第2話の2 「どれも素敵な小箱ですね」
行った先では古い家財道具が幾つか売られていました。
だいぶ使い込まれた跡があったが、傷んではいないようでした。
その中に幾つか、大小さまざまな木箱が売られていました。
「おや、牛のお嬢ちゃん。何か買ってくれるのかな?」
眼鏡をかけた店主の魔族が尋ねました。
この店主の頭のテッペンにも小さな角が一本、タケノコのように生えていました。
「はい。きっとこの子、自分が引っ越すための小箱が欲しいんだと思います。一応ミミックみたいなので」
ミノアは手足の生えたままの『がま口のミミック』を見せました。
店主はもの珍しそうに顔を近づけて、そのがま口をまじまじと見ました。
それに反応してか、『がま口のミミック』はガッツポーズを見せました。
「こうした生き物のことはよくわからんが、それだったら、宝石箱として使われていた小箱が良いんじゃないかな? ど~れ。後ろの荷物から幾つか持ってこよう」
一旦席を外してテントの後ろに積まれた木箱の方に行くと、その中から幾つか小さなものを持ち出してきました。
その一つ一つをミノアの前に並べてくれました。
「どれも素敵な小箱ですね」
「私も別の業者から買っただけなんだが、結構なお貴族様が使っていたものだとか言われたな。ただし、中身は空っぽだ。外装されていた宝石なんかも取られている」
確かにそうしたものは何もついていないが、施された彫刻は見事なものでした。
「手を取ってみても?」
店主が頷いたので、ミノアは一つ一つ品定めするように、手に取って箱を開きました。
何も入っていないが、どれも造りは良さそうでした。
「でも、どれが良いのでしょうかねえ…」
そう呟いたとき、その中の一つに『がま口のミミック』はぴょんと飛び乗りました。
そしてその場で足踏みを始めたかと思えば、タップダンスのような動きを見せました。
謳うかのように、がま口の口元をパカパカと開いたり、閉じたりしました。
「それが良いんですか?」
返事の代わりに、『がま口のミミック』は一つ大きくはね、着地とともにポーズを決めました。
それから素早い動きで蓋を開けると、そのまま小箱の中に滑り込んでしまいました。
「あらら、入っちゃいましたね…」
「中々面白いな」
店主の魔族も興味津々で様子を伺いました。
小箱が何度かカタコトと揺れたかと思うと、蓋が少しだけ開き、そこからポイッとミノアのがま口だけが放り出されました。
入っている小銭がチャリンと音を立てました。
「がま口が出てきました」
ミノアはがま口を拾い上げ、首から提げました。
続いて小箱から先ほどまでと同じように、両手と両足がニョキニョキと生えました。
ちょっとだけ太く、長くなった感じがしました。
「何だかヤドカリさんみたいですね」
小箱の中に移動した『がま口のミミック』改め『小箱のミミック』は、軽やかな動きでミノアの足元を二回、三回とグルグル回ってから、突然垂れていた尻尾にパクッと食いつきました。
「痛っ!」
ちょっと痛みが走って、びっくりしましたが、幸いにして、『オナランチャー』の発射に至りませんでした。
「あなた、そこにくっついていくんですか? 何だかよくわかりませんけれど…」
今まではがま口だったので、首からぶら下がっていましたが、小箱形態になるとそうもいきません。
「自分で手足を出して動き回るなんて、随分と変わったミミックだね。こんなミミックは私も初めて見たよ。むしろ噂にしか聞いたことのない魔法生物かも知れんな」
店主の魔族も感心していました。
「どうやらこの子は、この小箱が気に入ったようですので、これをいただきます。お代は幾らでしょうか?」
「そうかい? まあ、お貴族様が使っていたと言っても、我々から見ればただの古い木箱だ。銀貨一枚で良いよ」
ミノアは言われた通りの代金を支払い、『小箱のミミック』を尻尾にぶら下げたまま、店主に手を振られながらその場を後にしました。
(つづく)




