2話の8 「きっとあれですね」
ミノアは町の方に去っていく荷車に手を振って見送りました。
「今度はキャベツさんをいただいちゃいました。トウモロコシさんもあるので、砦に着いたら食べる方法を考えましょう」
それらを無理やりリュックに詰め込むと、再び砦に向かって、てくてく歩き出しました。
黒い仔犬も相変わらず、ミノアの後ろについて歩いてきました。
それから小一時間、川の上流の方へ道なりに進み続けました。
誰かと出会うこともなかったが、轍の様子から見ると、頻繁に往来があるようでした。
周囲は小さな森林あったり、ポコポコとした小さな山がところどころあったり、また相変わらず畑や風車、少しばかりの集落も見られたが、人の気配は感じられませんでした。
この辺りの者たちも祭に出かけているのでしょう。
夏場なので大きなセミの鳴き声があっちこっちから聞こえてきたり、ブンブンと飛び回る蜜蜂の姿や、蝶の姿なども見られました。
「何だかお尻に出来るおできみたいな山が多いですね」
ミノアはそんな感想を漏らしました。
やがて分かれ道にやってきました。
一本は川から離れそのまま森の中を真っすぐに続く街道。
もう一本は森を大きく迂回して、山の方へ向かう横道でした。
先ほど町を出る前に聞いた話では、森を迂回する横道が砦の方に向かう山道につながっているとのことだったので、ミノアはそちらに向かいました。
黒い仔犬も相変わらず、ミノアの後ろをついて行きました。
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しばらく進み、山に近づくにつれ、その一部が人工的に大きくえぐれている様子が目に入りました。
何段か、段々畑のように奥に引っ込み、その中に石造りの建物があるのが見えました。
「あっ。きっとあれですね。ちょっとだけ石壁っぽいものが見えます。でもまだしばらく山道を登らなければなりませんね。あなた、疲れていませんか? 少し休みますか?」
ミノアは足元の黒い仔犬に声をかけました。
「ワン!」
しかし一声吠えると、元気をアピールするかのように、黒い仔犬はミノアの先を進んでいきました。
「大丈夫そうですね。私も負けていられません」
重たい荷物を背負いながら、ミノアはゆっくりとした足取りで更に登っていきました。
相変わらず一緒に登っている黒い仔犬は、軽やかに道の先へと走り、時折止まっては、ミノアが来るのを待っていました。
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砦に向かう山道は思ったよりも緩やかでした。
それはかつて、石材を運び出すために整備されたものでしたが、その分距離は長くなるため、くねくねと行ったり来たりしながら、少しずつ道を上っていきました。
辺りも少しずつでしたが、心地よいひんやりとした空気に変わっていきました。
「森の中はどうなっているのでしょうかね。美味しいキノコとか、見つかりそうです」
上っていく途中、見下ろした森の姿に、ミノアはそんなことを思いました。
その山道も上るにつれ、下からでは見えなかった樹木が少しずつ目に入り出しました。
「そこそこの太さに成長しています。なので、ここが閉山してから、結構な時間が経っているのでしょう」
そんなことをミノアは感じていました。
また倒木が何本も横たわっていたり、腐った幹や腐った枯葉も目につきました。
「これは中々良い腐葉土になりそうです。敷地の隅を借りて、小さな菜園でも出来たら使いたいですね」
農家の娘らしく、そんな独り言を言いました。
(つづく)




