表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者教育論  作者: ゆきつき
2章熱血体育祭、文化祭
15/30

14.推薦辞退

 結局怪我が治る事なく、1週間経過した。

 夏休みは、終わった。

 補習は、まあ、行って無い。結局骨折だとかが酷くて、学園まで歩いて行く事が叶わなかった。ちなみにバス停にも、一人じゃ歩いて行けない惨めっぷりだった。


 そんなこんなで、学園、1週間ぶりだな。


 まあ登校からそうそう、呼び出しを喰らったんだけど。


「えっと、学長から呼び出しって、一体、え、なんでアーベルトさんもここに?」

「まあ、これから話すさ」


 朝一番に呼び出しを喰らったのは初だったってのに、なんで朝からアーベルトさんと学長に呼び出されなきゃいけないんだ?俺、そんなやっちゃいけない事したの?


「単刀直入に言う。おじさんたちのパーティーに入んない?」

「……え?」

「ちゃんと順序を追って説明する」


 学長よ、あんたは一体アーベルトさんより上の立場なのか下の立場なのか、はっきりさせてくれ。今のままじゃただの尻ぬぐいする、立場的には下の方のすることだぞ。少なくとも学長たる者がそういう事をするもんじゃないよ。


「君も知ってると思うが、冒険者になるには二通りの方法がある。今君がやっている通り、学園を卒業して冒険者になるか、同じ業界にいる冒険者から推薦されるかの二通りだ」

「……」


 黙って聞いている風だろ?今俺はびっくりしている。え、冒険者になるには、学園に通わないといけないんだろ?それ以外にあると思ってなかったよ。全然『君も知っている』なんて事ないよ。今初めて聞いたよ。


「それで、さっきの話に繋がるが、そこのアーベルトが君を冒険者に推薦したんだよ」

「え、じゃ、じゃあ」

「もう学園に通う必要は無くなった」


 え、マジ?これは、喜ぶべき、事だよね?だって伝説になるであろう凄い冒険者であるアーベルトさんに、俺の実力が認められたって事だろ?そりゃあ嬉しいに決まってる。

 けど、え?学園に通う必要はないって。え?


「まあ中層を攻略するにはまだまだだろうけど、既に上層を探索する分には十分な実力があるからね。今からおじさんたちと一緒に冒険して、経験を積めば、最年少で下層到達もあり得る」

「ま、マジですか」

「もちろんとも。それぐらいには、手助けなくミノタウロスに深手を与えるというのは大きい事なんだ。まあ中層の敵はただ強いってだけじゃあなくて狡猾さだったりも格段に上がるから、今のヴァン君には厳しいだろうけど。少なくとも上層は攻略できるさ」


 マジか。結構な太鼓判押されてるんじゃないの?

 あ、因みに新米冒険者は、最低でも5階までは余裕で攻略できる力が、よくて10階までは攻略できる力があるとされている。

 上層は34階まであるとされている。俺とフォーセさんが落ちたのが27階らしい。中層まで7階。結構近かったり、遠かったり。


「だが、こいつにも言ったが、確かに冒険者になるには一番速い道ではあるが、君はまだ学生なんだ。義務教育期間を過ぎてるから教育を受ける義務があるとは言わない。ただ今この時期にしかできない青春というものがある。それに学んでいて損になる事はない」

「あのな?将棋の天才だろうが世界から天才ともてはやされるスポーツマンとかは、いちいち高校に通うかって話よ。その道での輝ける才能があるなら、一般人に必要な事も必要ないんだよ。それどころかそんな無駄な教育を受けるよりも、その才を伸ばす方が重要だと思うんだよ、おじさんは」

「まあ、私はこの出来事を決める事はできない。これは君が決める事だ。このままアーベルトの推薦を受け、冒険者になるか。まだ学生として、この学園に通うか」


 ……。確かに俺はさっさと冒険者になって、腹一杯食えるぐらい稼いで、今までお世話になったアロウの父さんにお返しをしたいし、色々と夢はある。夢はあるけど。

 でもさ。こうして人の厚意に甘えて居てられるのって、学生のうちだろ?いつか返すつもりなら、しばらくは借りてても、いいだろうし。

 いやでも、さっさと冒険者になって、家を買って、アロウ一家にも良い感じの家を買ってあげて、生活を豊かにするような物も買ってあげたいし。

 それでも俺は、俺は。


「俺は、まだこの学園で学びたい、事は特にないですけど」

「失礼な学生だな、君」

「でも俺はもうしばらく学生をしてたい。ダンジョン探索した時の記憶は8割方無くなってるけど、それでもお世辞にもうまく攻略していったとは言えない。まあ実戦でも学べる事だろうけど、それでもダンジョンに挑むには、ちゃんと事前知識もちゃっとあって、万全な状態で挑むべきだと思うんです。じゃないとこういう風になりかねないし。だからまだ学園でちゃんと学んでおきたいんです」


 とかなんとかはすべて詭弁である。実際はただただ、フォーセさんともう少し一緒に居たい。それだけである。この時間は、金じゃあ買えないからね。だから学園に残りたい。


「ふー。どうやら、おじさんが考えていた以上に、ヴァン君は大人だったようだ。じゃ、学長。彼の気が代わったら、すぐに連絡ちょーだい。迎えに来るから」

「ま、本人の意見を聞いて納得してくれたのなら、それでいい」

「じゃ、じゃあ俺はこれで」


 もう二度と、こんな厳格な学長室になんて来たくない。



_____________





 俺はこんな状態だったから、心配してくれたアロウが速めに出発した結果、学園でも10番目ぐらいの登校したんじゃないの?ってぐらいには早い時間に登校した。俺もなんだかんだでこの怪我している状態に慣れたってのもあって、意外にも早く到着できた。

 で、さっきまで学長とアーベルトさんとの対談をしていた。まあ10分ちょいとぐらいだったかな?


「様子を見る為に病院、ねぇ」


 まあ言ってしまえば、怪我をしてから3週間。骨折はまだしも、切り傷的なあれはいい加減治ったりする期間は過ぎてる。だからまあ、経過を見るんだろう。


「足のギプスが取れなかった時点で、俺は無駄足だったんだよなぁ」


 まあ先生の言う事なんて話半分にしか聞いてなかったから、病院の先生が何を言ってたのか憶えてない。なんかまー、まだ骨折治ってないから安静にしろやぼけ、みたいな事を言われたような気がする。

 まーどうせそんなの守んないけど。だってあと3週間ぐらい、だっけ?そんぐらい経てば、皆大好き体育祭が開催される。あと文化祭も。

 そんなのはしゃぐなって言う方が無理だって。


「にしても、なんか周りの目線が痛い」


 病院の方に行くのに十数分。勿論戻ってくるのにも数十分。つまりもうじきホームルームが始まる時間であり、皆が登校してるような時間帯である。

 なんだけど、その登校している生徒の、俺を見る目が、とても痛いというか。ガチの敵意と殺意を籠めてる感じ。俺が一体何をした?

 そして怪我人に対する思いやりみたいな気持ちはないの?あと松葉杖を使っている事に対しての好奇の目を向けるとかもないの?


 まあそんなこんなで、教室。

 教室に入るや否や、教室がざわめいた。特に女子。反応がおかしい。こう、怪我人に対する、大丈夫なのかな、とかの視線の動かし方じゃない。明らかに見ちゃダメなものを目の前に見せつけられた時に顔を逸らす感じの、そんな感じ。

 男子はやっぱり、殺意と敵意が入り混じった感じの視線を向けてくる。


「なあリヒト」

「どした?」

「俺、何があったの?こんな事される覚えないよ?」

「ああ。まあヴァンにとっては全く面白くない事が起きたのは確かだ」

「え、なにがあったの?」


 こんな数十分の間に、こんな環境が変わる事ある?


「ほれ、学園記事。これ読んでみ」

「ふむふむ。むむむ?」


 え、これ、俺の記事だよね?それも良いニュースって訳でも悪いニュースって訳でもなく、出鱈目みたいな感じのニュース。

 見出し。『特ダネ!?1年に人気のあの人が、看病を理由に男とお泊り!?その真相は!?』

 そして見出しの横の方にある写真は、朝方に俺が出かけようとして、アロウがそれを止めに、いや肩を貸しに来ている場面。まあ見方によれば、家から2人が出て来てるようにも見える。


「まあこれもかなりパンチが強いけどな」

「え、それ以上があるの?」

「ほれ、この2枚」

「……。写真の中身は、とりあえず後で触れるとして。総評。俺にプライベートはないの?」

「ないんじゃねえの?」


 リヒトから渡された2枚の写真。

 片方は、どっから撮ったのか謎だけど、俺が布団で寝ているところ。まーこれの何が不味いかって、横にアロウも居ちゃう事だよね。この写真が、あの学園記事の熱愛報報道を裏付ける写真には、まーなるよな。

 あ、今更だけど。アロウはなんだかんだ言って、みたくれは良い。学園全体ではどうか知らんけど、とりあえず1年の男子には結構人気があったりする。え、俺?俺は勿論フォーセさんと言う心に決めた人がいる。


 で、もう1枚。これが大問題。風呂でアロウが俺の背中を拭いてくれている場面。これの何が悪いかって、俺が全裸なのよ。それもどっから撮ったのか、俺のちんこも見事に映っちゃってる。


「いやさ。別に写真を撮られるのは悪いとは言わないよ?これやってる事、普通のジャーナリストよりも過激だし、どう考えたって犯罪だけど、まー良いよ。でもさ。少なくとも俺のちんこが映っちゃってる写真が出回ってる、で良いの?」

「うん」

「それは許せないと思いますこれ」

「まあ、だろうな。ちなみにこれ、500G(ゴールド)で売ってた」

「俺のちんこは500Gの価値だと!?ふざけてんのか!?」


 いやまあ別に隠すようなものでもないけどさ。少なくともこれを公の場で見せるのは犯罪みたいな風潮があるじゃん。ってか実際犯罪じゃん。だから隠してるってのにさ。

 それに、こういうのを仕事にする人もいらっしゃるのよ?隠されているからこその価値ってのがあるのよ。

 それをまー、よくも500Gで売ってくれたな。500GじゃAVも買えねえよ。

 まあ百歩譲ってこの写真が500Gで出回るのは良いとしても、俺の手元に一切入って来てない。AVだって自分のあられもない姿をさらけ出して金儲けしてるのよ?なんで俺は無賃でこんな事になってるの?


「一体誰がこんな事するんだよ」

「ハンドルネームはランコちゃん。本名ハタケ。2年生。学園一の敏腕ジャーナリスト」

「これジャーナリストじゃなくて、度が過ぎたストーカーの行為じゃねえの?」

「まあ、そうだろうな」


 キーンコーンカーンコーン


「まあ良いや」

「良いのかよ」

「いやだって出回ったものを取り消す事なんてできないし。ネットの常識じゃん」

「ネットを使ってない奴が言って良いセリフじゃない」


 いやだって、もうこっちがドタバタ暴れてもどうにもならないし。なら起きた出来事をちゃんと受け止めるしかやる事ないもん。


「それにしても、今日から文化祭の準備になるんだろ?」

「だろうな」

「俺、体育祭の方が楽しみなんだけど」

「まあ、実際この学園の特別進級科は2クラスしかないし、なんならサポート科だったり普通科が活躍できる文化祭の方が力は入る事になる。実際体育祭を楽しみにしてるのなんて、ボク達の特進ぐらいだろ。だってボクたち冒険者見習いが無双するんだから」

「はぁ。文化祭は食い物屋を回るのは楽しみだけど、こっちが準備する側だと考えると。陰鬱な気分になる。なにかを作るのってものすごーく苦手だから」

「ボクは詳しく知らないんだけど、どのぐらい手先が不器用なの?」


 いやぁ。別に手先が不器用って訳ではない。


「手先が不器用ってより、俺が作るものがすべて失敗するって感じなんだよ」

「なんだその特殊能力」

「だから料理も焼く煮るぐらいしかできないんだよ。まあそれも焦げたり水浸しになったりするんだけど」


 いやぁ。ほんと、どういう訳か、作るものすべてが失敗するんだよ。


「まあ、作る系じゃないかもしれないだろ。そう気落ちするなよ」

「でも俺、体育祭も多分参加できないし。余計に気分だだ下がりだよまったく」

「あ」

「はい、席について。ホームルームを始める」


 はぁ。なんでこんな大怪我したんだか。あ、好きな人を救う為か。こりゃ名誉の負傷だな。じゃあいいや。

 1G=1円です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ