メイド採用面接
俺とエレナは現在、冒険者ギルドの小部屋にいる。
メイド募集依頼に応募してきた冒険者との面接のためだ。
ドアがノックされる。
「どうぞ」
まず部屋に入ってきたのは………筋肉モリモリの大男だった。
あれ?
メイド募集のはずなんだけど。
「まずは自己紹介からお願いします」
唖然とする俺を差し置いて、エレナが仕切る。
「冒険者ランクDのゴメス・ゴンザレスです」
これが……メイド!?
俺の知ってるメイドさんとは異質。
どっちかというと冥土だ。
「家事全般と馬の世話ができる人を探しています。ゴメスさんは両方ともできますか?」
「はい。家事は実家で母の手伝いで何度か。馬の世話は得意です」
「なるほど。その他に得意な事はありますか?」
「力仕事は得意です。どんな重いものでも運べる自信があります」
それは見た目でなんとなくわかります。
「キラ様、他に聞いておきたいことはありますか?」
「えっと、見た所強そうな体つきですけど、普通に冒険者やってたほうが性に合ってるんじゃないですか?」
「いえ、私はこんなナリですが、生き物を殺すのが苦手でして、どうも冒険者には向いていないようです」
「な、なるほど……」
「では、面接の方は以上となります。合否は後日、連絡致します」
ゴメスさんは一礼をして、部屋から出ていった。
「なかなか良さそうな人でしたね」
え?マジか!?
「そ、そうですか?」
「はい、馬の世話も得意らしいですし、性格も問題ないかと」
そうかもしれんが……俺の憧れたメイドさんはあれじゃないんだよエレナ。
「でも、家事は母の手伝いで何度かって言ってましたよね?あまり経験ないんじゃ…」
もしかして……。
「エレナさん。エレナさんの好みの男性ってどんな人ですか?」
「なんですか急に。でもそうですね、強くて逞しい人が好みです」
やや頬が赤い。
こいつ、まさか自分の好みの男に誘導しようとしてるんじゃなかろうな?
いや、それは俺も同じだ。
悪くは言うまい。
人とはそういう生き物だ。
誰だってそうする。
俺だってそうする。
「ま、まあ気を取り直して次、いきましょうか」
「そ、そうですね。次の方、どうぞ!」
次に人はゴメスさんとは対照的。
薄着でスラリと細い女性だった。
露出が無駄に多い服装だな。
「では自己紹介からお願いします」
「ベラ・ピーチです。よろしくお願い致します」
そう言ってベラさんは俺に流し目を送ってきた。
「ベラさんは冒険者ではないようですが、ご職業は何をなさっていたのですか?」
エレナが質問する。
「歓楽区にある男性をもてなす店で働いておりました」
ほう。
キャバクラとかだろうか。
「娼婦ですか?」
エレナがズバッと聞いた。
この人、遠慮がまるでない。
「そう呼ぶ人もいますわね」
どうやら当たりだったらしい。
「募集しているのは家事ができて馬の世話ができる人ですが、経験はありますか?」
「家事は得意です。馬の世話はやったことはありませんが、下の世話と騎乗は得意です」
そう言ってペロリと唇を舐めた。
おいおい、騎乗ってまさか………。
「わかりました。以上で面接は終わりです。結果は後日連絡いたします」
ベラさんが部屋から出るや否や、エレナが憤慨した。
「なんですかあれは!あんなのは論外です!キラ様もそう思うでしょう!?」
「お、おう……そ、そうかもね」
正直エレナがいなかったらどうしたかわからない。
でもまあ、馬の世話ができないんじゃあ駄目だよな。
それ以外は非常に魅力的だったが……。
おっといかん、エレナが睨んでいる。
「馬の世話ができないから却下だね」
「そうじゃなくても却下です!」
真面目委員長型のエレナとでは水と油だったようだ。
「次の方、どうぞ!」
次に現れたのは猫族の女の子だった。
やっとまともなのがきたか。
「では自己紹介をどうぞ」
「は、はい!ナーナです。猫族です。ぼ、冒険者ランクはFです」
俺より下だ。
ちょっぴり優越感。
それにしても随分と緊張しているようだ。
「ナーナさんは家事と馬の世話はできますか?」
「はい!家事は全部できます!馬の世話も得意です!」
「他に得意なことはありますか?」
「え、えっと、畑仕事もできます!」
いや、それはあんまり必要ないな。
ん?なんだか見覚えがあるような……
「あ、もしかして街中でクリスとぶつかった人!」
透明人間捜索中に遭遇した人だ!
「え? あ、あの時の王子様と一緒にいた方ですね!」
いや、王子様て。
「キラ様、知り合いですか?」
「知り合いというか、会ったことがるだけだね」
「そうですか。ちなみに志望動機はなんですか?」
「あ、はい。私は二、三年出稼ぎするつもりで王都に来たんですけど、猫族であるせいか、なかなか雇ってもらえなくて……。それで仕方がなく冒険者登録したんですけど、ちょうどメイド募集依頼を見つけて『これだ!』と思って…」
「なるほど、わかりました。以上で面接は終わりです。結果は後日連絡致します」
「はい、ありがとうございました!」
ナーナさんが部屋から出ていった。
「ま、論外ですね」
とエレナ。
「え!?なんで?別に普通だったじゃん!」
「だって猫族ですよ?」
エレナが当たり前のように言う。
「猫族だと何か問題があるんですか?」
当然聞き返す。
「メイドは普通、人族でしょう」
エレナは「何言ってんの?」って顔をしている。
「まあ王宮警備隊のエレナさんからしたらそうかもしれませんが、ゴメスさんよりはよっぽどメイドらしいと思いますけど」
「な!?ゴメスさんは素敵な方だったじゃないですか!!」
結構な大声で言ったぞ、おい。
「まあまあ落ち着いて。確かにゴメスさんも穏やかな性格に逞しい肉体、さぞかしエレナ好みの男性なのでしょうが、あれがメイドだと、もしもお客様が訪問されたら怯えてしまいますよ。お前んちのメイド、怖くね?と」
「べ、別に私の好みで選んでいるわけでは……」
エレナが赤くなってごにょごにょ言っている。
「あの三名しか応募がなかったんですよね?消去法でいくとあとはベラさんですけど」
「あいつはないです」
あいつって、おま…。
「じゃあこうしましょう。試しにナーナさんを雇って、問題があるようだったら解雇、改めてメイドを募集するということで」
「まあ、それなら構いませんが」
納得してないって顔だな。
「学院に獣人の友達がいるけど、別に人族と変わらなかったよ?そんなに心配しなくてもいいと思うけど」
「では一つ条件が」
なんか随分意見してくるな。
おかしい、こいつ俺の従者ちゃうんか。
「もし今回雇った結果が芳しくないようだった場合、新しいメイドは私の方で手配させていただきます」
そうきたか。
「いいでしょう。ではナーナさんで決定ということで」
「わかりました。連絡は私がしておきます」
こうしてエレナを丸め込み、筋肉冥土を回避して猫耳メイドを雇うこととなった。
ヒャッハー!!
猫耳メイドさんだぜ!!
次話23時更新予定です。




