前世もテンプレ 赤信号は止まれ
切る場所が…もはやセンスの問題だと思う
「ゴメス、健康診断頑張ったねー!偉い偉い!」
今日は年に一度のペットドックの日。
動物病院から出ると同時に、私はキャリーの中でおとなしく丸まっている愛猫を誉めまくった。
「おとなしくて良い子ちゃんだったって!」
自分の事のように嬉しくってニコニコしてしまう。
暴れず騒がずおとなしいゴメスは、毎年助手のオネーさん達に大好評のなのだ。
「良い子ちゃんのゴメちゃんにはおやつサービスしちゃうからね!」
「うなぁあん」
おやつ、と言うワードに反応したのか、ゴメスがダミ声で返事をする。安定のブス声が堪らない。
その時、掴んでいたキャリーの取っ手がミチッと小さく音をたてた。
『また太らせましたね?』
先生の冷静な声が頭の中にリフレインする。
懲りずにめげずにおやつを与えてしまう私は、毎年先生に大不評だ。
…スミマセン。デブなのは私のせいです。可愛さの余り、おやつをついついつい与えて過ぎてしまいました。長生きはして欲しい!でも好物も食べさせてあげたい!ああ、このジレンマがもどかしい!長生きするおやつできないかなぁ?いっそ100年生きて猫又になって欲しい。二又に分かれたしっぽを想像してニヤリとする。
移動手段はバスを利用しているので、最寄りの停留所へと向かう。病院前の細い路を左手に曲がり、暫くして今度は右手に曲がれば、大通りへと抜ける。目の前の横断歩道を渡ればすぐに停留所だ。
丁度横断歩道の手前で信号が赤に変わった。足を止めると、反対側からも女の子が横断歩道に向かって歩いて来るのが見える。
その子はチラリと信号を見て、それから躊躇いもなく横断歩道を渡り始めたのだ。
もう一度言うよ?信号は赤である。
ええええええええ?赤信号ですよ!?
ばばあのワタシは引いた。
今、確実に信号見たよね!?見てから渡るって凄くないですか?そんなに急いでいたのだろーか?なら五分早く家を出ればいいじゃないか、リア充っぽい女子!
確かに今は車の通りは少ない。でも信号機がついているって事は、必要だからだ。過去に事故が何度かあったのではなかろうか?実際にここからは、三本目の通りの奥がよく見えない。死角があるんじゃないのか?
…って、言えないんだけどね~。アイムジャパニーズソーリー
心の中でぼやくだけだ。
嫌な気分のまま信号を待つ。ここの信号は長いから好きじゃない。私は渡ってくるリア充っぽい女子をチラリと見た。
あの子だって大人だ。分かってやってるんだろう。
そんなことより帰ったらゴメスにおやつをあげなくてはいけないのだ。そんでもって明日からダイエット始めてみようかと思う。私だって来年こそは先生に暖かい眼差しを向けられたい。
うん、早くお家へ帰ろう!早く青に変われ!
キキキキキキキキィィッ!
突然の嫌な音にハッとする。
「きゃあああぁぁぁっ!!!!!」
甲高い女子の悲鳴に身を竦めてしまう。
彼女に向かって、土砂を積んだ大型トラックが突っ込んでいくのが見えた。
恐怖に動けない彼女を避けようと、運転手のお兄さんが必死の形相でハンドルをきる。
そして、回避を成功させたトラックの進行方向が変わった。
私とゴメスへ。
「「え?」」
彼女と私の声が重なる。そりゃあそうだろう。お互いあり得ないと思ったんだから。
トラックが目の前に迫って来た。
(ナンデ?!嘘でしょっ?!)
「んなおぉぉぉぉうおん!!」
ゴメスの怯えた鳴き声にハッとする。私の固まっていた身体の呪縛が解けた。でも間に合わない!
「ゴメちゃ…!」
キャリーを抱きしめたと同時に視界が真っ黒になって、意識が途絶えた。
消えてく中で、微かに声が聞こえる
『なん、で…… だ…よ !』
それは
それは ちいさな おとこのこ の
こえ




