第1話の10 「これは『なぞ×まぞライフ』…でしょうか?」
「あったあった。こういうの!」
ようやくリュックの底から見つけ出したのは、少し傷んだ感じの冊子でした。
それをミノアに差し出しました。
ミノアは大うなぎの蒲焼きを食べながら、タレが落ちないように気を付けて、差し出された冊子の表紙を覗き込みました。
そこには誰だか知らない魔族の写真が使われていました。
「この文字は『なぞ×まぞライフ』…でしょうか? ニンゲンさんの文字は、学校で少し習った程度なので、あまり知らないのですけど」
「うん。よくわかったね。これは『謎の多い魔族さんたちの普段の生活を紹介したもの』なんだ。中身はこんな感じだね」
そう言ってニーハは適当なページをパッと開きました。
ミノアが覗き込むと、そこには見たことのない色々な魔族の姿が掲載されていました。
頼まれてポーズを取ったような一枚もあれば、自然な感じの一枚もありました。
どうやってとったのか、狂暴な魔獣を狩っている様子などもありました。
「ほえ~。たくさんの魔族さんが載っていますね。知らない魔族さんばっかりです。でも、絵画にしては、随分と綺麗な感じがします。むしろ、そのまんまこの中に取り込まれたみたいに見えます」
そう感想を述べてから、ミノアは最後の一口を食べました。
さっきから黙って二人のことを見守っていたザクロだったが、それを見て次の蒲焼きを焼き始めました。
直ぐに香ばしい匂いがたちこめ、次を煽るようにミノアの鼻をついてきました。
無意識のうちに、ミノアは唾液を飲み込みました。
「残念だけど、ここには私が撮ったやつは無いんだ。でもわかりやすく言えば、この『写真機』っていう魔道具を使って、目に見えるものをここに取り込むの。それを紙の上に焼き付けたものって感じかな? そのためには幾つか工程があるんだけど、説明が難しいからはぶくね。取り敢えず、この魔道具を使えば、こんな感じのものが最終的には出来上がるってこと」
ニーハは自分の持っている魔道具・写真機をポンと叩きました。
「へ~、こんなの初めて見ました。摩訶不思議ちゃんです」
ミノアは魔道具に顔を近づけ、大きく目を見開きました。
「私にも見せて見せて~!」
「俺も見たい~!」
「はいよ」
興味を覚えて近寄ってきたトロールの兄妹に、ニーハは手渡しました。
受け取ったトロールの兄妹は、それを持って、店先の空いている席に座って読み始めました。
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「ところであなた、ひょっとしなくともミノタウロスさん? 尻尾も角もあるよね? ってか、もうそのわかりやすい牛さんの服装からして、ほぼ確定だなって思うんだけど」
ニーハはミノアの牛柄の服を指さしました。
「そうです。これは私の一張羅です。ついさっきも、本物の仔牛さんと間違えられて、連れて行かれそうになりました。まあ、いつものことですけど!」
ミノアは自慢げに大きく張った胸を揺らしながら、『ふんすっ!』と鼻息を吹き出しました。
「何それ? おもしろ~い! ミノタウロスさんって、噂には聞いていたけれど、私、本物は初めてお目にかかったよ。うちら魔族写真家の間でも未確認魔族さん、通称『U魔族』として、常にリストアップされているくらいなんだ。まだ誰も撮影に成功したことがないはずだから、こいつは思わぬチャンスだよっ!」
ニーハはやけに嬉しそうに、少し足踏みしながら言いました。
「『U魔族?』 他所の土地でミノタウロス族がどれくらい暮らしているか知らないのですけど、そんなに少ないものでしょうか? 私が生まれ育った『オチチチ村』は、元々流れ着いた少数のご先祖が作ったと言われています。今は他の魔族さんもチラホラ住んでいますけど、殆どが今でもミノタウロス族です。それなりに人口は多いと思いますよ」
「へ~、『オチチチ村』って言うんだ~。是非行ってみたいな~」
「是非来てください! どの家庭にも『肥溜めぼっとん』があって、野生動物の『う〇こ』を踏んづけやすいところですけど、とても長閑な農村ですっ! 是非その『写真』にたっぷりと収めてください!」
ミノアは鼻息を『ふんすっ!!!』と噴き出して、ふるさとをしっかりアピールしました。
「あっ、やっぱりまだ謎めいていた方がいいかな~? 心の準備が出来てからね~」
ニーハは笑顔を崩すことなく、丁重にお断りをしました。
「ところで、あなたにちょっとお願いがあるんだけど。これから時間ある?」
「お願いですか? 私に出来ることなら構いませんけれど…」
不思議そうな顔をするミノアに、ニーハは笑顔でお願い事をしました。
(つづく)




