第1話の17 「むっむ~っ!!」
ゆっくりとしたスピードで、ガタゴト揺られながら荷台は引っ張られていきました。
幌の外では祭で浮かれる人々の声や、賑やかな音楽が聞こえていたが、まさかその中をこうして誘拐されたミノアや他の魔族の子どもたち、家畜たちが運ばれているなどと、誰も想像できませんでした。
さるぐつわをされた子どもたちはとても不安そうな顔を見せていましたが、取り敢えずミノアは事の成り行きを見守りました。
他に出来ることがなかったからです。
わかったことは、自分たちを誘拐した魔族の数は、今のところ大雑把に五人前後。
もっといるかも知れませんが、全員が男性で、魔法を使えるものはいない感じでした。
同じく誘拐された子どもたちはミノアの他に三人で、動物も何頭か狭い檻の中に閉じ込められていました。
どれもぐったりとしていましたが、薬か何かで動きを鈍らされているようでした。
その中には、先ほどコボルトのおじいさんが探していた仔牛もいました。
ミノアがそれとわかったのは、おじいさんと同じ匂いがついていたからでした。
とは言っても、どうしたものかと、ミノアも困っていました。
★
大ピンチに陥ったミノア。
しかしその時、荷台の外からピョンと、何か小さなものが飛び乗ってきました。
「む~っ!」
小さな声でミノアが反応を見せました。
そこに現れたのは、手足の生えたミノアのがま口でした。
何やら格好いい登場のポーズを取って、颯爽と現れました。
幸いにして見張りの魔族たちは気づいていません。
ミノアは目くばせをした後で、ニョロニョロと軽く尻尾を振りました。
その意図を理解したのか、手足の生えたミノアのがま口は、サムズアップをしました。
そして抜き足差し足忍び足と、ミノアのお尻の方に近づきました。
ミノアも尺取り虫のようにうつぶせになると、尻尾を横に垂らし、手足の生えたがま口の方に寄せました。
手足の生えたミノアのがま口は、口を開いてミノアの尻尾の先端にしっかりと食いつきました。
「っ!?」
食いつかれたとき、ミノアはちょっとだけ、ズキッとした強い痛みを感じたが、声を上げられなかったのが幸いして、誰も気づきませんでした。
★
それから手足の生えたがま口はミノアの背中に飛び乗り、尻尾の長さの分、頭の方に戻れるだけ戻りました。
「むっむ~っ!!」
ミノアもさるぐつわをしたまま、声を上げました。
それを合図にして、手足の生えたがま口は、ミノアのつま先の方に向かって全力で走り出しました。
そしてミノアの大きなお尻を踏み台に力いっぱいジャンプすると、その勢いのまま尻尾を思い切り引っ張りました。
(つづく)




