第2話の7 「悪戯に私の尻尾を引っ張っちゃいけません!」
「痛たたたたたっ!」
ハアハアと息を切らせながら、尻尾の付け根を抑えてミノアは草むらにしゃがみこみました。
やり切ったミノアの全身からは、途端に滝のような汗が吹き出しました。
「誰ですか尻尾を引っ張ったのはっ! この二日で三回目ですよっ! 私の尻尾もいい加減千切れちゃいますっ!!」
見れば少し離れた砂利道の上に、ミミックのハコミミをくわえて、仰向けにひっくり返っている黒い仔犬の姿がありました。
タマタマも丸出しでした。
黒い仔犬は直ぐに起き上がると、元気よく尻尾を振りながらミノアのところに戻ってきました。
どうやら褒めて欲しいようです。
まだうずくようにズキズキする尻尾を抑えながら、ミノアは膝を立てて身体を起こしました。
「悪戯に私の尻尾を引っ張っちゃいけません! でもお陰で荷車を出すことが出来ましたので、今回だけは許します。以後、気を付けるようにっ!」
そう言いながらミノアは、力をかけてまだ痺れの残る手のひらで、黒い仔犬の頭を撫でてやりました。
溝から脱出したアリクイ獣人のおじさんは、轍のある砂利道に荷車を止め、それからミノアに駆け寄りました。
「大丈夫かね!?」
「はい。滅茶苦茶痛かったですけど、大丈夫です」
「それは良かったが、何にせよ、脱出できた。どうもありがとう。お陰で助かったよ。何かお礼をしたいのだが、今は採れたてのキャベツくらいしかない。良かったら持っていってくれたまえ」
そう言ってアリクイ獣人のおじさんは、大きなキャベツを三玉、ミノアに渡しました。
「美味しそうなキャベツさんです! 私、これから『イシノクツ砦』に行って働くことになっているんですが、そこで調理して食べたいと思います!」
「砦に行くのかね? 私はムグロと言うんだが、時々、採れ過ぎた農作物を持っていくことがあるんだよ。春先にはジャガイモをたくさん届けたんだが、秋になったらサツマイモを届けよう。その時、また会えると良いな」
「はい。私はミノアと言います。サツマイモさんは大好きなので、楽しみにしています! 食べればますます『オナランチャー』の威力がアップすると思いますっ!」
ミノアはお胸を大きく張って、大きな鼻息を『ふんす』と吹き出しました。
アリクイ獣人のおじさんは『何だそれ?』と思ったが、最近の若い娘の言うことはわからないので、取り敢えずスルーしました。
(つづく)




