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従者 エレナ・パートソン



 裁判もどきが行われてから四日。

 ついに俺の釈放が正式に決まったらしい。

 釈放の際に出された条件は三つ。

 一、王都にいる間は月に一度、王城へと足を運び、金を生成すること。

 二、監視がつけられること。なお、この監視は従者としてこき使って構わないとか。

 三、決められた家を拠点とすること。家はすでに用意してあるらしい。

 正直ホッとしている。

 もうかれこれ十日以上拘束されていたのだ。

 そりゃあ誰だって不安にもなる。


 ちなみに、もしも王都の治安を著しく乱すような場合、処分されるらしい。

 処分。

 詳しく聞くまでもない。

 殺しますよ?ってことだ。

 異世界って怖い。

 ついでにエイジという異世界人のことも聞いてみた。

 なんと殺されたらしい。

 昨日遺体が運び込まれたとか。

 銃で武装した男を殺すとは。

 この世界の方々は強いな。

 俺もサバイバーの前にこの世界の人間に殺されないように注意しないとだ。

 ちなみに、スマホで確認したがギフトポイントは増えていなかった。

 まあ俺は関わってないので当然っちゃあ当然だが。

 一応確認しただけだ。


 しかしまあ、こんな言い方はあれだが、正直に言おう。

 エイジ・ナカバヤシが死んで、俺から心の底から安堵している。

 だってそうだろう?

 近所に自分の命を狙う、しかも銃で武装した男がいたのだ。

 それがいなくなってホッとしないほうがおかしい。

 あいつがもし生きていた場合、俺は王都から逃げるつもりだった。

 奴が消えたおかげで、俺はもう少し学生でいられそうだ。


 釈放されて建物から出ると、一人の女騎士が待っていた。


「初めまして。今日からキラ殿の従者になるよう命を受けました、王宮警備隊所属、エレナ・パートソンです。よろしくお願いします」


 黒髪でポニーテール、前髪は切れ揃えられている。

 真面目そうな顔立ちだ。

 THE・委員長って感じ。

 黒髪ってのが日本人っぽい。

 エレナというより恵理子だな。

 第一印象を言おう。

 多分、そりが合わない。


「あ、どうも、キラ・キイラです。よろしくお願いします」


「さっそくですが、これからキラ殿に用意された住居にご案内します」


 そう言ってエレナさんは馬に跨った。

 隣には馬がもう一頭。


「エリコさん」


「エレナです。何か?」


「俺、馬乗ったことないんですけど」


 一瞬イラッとした顔をしたのを俺は見逃さなかった。


「では、私の後ろに乗って下さい」


 え、何それ恥ずかしい。


「えっと…」


 俺がまごまごしていると、エレナさんが手を差し出した。

 仕方ない。

 俺は諦めてエレナさんの後ろに跨った。


 おかしいな。

 俺の憧れた女子との二人乗りのはずなのに全然うれしくない。


「キラ殿、ちゃんと捕まって下さい。危ないです」


「あ、はい」


 エレナさんの腰に手を回す。

 はたから見ればなんとも情けない絵面だろう。

 ここは我慢だ。

 目の前で揺れるポニーテールが鬱陶しい。

 俺はポニーテール好きのはずなのに、鬱陶しい。

 無言は気まずいので少し話そう。


「エリナさんは」


「エレナです」


「エレナさんは、俺の事どこまで聞いてるんですか?」


「全て聞いております」


 異世界人だってのも知ってるってことか。


「じゃあ従者というよりは監視ってことですよね」


「監視と報告も私の任務ですが、あなたに仕え、手足になるように言われています。何かご要望があれば、何でも仰ってください」


 ん?今、何でもって言ったよね?


「ではさっそくなのですが」


「はい」


「敬語はやめてくれませんかね?」


「さすがにそれはいかがなものかと思いますが」


 なんでもって言ったじゃないか!


「いやね、俺は平民出身なので、敬語とか苦手なんですよね。なんか疲れちゃうっていうか」


「それでしたら、キラ殿は普段の口調で構いません。私のことも、エレナとお呼びください」


「じゃあエレナ、そのキラ殿ってのもやめてくれると助かるんだけど」


「わかりました」


 おお、わかってくれたかエレナよ!


「ではキラ様とお呼びしましょう」


 ………はぁ、わかってなかったよ。


「どうしました?」


「いえ、なんでも」


 やはり、そりが合わないな。





 俺のために用意されたという家はなかなか立派な一軒家だった。

 庭と馬小屋もある。

 むしろ一人で住むには大きすぎるな。

 中はリビング、キッチン、物置部屋、風呂、トイレ、洗濯場。

 風呂があるのが特に素晴らしい。

 二階もあった。

 なぜか四部屋ある。

 俺はその内の一つを寝室とした。


「では、私はこの部屋にします」


 家の中を案内していたエレナがそんなことを言った。


「…? この部屋にしますとは?」


「私もこの家に住みますので」


 んな!


「さすがに男女が同じ屋根の下というのは危険なのでは?」


「私は構いませんが、手を出された場合、それも報告させていただきます」


「いや、そんなつもりはないんですけど」


「ご存知の通り、監視も私の任務です。ご了承なさっているはずでは?」


「まあ了承はしたけども」


 やっぱこの人苦手だ。


「でしたら、なんの問題もないでしょう」


 ま、いっか。

 でも、拠点ができたのはうれしいな。

 あちこち俺色に改装して楽しむとしよう。


 さしあたってまずはやることがある。

 学院の校長に今回の件を報告しないとな!








 そんなわけで俺は今、学院の校長室にいる。

 ここに来るのは二度目だ。


「まずは、キラ君が無事で何よりじゃった。ケガなどはないか?」


「ありがとうございます、ルイス校長。ケガはまあ些細なもので済みました」


「そうかそうか。それで、そちらのお嬢さんは?」


「このたび、キラ様の従者に任命されました。王宮警備隊所属のエレナ・パートソンです」


「要は俺の監視です」


「なるほど、まあ監視がつくのは当然か」


「そう言えばラスター家でも俺に監視がついてたらしいじゃないですか」


「腐っても四大貴族じゃからな。王都を守る義務がある以上、異世界人は監視しないわけにもいかん。むしろ、王への報告がなかったことで言及されたわ」


「あ、それはなんというか、すんません」


「他言しないという約束じゃったからのう」


 ありがてえ、と心の中で感謝の涙を流す。


「問題の異世界人はすでに始末されたらしいのう。これでもうしばらくはキラ君も学院にいれるかのう」


「そう言ってもらえると助かります。あと、釈放される時の条件で、家を一つ提供されまして、つきましては寮からそちらに移るつもりです」


「了解じゃ。とは言ってもキラ君はすでに寮の一年分の金額は払い終えておる。部屋は自由に使ってもらって構わんよ」


「じゃあ何かあったら使うかもしれません」


「そうそう、この所、うちのミリアが寂しそうにしておってな。あの子は友人を作るのが苦手みたいでのう。たまにで良いから構ってやってはくれんか」


「まあ、たまにで良ければ」


「助かる。ではキラ君、困ったときにはいつでも相談に来なさい。儂にはそれぐらいしかできんでな」


「ありがとうございます。ではまた今度」


 軽く挨拶を済ませ、俺達は校長室を出た。





 家に戻った俺は、一つの重大な問題に気づいた。

 我が家は二階建て。

 外には馬小屋もあり、釈放時にもらった二頭の馬もいる。

 俺はこれら全てを管理しなくてはいけないのか。

 掃除、洗濯、家事、馬の世話、そして学院で授業。

 無理ですわ。

 もしかしてエレナがやってくれるのでは?

 そう思い聞いてみると、「私の任務はあなたの監視です」と遠回しに断られた。

 何でもするって言ったのに………。

 その代わり、ナイスなアイディアをいただいた。


「普通、こういうことはメイドにやらせます」


 なるほど!!

 確かにカーマインやラスターの家では当たり前のようにメイドがいたな!


「よろしければ私が手配しましょうか?」


 エレナが手配するとなると……。

 おそらく監視目的のエレナみたいな堅苦しいのが来るかもしれない。

 正直こんなのがもう一匹増えるとなると、考えただけで息が詰まりそうだ。

 もうちょっと、緩い感じの人がいいんだが。

 その時、キラの脳裏に電流が走る。

 そうだ、冒険者ギルドで依頼を出してみよう。

 メイド募集中と。

 王宮勤めの奴よりはフランクなメイドが現れるに違いない!

 雇用条件は、家事全般と馬の世話ができること。

 思いついたら即行動だ!

 俺は冒険者ギルドへとひた走った。






 

メイドを雇うのは男の夢。

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