第1話の16 「がま口が立ったっ!?」
「おい、牛の姉ちゃん、どっちに行ったかわかるか?」
「う~んと、誰かに連れられて、この狭い道に入っていったところまで見えたんだけど…」
トロールの兄妹は、ちょうどミノアが入っていく後ろ姿を目撃していましたが、人通りが多く、直ぐには追いつけませんでした。
だいぶ遅れて狭い路地を抜けたものの、人気のない通りの左右どちらに向かったかはわかりませんでした。
その時。
「あっ! あそこにお財布が落ちてるよっ! あのがま口、多分お姉ちゃんのっ!」
コハクが指さした方向に、ミノアが首から提げていたがま口が落ちていました。
肩車から妹を下ろし、二人で近寄ってがま口を拾い上げると、ずっしりと小銭がたくさん入った重みを感じました。
「お姉ちゃんに何かあったのかもっ!?」
「ここに落ちていたってことは、そっちに行ったんだ…。よし、行ってみよう」
「うんっ!」
がま口を持って走り出そうとしたその時、がま口がブルブルと震えだしました。
「わっ!? 何だっ!?」
テツがビックリして手を離すと、落ちる間にがま口は小さな足をピョコンと出して、スタッと軽やかに地面に着地しました。
「がま口が立ったっ!?」
コハクもビックリしつつ、しゃがみこんで顔を近づけると、今度は小さな両手がニョキニョキとキノコのように生えてきました。
「今度は腕が生えたぞっ!」
「何これ!? 面白いっ!」
両手両足を生やしたミノアのがま口は、アスリートのように軽く準備運動を行った後、ミノアが連れ去られた方向に向かって、とっとこ、とっとこと、思いのほか早いスピードで駆け出していきました。
「何かわからないけど、俺たちも追いかけようっ!」
「うんっ!」
テツはコハクの手を引っ張って、走り去ったがま口を追いかけていきました。
(つづく)




