこうのじゃなくて、単純に体育祭を楽しみたいだけだから。まあポイントはあまり興味ない。
『じゃ、次の競技を発表しまーす』
『皆さんには見えないと思いますが、この箱の中に入っているものから次の競技を決定します』
『さてさて。何かな何かな。じゃらじゃらじゃら、じゃん!出ました!二人三脚です!』
に、二人三脚。えーっと、個人戦、とは?
どうやら、完全な個人戦ってのは、俺の勘違いだったらしい。
「二人三脚かー。リヒト、俺と組まない?」
「第1競技前なら、怪我しているヴァンは足手纏いだ、と言っていただろうな」
「足手纏いとはなんだよ。失礼なやっちゃな」
「まあ、いいんじゃないのか。まだルール説明が一切されてないけど」
「ああ、確かにそれがあった」
『ではルール説明です。二人三脚で走ってもらうコースは、先ほどと全く同じ、学園の周り約10㎞です』
二人三脚で、10㎞ですか。普通二人三脚って、こう、グラウンド半周、もしくは一周ぐらいしかしない競技なのでは?
『ですが、皆さんの想像する、二人で息を合わせて、足を同時に出すあれではございません』
「なあ、それって二人三脚なの?」
「説明を最後まで聞け。まあボクも同じ事を思ったけど」
『この紐。大体3mぐらいあります。これを互いの体に結び付けれるのであれば、どれだけ離れていてもOKです。ですが1度でもお互いを紐で繋げなくなった場合は失格となりますのでご注意ください!』
「それって二人三脚って言うの?」
「ま、まあ、言葉の意味としての二人三脚なんじゃないのか?こう、仕事を別けて一緒にやる、みたいな」
「ちょっと無理ない?」
「ボクもそう思った」
『ただし!まだあります。さっきの10㎞走と同じく、能力を使用した妨害はOKです。気絶させなければ、なんでもありです。そしてそして。この二人三脚の一番大事なところを話しますよ!』
「二人三脚って競走なんじゃないの?」
「さあ?違うんじゃないのか?今の話し方的に」
って言ってもな。そもそも二人三脚って、内側の足を紐で結んで、調子を合わせて走るものであって、基本的なところは徒競走とかと大差ない訳じゃん?順位を競い合う訳だから。
ただでさえ紐が繋がってるところならどのぐらい離れても良いってルールも変な感じなのに、さらに元の二人三脚からルールを離したら、もうそれ二人三脚じゃないでしょ?
『今渡したハチマキ、それを奪い合ってもらいます!』
『まあ簡単に説明すれば、相手のハチマキを奪えば、そのハチマキのポイント分が、自分達のポイントとなります。あ、今は個人のポイントのハチマキですが、二人三脚を始める時は2人合わせた分のポイントのハチマキになります。どちらがハチマキを持っておくのかとか、そういうのも戦略に絡んでくるかもね。あ、そうそう。必ずハチマキは体のどこかに巻く事。ちゃんとポイントが見えるように』
「なあこれ、どっちかと言えば、ルール、騎馬戦じゃね?」
「ま、まあ、2人で息を合わせなければならないから、二人三脚と言っているんだろう。どこにも騎馬はないし」
「まあなんと呼ぼうが構わないけど。あっ!俺達が組んだら、格好の餌食なんじゃ。2人で20000ちょいのポイントになる訳だろ?一発逆転しやすい組になるじゃん」
「けどポイントが高いという事は、それだけ第1競技の時に高順位だったという事。まあつまりは一発逆転を狙うような人よりもレベルが高い事を意味している訳だ。ポイントが高すぎるところを狙ったら、逆にポイントを奪われる危機もある訳だ」
「ほー。色々考えてんな」
「つまりは、ポイントが低いグループは後先考えずに一発逆転を狙うか、堅実に同じレベルのポイントのグループを狙うかの2つでき、同じようにボク達のようなのは、高得点のポイントのグループを今のうちに脱落させるためにも狙う必要もあれば、潰し合うのを期待しての堅実に少ないポイントを稼ぐか、はたまた今あるポイントを確実に守って、ちゃっちゃとゴールを目指すかの3通りがある。まあボクの考えてない他の案があるかもしれないけど」
なんか、頭がパンクしそう。
『あ、勿論ゴールした順位に伴ったポイントが付与されますよ。更には時間制限も。ポイントの奪い合いに熱が入って、ゴールすることを忘れないように注意してね。あと、一定以下の順位は次の競技に出れないので、皆頑張って上位を目指してね』
ほー。時間制限にもよるけど、こりゃさっさとゴール手前まで行くのが吉ってね。
「ゴール手前までそうそうに行くべきだな」
「まあ、疲れた相手を狙うのは狩人の基本だからな」
「まあ早くゴールまで行くという事は、そのグループも疲労が溜まる訳ではあるが。まあゴール前なら、制限時間をそこまで気にする必要は無いからな。どう考えても、本格的なポイントの奪い合いは、ゴール前だな」
「でもまあ低いポイントを奪うのは逆にスタート直後か」
「だろうな。そもそも低ポイントのグループは2人で息を合わせながら先ほどのコースをクリアできると言う見込みもないしな。更には余程じゃなければポイントを奪うのにも体力を消費するような相手がいない事も大きい。ってなれば、最初と最後、カオスになるだろうな」
「はぁ。ま、俺達はあれだな。次に進むだけで良いだろうし、無難にゴールを目指すだけで良いんじゃねえの?」
「だろうな。相手が奪う気ならそれに応じるだけだが、基本は敵対するだけ無駄だろう。他の1万ポイント所持者がどうするかわからないけど、2万もあれば、とりあえず次には進めるだろう。それに、ゴール時のポイントがさっきの競走みたいに1万もの大盤振る舞いをされれば立場が危うくなるからな。さっさとゴールするのが一番だろう」
って訳だ。俺達の作戦はさっきの通り、無難にゴールを目指す。敵対されたら一応応じるけど、ガチではやりあわない。ゴールすることが先決。
『っと、言い忘れてた』
『お茶目だなー』
あ、なんか台本読んでる。
『この二人三脚、男同士のペア、女同士のペアは認めません!ちゃんと男女異性カップルを作る事!』
『カップルじゃないでしょ。ペアを作るのよ、ペアを』
『てへっ、いっけね。勢い余ってカップルって言っちゃった、てへぺろ?』
わざとだろ、あれ。如何にもセリフを読んでますよ感ある喋りだったぞ、今のだけ。
『じゃ、今から10分。この時間までに登録しないと、そもそも出場資格がないって事で、失格になりますから、急いでペアを決めちゃって!』
「お、おい、どうするんだ、リヒト。俺達ペア組めないじゃん」
「そのようだな。まあ敵になったら容赦はしないからな」
「えー。ポイント奪うよりゴール先決って話はどーしたよ」
「それは、」
だだだだだだだだだだ、が正しい擬音。
「リヒト君、私をペアを組んで!」
「私と、私と組んで!」
「ダメよ、カップルになるのはあたし!」
「はぁ?身の程を弁えろよ雑魚が。お前なんかにリヒト様の斜め後ろなんか務まらねえよ!」
まあ、リヒトは1年ながらに学園での人気者になる程度にはイケメンだったりする。
そしてその人気故に今まで敬遠されてたけど、さっきの先生の煽りっぷりのせいで、女子の今まで我慢してたあれが爆発。まあ今はポイントが高いリヒトとペアを組むって言う免罪符があるから、女子もがつがつ来れるのだろう。
「ちょっと邪魔よ」
ぽーい、とされた。俺、怪我人なんですけど。女子怖い。メチャ怖い。でもメチャいい匂いした。汗かいてるはずなのに、こう、シーブリーズ的なあれの匂い以外にもいい匂いがした。やっぱ女子すげぇ。
「リヒトと物理的に離されてしまった。さてペアをどうするか」
俺の親しい間柄の人と言えば、やっぱりアロウに、なっちゃう?まあ気兼ねなく喋れる人ってのはアロウだし、アロウにペアしないか話に行ってみるか。
「……。そういや、面だけは良かったな、あいつ」
あそこもリヒトほどじゃないけど、人だかりができていた。まあ1年の中だと1番人気はフォーセさんだから、そっちの方が人だかりができてるけど。同じとまではいかないけど、それでも抜け出せない低度には人だかりができていた。
「はー。リヒトとかアロウは人気なのに、俺と言ったら。はぁ。誰も来やしないよ」
「……」
別にさ?人だかりができて欲しい、なんて強欲な事言わないよ?そりゃ女子に囲まれてみたいという夢があるにはあるものの、別に今それを求めてる訳じゃないのよ。今は、1人でも良いのよ。女子に、『一緒のペアになってくれませんか?』って言うのを求めてたのよ。
これでも俺、1万ちょっとのポイント持ってる、優秀な人材よ?チヤホヤされるほど1万が希少かって言ったら、そこまでかもしれないけど。百十数人中の16人。うん、かなり希少だった。
だからさ?こう、「うちと組めや」ってのは俺の想定してるのと違うのよ。
「ふっ」
「なんや、うちの顔見て笑って。まさかうちのポイントの低さを笑ったんか?むかー!せっかく1人で哀れなヴァンのところに来てやったちゅうのに」
「いや、その問題は俺よかフーコの方が切実じゃん。なんだよ77位って。ラッキーセブンかよよかったな」
「腹立つー!」
「まあ、フーコと組むぐらいなら、俺は一般科の人と組む」
「なんやと!」
「俺は新たな出会いが欲しいんだよ。フーコは良い」
「あんた腹立つ。もう二度とぼっちのところ見かけても話しかけてやらんからな」
「ほどほどに話しかけて、ぼくだってうさぎちゃんなみに寂しがり屋だから」
「うわキモ、うわキッショ」
「それは普通に傷つく言い方だぞおい」
キモ、はまあ、女子がよく使う言葉として、受け流す事ができる。でもキッショって、それガチの奴じゃん。普通に凹む。
「フーコもリヒトのところ行けば良いじゃん。ワンチャンあるかもよ?親しい、とまでは言えなくとも、ダンジョンを一緒に攻略した仲なんだし」
「えー。うちがリヒト君と一緒やったら、他の女子から何言われるかわからんわ。それやったらもうここでリタイアで良い」
「俺じゃあなんの噂も立たないと?」
「いやいや、立つよ。独りで哀れだったヴァンに寄り添ってあげた心優しきフーコちゃん、ってな?」
「おめえさっさとどっかいけ」
「へーい」
まあ、俺も誰かに話しかけに行っても良いんだけどなぁ。普通科の人の知り合いもいないし、特進の人は俺の怪我を見たら組むのを拒むだろうし。
あれ?俺もしかして、ペア組む貴重なチャンス逃した?
「まあ良いや。寝よ。ペアが組みたい人が居たら、起こしてくれるだろ」
ここだけの話、ヴァンは普通に格好いい部類に入ります。ただ学園でも1,2を争うイケメンがいるせいで、これと言って注目されません、はい。




