第1話の23 「せめてものお礼です」
そして食べながら誘拐された経緯を確認したあとは、ミノアの故郷のことなど、雑談めいた話をしました。
砦での仕事については、この日のコカゲは何も触れませんでした。
代わりにこの町の様子や、ミノアのふるさとの話など、何気ないことを話していました。
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やがてご飯も食べ終わり、食後に出された温かい麦のお茶を飲みながらのこと。
「このたびはミノアさんを危険な目に遭わせてしまい、申し訳ありませんでした」
コカゲは深々とミノアに頭を下げました。
「えっ!? ええっ!? 何で謝るんですかっ!?」
「これは私を含めた警備兵たちの怠慢です。場合によってはミノアさんや他の子どもたち、動物たちがこのまま連れ去られるところでした。誘拐を企てる強盗団の話は聞いていましたが、お祭りということもあって、みんなどこか浮かれていたのでしょう。反省すべき点は他にも多々あるかと思います」
そう言ってコカゲはもう一度、深々とミノアに頭を下げました。
「えっと、良くわかりませんけど、モウマンタイです! むしろいざという時この『がま口のミミック』が頼りになることがわかりましたし、私の『オナランチャー』の威力も思った以上にあることがわかりました」
「『がま口のミミック』とは初耳ですね。ミミックと言えば、普通宝箱のようなものをイメージしますが。そのがま口の大きさだと、まだ随分と子どものようですね。お金を使う時、不便じゃないですか?」
「そうですね。私は噛みつかれたりしませんけど、そのうち窮屈になってしまうんじゃないかと。私、ミミックの生態は良く知らなくて。やっぱりヤドカリさんみたいに、移り変わっていくものなのでしょうか?」
「私もミミックの生態については、あまり知らないのですが、成長はするはずです。なのでいずれ住みやすい箱に移して上げた方が良いと思います。砦には小さな宝石箱から宝箱までありますから、好きに使っていただいて構いませんよ」
「それは助かります」
先のことを考えると、ミミックらしく箱に入ってもらった方が良いなと、ミノアは思いました。
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「それと明日のことですが、日の入り前までに砦に来ていただければ構いません。明日までお祭りは続くので、それを楽しんでからでも良いかと。私はなるべく先に戻るようにしますが、万が一遅れるようでしたら、留守番の者が対処してくれるでしょう」
「わかりました。では、そうさせていただきますね。食べ歩きの途中でこうなっちゃったんで、明日はもう少し食べてみたいと思っていました」
コカゲは『やっぱりまだ食べるんだ』と思いましたが、口に出しませんでした。
その代わり…。
「それでしたら、このお祭り限定になりますけど、食事のフリーパスをお渡ししておきます。これを見せれば、お店や屋台の料理が食べられます。私は食べる時間がなさそうなので、有効的に使っていただければと」
そう言ってコカゲは自分の首から提げていたパスをミノアに渡しました。
「え? そんな大事なパスをいただくなんて、かえって申し訳ないです! 今もごちそうしていただきましたし、こうして綺麗な宿屋さんも手配していただきました」
ミノアは両手のひらを向けてお断りをしました。
「そう言うわけにもいきません。それに、ミノアさんの『おなら』のお陰もあって、結果的に誘拐団の一味を捕まえることが出来ました。せめてものお礼です」
そう言ってコカゲはパスをミノアに押し付けました。
ミノアは一瞬ためらったが…。
「わかりました。それではありがたくいただきます。いただいた以上は、四つの胃袋をフル稼働させて食べ歩きますっ!」
ミノアは大きくお胸を張って、ふんすとばかりに、荒い鼻息を吹き出しました。
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食事の後、ミノアはコカゲの手配してくれた宿屋に泊まることになりました。
コカゲの方はまだやることが残っているとのことで、仕事に戻るとのことでした。
「それではゆっくりと休んで、疲れをとってください」
そう言い残して、コカゲはまたどこかへ行ってしまいました。
(つづく)




