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なぞ×まぞライフ  作者: 篩獅師(ふるいしし)
【第1話 ミノアと石の祝祭】

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第1話の22 「モウとっくに牛さんですよ~」

 それからしばらくして、文字通りお祭り騒ぎとなった大捕り物は終わりを迎え、誘拐犯の魔族たちは全員とらえられました。

 実際のところ、全部で十人もの逮捕者となりました。

 参戦したハーピィのケイでしたが、さすがはプロのハンターともあり、三人の誘拐犯を確保しました。

 それらを町を警備する兵士たちに引き渡し、ハンターとしての自分の素性を明かした上で、後日、ハンターギルド経由で、相応の謝礼金をいただくこととなりました。

 思わぬ臨時収入に、ケイはホクホクした表情を浮かべました。


「ほんじゃ、あとはよろしくね」


 そう言い残して、ヒヨのところに戻っていきました。


 ★


 言いつけ通り、待ち続けていたヒヨは、日陰の涼しさに心地よくなってか、うつらうつらと船を漕いでいました。


「ヒヨちゃ~ん」


 名前を呼ばれて、ヒヨはハッと目を覚ましました。


「お待たせお待たせ~。一人にさせて悪かったわね」


「あっ、お姉ちゃん。お帰り」


 ケイは妹の頭を軽く撫でましたが、ヒヨは少し寝ぼけているようでした。

 珍しく手を払いのけようとしませんでした。

 ケイはヒヨの隣に座ると、ヒヨが抱えていた紙袋から、ポップコーンを一つかみ取って、少しずつ口に入れました。


「動き回って汗かいたから、塩気が美味しい~♪」


 そんなことを楽しそうに言ったケイでしたが、ヒヨの反応は違いました。


「ちょっと汗臭い…」


 少し離れるように、ケイから遠ざかりました。 


「お姉ちゃん、三人も捕まえたわ。後でギルドを通じて謝礼金が入るはず。そうしたら何か食べに行きましょう」


 そう言ってケイは、ヒヨの方に近づきました。


「うん。ありがと」


 返事をしつつ、ヒヨはやっぱり少しだけ遠ざかりました。

 それを見たケイはニンマリと笑ってから…。


「それっ!!」


 不意打ちにヒヨをぎゅっと抱きしめました。


「ヒヨちゃんで四人目の捕獲よ!」


「ぎゃあっ!? べたべたするから抱き着かないでっ!!」


 ヒヨは姉の顔を押しやるようにして、必死に抵抗しましたが、ケイはびくともしませんでした。


 ★


 あの後ミノアはもはやこの騒ぎで食べ歩くこともできず、結局トロールの小さな兄妹とともに、ザクロの経営する『らくせき食堂』へ戻りました。


「今度こそ食べに来てくれたんだね」


 ザクロはそれ以上何も尋ねず、ミノアを迎えてくれました。


「えへへへ~。おばちゃんの他の料理、食べてみたくなったんで」


 食べ歩きが中途半端になった分、ミノアはザクロのお勧め料理を幾つか堪能しました。

 その後、眠くなったので、ザクロに許可を取ってからゴロンと長椅子に横になりました。


「食べて直ぐに寝ると、牛さんになるよ?」


 コハクがそんなことを言っていましたが…。


「モウとっくに牛さんですよ~」


 ミノアはそう言って、直ぐに眠ってしまいました。

 元気に振舞っていても、やっぱりとてもくたびれていたのです。


 ★


 日の入りの少し前にミノアは目を覚ましました。

 食堂はいつの間にかお客が増えていましたが、ザクロはそのままミノアを寝かせてくれたようでした。

 誰がかけたのか、大きな毛布が身体にかかっていました。

 トロールの小さな兄妹も、他の従業員の魔族と一緒に今はお店を手伝って、料理を運んだり、お皿を下げたりと、忙しく動き回っていました。

 外から聞こえる喧騒からも、祭の賑わいを取り戻していることがわかりました。

 取り敢えずミノアは裏の井戸を借りて顔を洗い、頭をすっきりさせました。

 

 ★


 ミノアが戻ってきたタイミングで、約束通りコカゲが現れました。

 相変わらずあまり感情のなさそうな顔をしていたが、今は少し疲れた様子でした。


「お待たせしてすみません。食事をしながらで構いませんので、先ほどの件、お話を伺いたく。ミノアさんも遠慮なく注文してください。私が来るまでの間に飲食した分も含めて、ごちそうしますよ。砦のお金ですけど」


「そんな、恐縮です」


 と言いつつも、ミノアはコカゲが密かにドン引きするくらい、がっつりと料理を注文しました。

 この町に到着してからというもの、ミノアは食べてばかりでした。


「とっても美味しいです~♪」


 落っこちそうなほっぺを押さえながら、ミノアは極上の笑顔を見せました。

 どんなことがあっても、しっかり食べられるタフな精神の持ち主でした。


「それだけ食べられれば大丈夫そうですね」


 コカゲも少しホッとした様子でした。


(つづく)

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