第1話の14 「それならばご協力いたします!」
「ごちそうさまでした。この『らあ~めん』という食べ物は初めて食べましたけど、中々の美味しさです。出汁のきいたつゆに、ちぢれ麺もコシがありました。全体的にも広がりと深みのある味が感じられます。何より、てんこ盛りの『ちゃあ~しゅ~』なるお肉がとても美味しかったです。大好きなお米にも合う美味しさです。そう言えばしばらくお米を食べていなかったので、何かどんぶり物も食べたいですね…」
即席に作られた外のテーブル席に座って、熱々の『らあ~めん』をガッツリ食べ終えたミノアは、はしたなくも襟元から手拭いを突っ込んで、胸元の汗を拭きました。
更に襟首を広げて、パタパタと風を送り込みました。
「お胸がひんやりして気持ちがいいです~♪」
その時、不意に目の前の席に誰かが座りました。
「いや~、お嬢さん。とっても良い食べっぷりだね~。思わず拍手しちまうよ。ひょっとしてなんだが、お嬢さんはミノタウロスさんなのかな?」
見れば種族は良くわからなかったが、小男風の一本角の生えた魔族でした。
「はい。そうです。ふるさとにはない美味しい食べ物が多くて、まだまだ食べ歩くつもりです」
「お~、やっぱりそうかい。それだったら、うちの屋台に食べに来てくれないかな? どんぶり物が食べたいって聞こえたんだけど?」
「はいっ! 色々食べ歩いたので、今度はお米を食べたくなりました!」
「だったらちょうどよかった。うちの屋台はどんぶりものを色々用意したんだが、がっつり過ぎるのか、中々お客さんがねえ。それでこうして、小間使いのあっしが客を集めまわっているってわけよ」
「わかりましたっ! それならばご協力いたします! お腹もまだ余裕がありますので!」
「そうこなくちゃっ!!」
お互いの意見が一致したところで、ミノアのお腹の牛さんが、『も~』と鳴き声を上げました。
★
ミノアが案内されたのは、人気のない路地裏でした。
祭の賑やかさからはだいぶ様子が違っていました。
「何だか寂しい感じですね…」
キョロキョロと辺りの建物を見回して、ミノアはそんなことを言いました。
「この町に来るのが遅れたから、表通りの良い場所はすっかり取られてしまってね。仕方なく裏通りで屋台を開いたんだが、中々お客が来なくてね」
「まあ、確かにちょっとここじゃ難しそうですね…」
そんなことを言いながらキョロキョロと大きな目を動かして、辺りを伺いました。
「あそこの角を曲がったところでやっている」
そう言って、小男風の魔族は指さしました。
「あそこの角ですか?」
スンスンとミノアは鼻を鳴らしましたが、食べ物らしい香りは漂ってきません。
ミノアは疑問を抱きつつ、小男風の魔族の後に続きました。
「さあ、こっちだ」
そして小男風の魔族が角を曲がると、そこには何のお店も、屋台の姿もありません。
あったのは幌で覆われた荷台でした。
この町に来るまでミノアが載せてもらったものよりも、もっと大きくて丈夫そうな造りをしていました。
「あの~、食べ物らしい匂いが何もしませんけど…。逆に動物さんとか、他の息遣いとかを感じます」
もう一度ミノアはスンスンと鼻を鳴らしました。
小男風の魔族はくるりと振り返ると、にんまりとしたいやらしい笑いを浮かべました。
その途端、荷台の陰から屈強そうな魔族たちが、五人ほど現れました。
そして逃げられないように素早くミノアを取り囲むと、あっという間に腕を掴まれ、身動きが取れなくされてしまいました。
「え!? ええっ!?」
「悪いね、ミノタウロスのお嬢ちゃん。あっしらは誘拐団なんだ」
そう言って小男風の魔族は、もっとにんまりと、もっといやらしい笑いを浮かべました。
(つづく)




