第1話の15 「むむむ~っ!!」
「む~っ!? む~っ!!」
屈強な男たちにミノアは囚われてしまいました。
今は荷物を奪われ、さるぐつわをされ、後ろ手に縛られ、足も縛られて、殆ど光の入らない荷台の中に転がっていました。
他にも誘拐されたのか、子どもの魔族たちや、家畜なども同様に縛られていました。
「ミノタウロスのお嬢ちゃん。悪くはせんから安心しなって。ちゃんと可愛がってくれるニンゲンさんのところに売ってやるからな」
「おい、余計なことを言うんじゃない! 外に聞こえちまうだろっ!」
小男風の魔族は、屈強な感じの魔族の一人に叱責され、びくついたように肩を震わせました。
「おいっ、このままゆっくりと、怪しまれないように町を出るぞ」
そう言うと、ゆっくりと荷台が動き始めました。
荷台を引っ張る動力は馬ではなく、何か力のありそうな四つ足の魔獣がのっしのっしと引っ張っていました。
見た目、サイとカバを合わせたような大きな魔獣で、鎧のような皮膚をしていました。
「む~っ! むむむ~っ!!」
ミノアは抵抗を試みるも、さるぐつわで声もあげられず、身体を縛っている丈夫な縄も、どうにもなりませんでした。
「おい、静かにするんだ。大人しくしてりゃ、何もせん。それとそのがま口、もう不要だろうから、あっしが貰っておくとするか」
そう言って小男風の魔族は、ミノアの首から下がっている大きながま口を奪い取りました。
同じ荷台に乗っていた他の屈強な魔族たちは、少し軽蔑したような目を向けたが、何も言いませんでした。
「どれどれ~」
ニタニタと気持ちの悪い笑いを浮かべながらがま口の蓋を開き、指を突っ込んだその時。
ガブッ!
「いでええええっ!? 何か、噛みつきやがったっ!!」
指先に噛みついたがま口の歯が、鋭く食い込んできました。
「おいっ!! 静かにしろっ!! 怪しまれるだろうがっ!!」
野太い声で叱責したものの、屈強な魔族の一人ががま口を捕まえ、その怪力で強引にこじ開けました。
そしてそのままポイッと幌の隙間から外に捨ててしまいました。
「余計なことするからだっ! さっさと止血しとけっ!」
小男風の魔族の噛まれた指先からは、タラタラと血が滴り落ちました。
傷は意外と深そうでした。
「くっそ~っ!」
手を抑えながらミノアを睨みつけましたが、大切な売り物なので、暴力は振るいませんでした。
代わりに適当な布を巻きつけて、止血の応急処置をしました。
ミノアや他に誘拐された魔族の子どもたち、家畜たちを載せた荷台は、ゆっくりと坂道を下っていきました。
(つづく)




