13.幼馴染パワー
「痛い、ちょ痛いから、もうちょっと優しく!」
「うるさいなぁ。男の娘なんでしょ、我慢なさい」
「そーゆー問題じゃねえの!ねえ!バシバシ叩くな!骨に響くんだよ!」
絶賛大怪我治療中のわたくしですが、背中はまあ傷は少ないんですよ。だって敵から逃げようとかしてた訳じゃないんで、背中側に傷ができる訳ではない。まあそのぶん前側の怪我がすんばらしい事になってるんだけど。
ってかその頃の記憶が無いから、ただの妄想話でしかないんだけど、ここまで。
でまあ、切り傷とかも多いけど、どっちかと言えば骨折の方が酷い訳ですよ、俺。
だからねぇ。ちょいと撫でられるだけでも結構痛かったりするんです。バシバシ叩くなんて言語道断な訳ですよ。
「ねえ、洗い物をやめてこっちに来た訳なんだからさ。せめてもうちょっと、真面目にやってもらえません?」
「そ、そんな事言っても、ヴァンの体をまじまじ見るなんて、そんな」
「俺、背中しか見せてないよ?照れるようなもの見せてないよ?」
「一体何を魅せるつもりなんだッ!?」
「別に何も魅せないし見せないからね?」
まああえて言うのであれば、既に風呂は沸いていて、あの風呂に蓋をする、くるくる巻けるあれを風呂に蓋してるんだけど。どういう訳か、湯気が凄い。鏡なんてちょっと水で流しても、すぐに曇る程度には湯気が凄い。
だからって訳でもないけど、なんか視界が悪い。……一体どんな温度で風呂に入ってんだ?火傷しないの?
「まーそれはさておき」
「そっちが始めた事だかんな?」
「だって、お尻が見えかけちゃって」
「俺の尻は背中にはねえよ?」
「気になるものは気になるし」
「もっかい言うよ?俺の尻は背中にはねえよ?」
背中を拭くだけだってのに、なんで尻を見ようとしてるんだ、このお人。素直に背中を拭いてくれれば良いのよ。俺じゃちゃんとできないから。
いやまあ別にできなくは、……、右腕だけじゃ、出来る事に限界があるか。やっぱりアロウに任せるしかないようだ。
「それに、鏡に映るそれが」
「別に映ってないだろうし、もし映ってても見なきゃいい話だろ」
「じゃあ逆に聞くけど!目の前に女子が全裸で居て、鏡に地区Bが映ってて、それを見るなって言われたら、ヴァンはどーすんのさー」
「そりゃ口に出さずに堪能する」
「うわ、キモ」
「そっちが振った話だし、現状それと同じような事をアロウはしている訳ですが、言い訳は?」
「……」
「はい、じゃあさっさと背中を拭いてください」
頭の良い人との口論と言うか、口答えとかはとても苦手だけど、アロウ相手はこう、ちょろくて助かる。俺が頭の良い人だと思える。
「ねえ、別に拭くのが雑になるのは良いんだけどさ」
「良いんだ」
「もうちょっと体を労わってくれない?俺これでも全身バキバキの骨折してるらしいから」
「知りませーん」
さっきので絶対に拗ねたな。まあ俺も大人げなく言い過ぎた、……ん?言い過ぎたかな?まあどうせされるがままなんで、もう黙っておく。
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その後前を拭く時にはアロウは退出してもらって、痛さに耐えながら頑張って体を拭いていた。ちなみにアロウが風呂場から出ていくのを渋っていたという情報を追加しておく。
「あの、俺リビングで寝たいんだけど」
「ダメ」
「いやさ。確かに現状、俺一人だと歩くのもやっとというか、まだできてないような状況だけどさ?流石に女子の部屋で寝るのは不味いと言いますか」
「良いじゃん、別に」
「俺だって男な訳でしてね?ねえちゃんと風呂入ったの?って質問と同じような感じで、お前ほにゃららと一緒に寝てるらしいぜー、とか言うガキっぽい噂が流れるのは嫌なのよ」
「いーじゃんいーじゃん、子供の頃はよく同じ布団で寝てたんだし」
「ねえ何年前の話してるの?10年近く前の話よ、それ。そんな話引き合いに出されても困るよ?それに今はお互い多感な時期であり思春期な訳じゃないですか。どっちかと言えば俺よかアロウの方がこういう噂流されたら困るだろ」
で、今は俺がアロウの部屋で寝るのを渋っている。いやだってどう考えても年頃の男女が同じ部屋で寝るとか、そういう意味として捉えられる訳ですよ。俺としてはそういう面倒な噂が流されるのは嫌な訳でしてね?
まあ二人の秘密にすりゃあ噂が流れる事はないだろうけど、それでもそもそも噂が流れる心配をしなくて済むように、元凶を取り除いておきたいというかね?
だいいち俺にはフォーセさんと言う心を決めた方がいらっしゃってだね?
「ほら、早く部屋に行くよ。もうそろそろ寝ないとお肌に悪いんだから」
「俺を連れていかな、痛い痛い痛い。左腕を引っ張るのはダメだって!わーった、行くから、その部屋で寝るから、せめて普通につれて行って!」
怪我して痛いという事を理解できるようになってきたのは良い事なのかもしれないけど、痛覚復活されたせいで、マジで発狂しそうになる。痛すぎ。マジヤバくね?って言いたくなるぐらいには痛い。死ぬんじゃないのって思うぐらいには痛い。まあ死ぬほど痛いって、どのぐらいの事を指すのかわからないけど。
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あー。洞窟とかダンジョンからだったら見れない星空も、普通に部屋に居たら、覗けるんだなぁ。いやぁ、普段夜とか洞窟の中で完結するから、こうして星空を見る事ってないから、新鮮だなぁ。
あえて言おう。月が綺麗だ。
「なんで俺だけ布団なの?それも絶対に長さの間違えた掛布団」
いやさ。同じ布団で寝るなんて期待してなかったよ?それどころか布団を用意するから、ってアロウの父さんも言ってたぐらいだし、別々の布団で寝るのはわかりきってたよ?
でもさ。この差はないんじゃない?
「あ、パパが子供の頃に使ってたのしかなかったから、謝っといてって」
「いやまあ別に掛け布団さえあれば寝れるけどさ。隣でふっかふかのベッドで快眠している横で、掛布団がちょいとサイズ合わないような布団で寝るって、おかしくね?」
「なに、同じベッドで寝たかったの?エッチ、変態」
「いやこの格差を知るぐらいなら、俺はリビングで寝たかったって言いたい訳」
あ、アロウの部屋の感想。
とても女の子の部屋って感じがする。まあ女の子の部屋に行った事ないから、漫画とかのイメージしかない訳だけど。
まあまず。とても綺麗。……、所々、クローゼットとかだったりから布とかがちらりしてたり、なんか今にもあふれ出そうな感じに詰まってるタンスは、見なかった事にして。とても清潔感のある部屋。
で、ベッドにはこう、いかにもイメージ通りの女の子のベッドって感じで、可愛らしい人形が置いてある。ビカチュウにクジラのくーちゃん、くまのくまもっちに、ぐ、グソクムシ?え、可愛い?謎なチョイスだ。
ま、まあ。とにかく、イメージ通りな感じの女の子の部屋って感じがするアロウの部屋でした。
「ねえ、ちょっと喋らない?」
「早く寝ないとお肌に悪いと言った人はどこの誰だったっけ?」
「ん-、ヴァン?」
「んな訳」
確かにニキビなんてできたくないから、多少は気にするよ?でもそんな寝る時間を気にするほどでもない。
「で、なに?俺、普段寝る時間の3時間とか前だから、全然眠くないんだよ。話ぐらいは聞ける」
既におやすみモードの部屋の明るさだけど。でも12時過ぎても起きてるような人間からすりゃ、9時過ぎに寝ようなんて不可能な話だ。
「ほんっとーに、無時でよかった」
「ふぇ?」
「ほら、ヴァン、言ったでしょ?五体満足で会えるように祈ってるって」
「まあ言ったな。冗談半分で」
「え、半分は本気だったの?」
「いやだって、毎年数人、腕を失うとまではいかなくとも、結構大きめの怪我をするのが恒例だった訳だから」
「そ、そうなんだ」
まあ4年に1度ぐらいのペースで、腕を失ったり、身体機能そのものを失ったり等々、自分の実力を驕っていた人が大怪我をしたとかなんとか。そして不吉な事に、今年がその4年に1度の大怪我をする年でもあった。あー、怖い怖い。
「そうじゃなくて。ヴァンがさ。目を覚まさなかったわけじゃない?」
「まあそうみたいだな。自覚なんて無いけど」
「もう目を覚まさないってお医者さんは言ってたからさ。怖かったんだよ」
「ほー。他人に想われるなんて、ありがたい事だ」
「結構真面目に話してるんだけど?」
「酒でも飲んだの?」
「ちーがーう」
こんな状況で真面目な話はよして欲しい。とてもドギマギしてしまう。
「とにかくさ。目を覚まさないと思ったら、怖いと思ったんだよ」
「ほー」
「聞く気ある?」
「いや、アロウが真面目は話なんてするんだなーと。それと俺は真面目は話は聞かない事にしてる」
「あっそ。じゃあもう一人で喋ってる」
拗ねたのかな?まあでも、マジでこの状況で真剣な話、それも俺に関係してきそうな話をされちゃ、うん、なんか色々と壊れそうでダメ。
「なんだかんだ言ってもさ。アタシたちって今までずっと一緒に過ごしてきたからさ」
「別に一緒じゃなかっただろ」
「なに、聞かないでくれる?」
「そーですか」
完全に拗ねてしまった。あちゃ~。こりゃ明日起きたら叩き起こされたりするのかな?こう、文字通りに叩いて起こされるのかな?怪我に障るよ~怖いよ~。
「突然いなくなるかもって思ったら、怖いと思ったんだよ。だってちょっと前まではアタシのくだらない事でも笑ってくれてたのに、突然どんなことしても一切反応を示してくれないんでしょ?そんな当たり前が終わるのが、とても怖かった。……」
「……、あの、独り言するなら、もう少し小声でやってもらえます?駄々洩れですよ?」
「良いの!」
あちゃー。こりゃ拗ねたってより、結構本気で怒らせてしまったかもしれない。こりゃ叩き起こすなんて生易しい事じゃすまないかもしれない。プロレスみたいに、飛び乗って起こされるかもしれない。
アロウの独り言については、あえて触れない方向でお願いします。
「だからさ。ヴァンが目を覚ましたって聞いた時、嬉しかったんだー。またいつもの日常が戻る、って思うと、自然と笑顔になったよ。それで、もしだけどさ?もし、アタシがヴァンと同じように意識が戻らなくなったら、心配してくれる?」
……答えるべきなのか否か。とても悩む。
「まあ、なんだ。心配してくれてありがと」
「聞きたかった言葉とちょっと違うかなぁ~?」
「うっせ、黙ってさっさと寝てろ」
「はーい」
翌朝、目を覚ましたら、何故だかアロウが隣に居た。いやなんでだよ!
言い忘れてましたが、この話はコメディでギャグ要素しかありません。ご了承ください。
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