第2話の9 「お留守のようです」
更にしばらく山道を登っていくと、ようやくのこと開けっぱなしの門にたどり着きました。
門番らしい人の姿は見られませんでした。
「すみませ~ん! どなたかおられますか~?」
良く通る甲高い声でミノアは呼びかけましたが、何の反応もありませんでした。
門に隣接する小さな二階建ての建物が、どうやら門番の詰所のようでしたが、覗いてみても人の気配はありません。
ドアに鍵もかかっていました。
「お留守のようです。勝手に門の先に入っても大丈夫でしょうか…。というか、私もこれから働くのですから、無断侵入にはならないと思います。」
そう自己肯定をして、ミノアはそのまま門の中に入りました。
それまでは砂利道でしたが、ここからは石畳で舗装され、登りの道は更に続いていきました。
下から少しだけ見えた城壁のようなものは、崖側に造られていました。
崩落を抑えるための土留めだったのです。
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坂道はやや急になり、これまで以上に行ったり来たりしました。
「これは植え込みだったのでしょうけど、風化してすっかり崩れていますね」
坂道の途中、草木で覆われた中に石で組まれた棚のようなものの痕跡を見つけました。
もはや遺跡のようで、長いこと手入れがされていないのがよくわかりました。
「サトイモさんがちょこちょこ生えています。代替わりして、すっかり野生化していますけど。元々は何か作物でも育てていたのでしょうか?」
ミノアは立ち止まって、ちょっとその辺りを調べてみました。
「この辺りは日当たりが良いので、ちゃんと直して、土を入れ替えれば小さな畑を作れるかも知れません」
農家出身のミノアは、既に頭の中でどんな作物が作れるか、考えを巡らせていました。
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そしてようやく建物のある山の中腹まで到着したミノアは、ここでも開かれたままの大きな門の真ん中に立って、その中にたたずむ『イシノクツ砦』の姿を目に映しました。
門の脇にもまた、町で見かけたような雪だるまのように重ねられた石があり、同じように顔や衣服などが描かれていました。
「ほげ~。これは立派な砦ですね。『オチチチ村』で一番大きな建物よりも、はるかに大きいです」
更に振り返ると広がる森林の様子や、これまでたどってきた道のり、耕作地帯、集落、更には『イシキリの町』の姿や、馬車に揺られてやってきたずっと先の方まで見渡すことができました。
思ったよりも高いところに砦はあったのです。
また下からではあまりわからなかったのですが、周辺の山々もここからだとよく見渡すことが出来ました。
「景色も良いし、風がとても気持ちいいです」
ミノアは両手を大きく広げて、広い袖口から脇の下、それから胸元へと、ひんやりとした風を送り込みました。
火照った身体を冷やしたミノアは、再び砦と向き合いました。
まるで山奥の秘境にある厳かな神殿のように、そこに存在していました。
ミノアを載せてくれた御者の魔族の話では、元々加工場や石切りの職人たちが寝泊まりする場所だったとのこと。
その跡地を利用して作られた砦でした。
(つづく)




