第2話の6 「ふんぎゃっ!?」
道端の少し離れたところに荷物を置いたミノアは、動きやすいように胸元のボタンを幾つか外しました。
それから溝に落ちた車輪のところまで来ると、荷台の裏側に両手をかけました。
それを見守るかのように、黒い仔犬も少し離れたところにやってきました。
相変わらず舌を出して、尻尾を振っています。
「私が力いっぱい持ち上げますので、ロバさんと一緒に引っ張ってください」
「わかった。お願いする」
アリクイ獣人のおじさんは前に回ると、ロバと接続されている丈夫なロープを握りました。
「行きますよ~! せ~のっ!」
「そ~れっ!!」
アリクイ獣人のおじさんとロバは、それに合わせて荷車を引っ張りました。
「おっりゃ~っ!!」
ミノアは足腰に強い力をかけ、身体全体で力いっぱい荷台を持ち上げていきました。
歯を食いしばり、赤べこのように顔も真っ赤に染まりました。
しかし荷車は思ったよりも重たく感じられました。
ミノアの怪力でどうにか車輪は浮いたものの、深い溝から脱出させられるほどとはいきません。
その時、ミノアの尻尾に食いついていた小箱のミミック、ハコミミから、両手と両足が出てきました。
プラプラと揺られてバランスがうまく取れないようでしたが、黒い仔犬に対して手招きして何か合図を送っていました。
それを理解したのか、黒い仔犬はミノアのお尻に近寄ってきました。
ハコミミは手足を使って、自分に噛みつくようにサインを送ると、黒い仔犬はちゃんと理解したのか、口を大きく開いてハコミミにカプリと噛みつきました。
力をかけているミノアは気づいた様子もなく、玉のような汗を浮かべて、更に両腕と足腰に強い力を込めて持ち上げようとしました。
「ふんがぁ~!!」
大きめの胸が更に膨らむほど力をかけると、少しずつ荷車が持ち上がっていきました。
「モウ少し…。いっけぇ~!!」
ミノアの掛け声に反応して、ハコミミを加えた黒い仔犬は、ミノアの尻尾を引っ張るために勢いよく駆け出しました。
びりっ!
「ふんぎゃっ!?」
ぶぉっふんっ!!
この土地に来てから三発目の『オナランチャー』は、重たい荷車を溝から浮かせるのに、十分すぎるほどの威力を発揮しました。
「それっ!」
そのタイミングを逃さず、アリクイ獣人のおじさんは、ロバと一緒に荷車を引っ張ると、ようやく深い溝から脱出することに成功しました。
(つづく)




