11.退院させた
とても暇な1週間を過ごしました。
で、退院直前。
「ヴァン、聞いてると思うが、まだ運動は禁止だからな?」
「運動って、どのぐらいの運動なんだろな?」
「医者に聞けばよかっただろ」
「いや、そんなの聞いたら無茶できないじゃん」
「無茶しちゃいけないから、運動禁止と言われているんだ!」
いや、もうかれこれ2週間は運動してない訳だろ?まあ1週間は寝たきりだった訳だし、実質1週間分しか記憶ないし、2週間運動してないって気分ではないけど。
それでも。1週間も運動、というか歩きすらしてないなんて考えられないんだよ。まあ足も片方骨折にかなり重症な怪我を負っていたと言う事もあり、トイレすら行くなと言われる始末。おかげでマジで1週間歩いてない。
そんな怪我してんのに、なんで退院できるのか。正直俺が知りたい。知りたいんだけど、どうやら学生は長く入院するには、お金が必要になってくるようで。
あ。この病院、この学園所有の病院と言うか、所謂大学病院と言うか。まあ医療の学校じゃないんだけど、病院があるのよ。まあそれもこれも、冒険者を発出させる学校って事で、この学園の所有?いや連携?をとっている病院。
で、普通の治療だとかは、学費とかから払われてるから、かなりの恩恵を授かれる。その一つが、怪我した時に最高1週間の入院である。まあ普通なら怪我の治療で済むんだけど、一応入院もできるようになっていてですね。
けど1週間以上は、学割が適用されるにしろ、お金が必要になってきて。俺にそんな入院費を払えるだけの大金は無いから、さっさと退院することになった。
あ。因みに学生は1週間しか入院できないと言ったけど、俺は合計2週間入院している。流石に植物状態になってた状態の入院費を貰うのは悪いとのことで、おまけしてもらえた。それと流石に症状が酷すぎる、とも言ってた。
「まあまあ。どうせ俺は補習があるんだし、運動するなってのは無理がある」
「いや、こんな重症を負っているんだ。補習も無かった事にできるだろ」
「いや俺がやりたい」
「絶対にやるなよ?ただでさえ再起不能レベルの怪我だったりを負っているんだ。わかってるな?」
「はいはい、やりませんよーだ。どーせあと1週間しかないんだ。補習もやることなんかないだろ」
「そうだな」
はぁ。ただでさえ、ダンジョン探索で夏休みを1週間も潰されたってのに。入院で2週間も潰されたからな。折角の夏休み、残り1週間しかない。折角の長期休暇だってのに、1週間しかないんじゃ、長期休暇とは言えないじゃないか。
「やっほー。退院祝いに来てやったぞ。同じダンジョンを探索した仲だからな(キラッ)?」
「フーコさんや。あんた別にイケメンじゃないんだから、イケメン風な事言わなくても良いのよ?」
「嫌。うちも乙女やけど、イケメンな事言ってみたい」
「あっそ。まあ良いけど」
「私も来たよ」
「フォーセさんも来てくれたなんて。で、退院祝いって必要なの?」
「いや、素直に喜んでおけ。それでいいじゃないか」
ま、そっか。こうして好きな人が見舞いに来てくれるって言う、最高な事が起きてる訳だし。全然良いや。
「それと、これ。返すね」
「……、確かに俺のだけど、なんで持ってんの?」
「色々あったの」
「ほー。色々。とても気になる」
気になるけど、多分これを掘り下げたらとても恥ずかしい気持ちになりそうだから、掘り下げるのはやめておく。
「鏡を返してない」
「別に今すぐ返して欲しい訳じゃないし、いいよ。ちゃんと返してくれれば」
「ありがたや、ありがたや。じゃ、俺はさっさと帰る。金を取られかねない」
「ちゃんと安静にしてろよ」
病室を出ようとしたところ。
「うわっっと」
「……、一人で立てないのか」
「い、いや、そういう訳、っと、立てないね」
いや、辛うじて立つ事はできる。でも歩く時に片足立ちになるってのが無理。片足で全体重を支えるにはちょいと怪我が重たい。
「松葉杖は」
「い、いや、手も重症だから、無理だって先生が。右は比較的優しい怪我だけど、片方で耐えれるような怪我でもないらしいし」
「車椅子」
「手が重症なんで、自分で操れないから、これも却下された」
「よくそれで退院できたな」
「いや、金が無いから、こっちから入院を拒んだと言うか」
だって、実際に金がないのだもの。流石に自分で色々起こした怪我を、アレスの父さんに負担してもらうのは、ちょいと悪い気がするから、やっぱり退院することになる。
「いや、親は?」
「前にも言わなかったっけ?両親ともども死んでる」
「えっ」
「なんか、すまん」
「なんで謝んの?まあとにかく、俺は病院のお世話になれるほどの金がねえの。だから退院すんの」
「よく病院側がそれで了承したなー。うちが医者なら、こんな病人を退院なんてさせれないって」
「まあ、絶対安静の1週間は過ぎたし、大丈夫なんじゃないの?」
「そーかなー?」
というか、入院ってのは、病院側が金を儲ける為にある仕組みだと思ってるもん。安静にするのなんて、拠点でだってできるじゃん。
「とにかく、松葉杖を借りてくる」
「片方じゃ支えられないって言わなかった?」
「それでもないよりマシだろ。それと、ボクの肩を貸すから。家がどこにあるのか教えろよ。つれて行ってあげるから」
「おお、感謝感激雨霰」
「私もついてく。こんな状態のヴァン君、ちょっと心配だから」
おお、まさかのフォーセさんもついて来てくれるらしい!嬉しい。嬉しい!
「……うちはいかんぞ。男の家に行くなんて、乙女のすることやないかんな。恋人の家でもないといかんから」
「随分と守りが硬いようで。まあこうして見舞いに来てくれたけでも嬉しいから、全然良い。ってか俺が感謝しないといけないんだよな。見舞いに来てくれてありがと」
「な、なんやなんにゃ、んんっ、随分と素直だねぇ~。調子狂うなぁ」
「え、俺、そんな素直じゃないクソ野郎だと思われてたの?」
「え、違うの?」
「ちげぇよ!」
俺は隠し事とかもしない、とても素直で真面目な性格だぞ。
「ほら、さっさと行くぞ」
「わかった」
_______
俺の今の拠点近く。
「なあ、住宅地はとうに過ぎたが、まだつかないのか?この先に本当に家なんてあるのか?」
「家?そんな贅沢品なんてないって」
「いや、え?」
「あ、そこ。その洞窟の一部が俺の居住地」
「ど、洞窟で、生活」
「ヴァン君、一体どういう生活してるの?」
どういうって。そりゃあ普通に寝て起きて学園に行くって言う生活を送っている。これと言っておかしな生活はしてない。
「いやまあ、普通の生活?」
「洞窟暮らしが普通だと言い切れるヴァンの感性が凄いわ」
「そんな変な事か?ホームレスなんかなんか汚い路地とかでも寝てるじゃん。あんなのより断然いい暮らししてるぞ」
「ヴァンも洞窟で寝泊まりしていて家が無いのなら、そのホームレスと同等なんだよ」
「え!?」
「驚く事か、それ」
「女の子だったら、うちに泊めてあげれるのに」
いやぁ。そう言って貰えるのはとても嬉しいけどね。なんというか、他人のお世話になるのは、気持ち的に嫌だから、多分断るんだろうけど。
「……、ここがお前が寝泊まりしている場所と?」
「そ。いつどんな輩が来ても良いように、重要な物とか大切な物とかは持ち歩いてるからねぇ。ここに置いてあるものは部屋感の演出」
とは言っても、時計だったり時計だったりカレンダーだったりと、大した物はない。ガキの頃の写真とかは、鞄に入ってる。
「だからお前はいつも学園に持ってくる荷物が多かった訳だ」
「あ、これ。先にお返ししておきます。あ、ここに鏡を置いていたのはどうでも良いものって訳じゃなくて、ダンジョンなんかに持っていって壊れられたら困るからって言う訳で。決して適当に扱ってた訳じゃなくてですね」
「ん。ありがと」
「いやいや、借りたのは俺だから、感謝するのは俺のほうであって」
「お前、なんで鏡なんて借りたの?」
……。そういや、あの時、顔にかなりのインクが付いてたよな。なんで目の前に居たこやつは一切その事について話してくれなかったんだ?
「いや、ペイントボールの投げ合いの時にインクが付いてたのを確認するため、というか。インクの落ち具合を確認するためというか。そういう諸々で貸してくれたわけで。なんでリヒトはあの時注意してくれなかったの?」
「え。わざとそうしてるのかと。笑うの堪えるの、大変だったんだぞ」
「いやそんなはずねえじゃん!知ってたならちゃんと言ってくれよ!」
わざとなはずないじゃん。誰が全員からからかわれるような事するって言うんだよ。
「とにかく。ここまでついて来てくれてどうもありがとうございました。俺はまあ、うん。しばらくここで安静にしてるんで、安心してください」
「どした、急に畏まって」
「いやね。学園から結構遠い場所にあるこんな洞窟について来てもらうなんて、悪いなぁと思って。それにもてなすような事もできないし」
「別に良いって。そういうつもりで来てる訳じゃないんだし」
「そう。心配だったからついて来た訳だから。気にしないで」
俺は気にするんだけどなぁ。まあ気にしないでと言われたら、気にしすぎるのもどうかなぁ、という事で、ここで考えるのを止めた。
「あ、帰って来てたんだ」
「なんでアロウがここに居んだよ」
「い、いやぁ。ちょっとね。ところで、どうして学園の人気者が二人も?」
「いや、色々と縁があって、こうして心配してもらえるようになった」
ってかなんでアロウがここに居るんだ?別に来るなとは言ってないけど、言ってもアロウのうちからもそんなに近くはないはずだけど。
「えーっと、流石に二人も増えたら、パパ、困るかな?」
「なんの話してんの?」
「それに、うちに学園の人気者が、人気者二人も誘うなんて、流石にそんな事」
「どうかしたの、アロウちゃん」
「あー、あんなに可愛いフォーセさんから、名前呼ばれちゃったよ」
あー。アロウがダメな方に走ってる。
「じゃ、お二人さん。悪いけど、アロウに用事があるんで、帰ってくれない?めっちゃ失礼な事言ってるけど」
「…わかった。じゃ、アロウちゃん。夏休み明けにまた会おうね」
「悪手だったんじゃないか、ヴァン」
「いやまあ、アロウがああなったら、迷惑かけそうだから」
「ま、ボクは誰を選ぶであれ、ヴァンを応援はするから」
「ありがたいねぇ。じゃ、また今度な」
お二人さん、帰って行った。
「ああ、せっかく学園の人気者を家に誘うチャンスが」
「いや自分で誘うなんてそんな、みたいな事言ってたじゃん。それにあのままじゃ本題入らなかっただろ」
「そ、そうだけど」
アロウの悪い癖、というのか何というか。自分の世界に入ったら、抜け出すのが大変になる。なんだかんだで長い付き合いだからわかるんだ。わかってしまうんだ。
「で、なんでこんな場所まで来たの?」
「そうそう。パパが退院祝いで晩御飯を振舞いたいって言ってたの。だからうちに来て」
「ほー。あの二人も別にいてよかったんじゃねえの?あ、いや、アロウの父さんに負担を掛けるわけにはいかないか」
「二人ぐらいなら、多分いいとは思うけど」
「じゃ、呼んでくるわ」
「え、ちょ、それは、心の準備と言いますか」
「いーじゃねーか。どーせ俺とアロウと親父さんとじゃ、会話もそんなに弾まないんだし」
「それはヴァンがぶつぶつ」
「なんだって?とにかく呼んでくるぞ」
……。
怪我したってのは、不便なんだな。痛さは未だに麻痺ってるおかげで、痛い痛い痛い!とかにはそんなにならないけど。流石に痛いってのはわかる程度にはなってきてるよ?でも激痛が走るほど痛覚は戻ってない。
「なあアロウ。ちょいと肩を貸してくれない?」
「それだったらアタシが直接言いに行ってくる!もう、デリカシーに欠けてるんだから」
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