第1話の21 「はあ、『おとり』ですか…?」
「コカゲの姉ちゃん。誘拐犯のことをみんなに知らせたのは、俺たちだよ」
「おっきな声で知らせたんだ」
「そうでしたか。二人とも、ありがとうございます。協力してくれたお礼に、後で何かお菓子でも届けるように手配しましょう。焼き菓子好きのバンパイアがいるので、彼女に見繕ってもらいます」
「「やった~!」」
兄妹は嬉しそうにハイタッチをしました。
「他の警備兵たちもやってきたので、いったん私も任務に戻ります。ミノアさんにもお話を伺いたいのですが、同行していただくと多分、だいぶお時間をいただくことになるかと思います。なので、そこは私がうまく理由付けしておきます。例えば『砦の関係者がおとりになって、おびき出した』としておきましょう」
「はあ、『おとり』ですか…?」
ミノアは珍しく、よくわからないような感じの反応を見せました。
「ですが一応、後で個別にお話を伺うことにします。そうですね…。日の入りの後で、この子たちのお店で待ち合わせましょうか。それに今日はもう砦に行くのを止めて、この町で泊ってください。宿もこちらで手配します。お会いしたときに場所をお伝えします。二人とも、ミノアさんのことを頼みましたよ」
そう言ってコカゲは、二人の肩に軽く手を載せました。
「わかった~!」
「わかった~!」
「えっと、私もわかりました。それではお待ちしています」
ミノアがぺこりと頭を下げたときにはもう、コカゲは軽やかに走り出して、他の兵士たちのところに向かっていました。
辺りを見れば、いつの間にか更に他の警備兵の魔族たちがやってきて、事故の検分を始めていました。
気絶して動けなくなっている四つ足の魔獣も、目覚めてからパニックで暴れないようにと、魔法の呪縛をかけていました。
またミノアが助けた他の誘拐された子どもの魔族たちや動物たちも、彼らに任せておけば大丈夫そうでした。
「そうだ。牛のお姉ちゃんに金平糖の瓶を持ってきたんだった。はい。尻尾を引っ張ったお詫びにどうぞ」
そう言ってコハクが手渡しました。
「そんなお詫びなんて。でもありがたくいただきます」
色とりどりの金平糖が入った小瓶をミノアは受け取りました。
トロールの兄妹は、顔を見合わせて笑顔を浮かべました。
(つづく)




