第四話:趣味への理解
新作のプロット作成が行き詰まっている間に執筆しました。
こちらの作品は『私』が小説を書き始めるまでのストーリーなのでそこまで長く続きません。それこそ、あと数話で終わるでしょう。なので、新作発表より先にコチラを終わらせるかもしれません。
それでは、どうぞ。
待ちに待った自分の時間。一人で何をしても許される自由な時間。現在時刻、八時半過ぎ。九時から入浴タイムのため、一先ずそれまでは何をするか考えるとしよう。
私は洋服タンスからタオルと下着、寝間着のジャージを取り出して入浴準備を完了させてから万年床となっている布団の上に寝転がった。あぁ、スマートフォンの充電もしとかなくてはならない。調べものをするには必要不可欠だ。充電しながら使用するのは推奨しない。バッテリー寿命がモリモリと減っていくからだ。我が家のパソコンはそれが原因で重症入院患者よろしく点滴のように充電器が常に刺さっている。スマートフォンで入院状態はあまりにスマートではない。少なくともあと二年はしっかり働いてもらわなければならない相棒である。大事に使うとしよう。
スマートフォンの充電も良し。それでは今から三十分は何をするかしっかり考えるとしよう。
趣味。一言でいっても人それぞれであり数は星の数程は無いにしても、膨大な数である。人によっては『それは趣味なのか?』と言いたくなるような物であっても趣味として成立し得る。そもそも、趣味とはなんなのかを考え始めたらゲシュタルト崩壊を起こしそうなものである。最近、私が購入した本に記載されていた趣味の定義はこうであった。
『手段と目的が逆転しているもの』
……なるほど。そういう考え方もあるのか。私はその本を読んだ時、作者に感心したものである。『手段と目的が逆転しているもの』をとりあえずは私が思い浮かぶ物から挙げてみよう。
先ずはコレクター趣味等は当てはまる物も多いだろう。具体例を挙げるなら『切手集め』。そもそも切手とは郵便物を郵送する為に入手し使用する物である。つまり切手を入手する行為事態は『物品を郵送するための手段』であり、目的は『目的地に物品を郵送する事』である。
あとは『魚釣り』だろうか。これも目的は『魚の入手』であり、『魚を釣り上げる』行為事態は手段である。たとえ魚が釣れなくても、釣り人達は悔しい表情をしつつ満足して帰って行くだろう。
ランニング、ウォーキング、筋力トレーニング等の運動関係も手段と目的の逆転に該当するかもしれない。元々は健康のため体を鍛えるために行う行為だろうに、その行為事態が目的と化している。なるほど、こうして改めて考えると趣味の定義として『手段と目的が逆転しているもの』というのはかなりしっくり来るかもしれない。
だが、そう難しく考えるものだろうか? 趣味をしている時、手段がどうのだの、目的はどうだだの考える事はない。趣味をしているその間、没頭している人はその人の世界、その人達の世界に閉じ籠って楽しんでいる。それならば、『その人が楽しく感じる行為』ならば他人から見てどんなにつまらない物でも、全ての行為が趣味となり得るのではないだろうか。勿論、趣味の内容によってはその趣味を馬鹿にする人も居るだろう。
「その趣味無駄じゃね?」
「そんな生産性の無い事やって楽しい?」
「その時間を勉強に費やせば資格が二つ取れたね」
こんな事を言う人間のなんと嘆かわしい事か。自分の想定している趣味と異なる事を趣味にしている人に対して人間は必ずこう言う。そんな人間に対して、私は声を大にして言おう。
『黙って自分の趣味にでも没頭していろ。趣味が無いなら社畜らしく会社にコキ使われてろ。人を見下さないとプライドを保てない哺乳類が!』
まぁ、実際に言われた時にここまで言う事は流石にないだろう。せいぜい、
『人の趣味に口を出すのが趣味の悲しい人間に何を言われても聞く耳持ちませんのでさっさと何処か別の場所に行って貰えますか?』
くらいしか私は言わないだろう。いや、私なら本当に言う。私は自分が大切に思っている人以外の人間にはなんと思われても何も感じない。それこそ、『アイツはホモだ』とか『アイツはロリコンだ』等と有りもしない事を言われて引かれても何も感じない。私自信に好感を抱いて一緒に居てくれる人が居ればどうという事はない。何より、一人は慣れている。友達擬きを作る予定はないし、そんな事をするなら一人の方がよっぽど楽しい。だからこそ、人間との関係を壊す言葉を私はいとも容易く発言できる。勿論、誰かれ構わず発言してる訳ではないので誤解はしないで貰いたい。こんな発言をするのは悪意を抱いて寄ってくる人間限定だ。『人間』であって『人』とは思って居ない存在に対してのみである。
おっと、こんな事を考えていたらもう入浴タイムである。私は長風呂なのだ。ゆっくり体の疲れを蕩けさせてくるとしよう。
私はタオルと着替えを手に持って意気揚々と階段を降りて行った。