エイジ・ナカバヤシ vs ライアン&アルガリド
サバイバーvs元『王の盾』&現役『王の盾』
サバイバー、エイジ・ナカバヤシ。
彼が選んだギフトは『自衛隊歩兵装備一式』。
生前、彼が所属していた部隊の装備を、そのままギフトとして昇華させた。
その結果、装備の失ったものは深夜十二時に回復するという補給機能もついた。
装備はハンドガン、アサルトライフル、予備弾倉各一つずつ、手榴弾、ナイフ、ヘルメットに防弾チョッキ、ケブラー繊維の強靭な迷彩服、そして安全靴。
水筒や携帯食料、通信機器なども期待していたエイジであったが、それらはギフトにはなかった。
それでも十分過ぎる装備であることは、ここ数か月で理解している。
もはや敵なし。
王都ベルベゴードの冒険者ギルドで爆破騒ぎを起こした後、泊まっていた宿屋に警備隊が現れ、戦闘になったものの撃退。
その後王都から出る際に、検問で戦闘があったが容易く突破。
現在王都から徒歩で離れる際は追手が現れたがこれも簡単に退けた。
しかしながら、彼は馬に乗ることができない。
追手は騎乗して追ってくるため、すぐにまた追いつかれるだろう。
しかし彼はこの状況を楽観視していた。
追手が何度現れても撃退できる。
その自信もあった。
その日、街道を歩いていたエイジは、後方から馬の駆ける足音を聞いた。
振り返ると、二頭の馬がこちらに接近して来る。
エイジは、少しだけ逡巡する。
王都でもそうだったが、追手はいつも五人以上でやってくる。
それが今回は二人だけ。
一瞬無関係な人間かと思ったが、すぐに考えるのをやめた。
追手であろうがなかろうが殺せばいい。
先手必勝。
そして持っている食料はすべて奪う。
エイジにとって、度重なる追手は食料庫替わりだ。
アサルトライフルを馬に向ける。
ダダダン! ダダダン!
馬は二頭とも悲鳴を上げ、崩れるように倒れた。
そこで驚いたのは、今回の追手はいつもの追手と違い、馬が倒れる前に飛び降りたことだ。
着地と同時に一人の男の前に氷の壁が出現。
もう一人もその後ろに隠れた。
そして、新たに氷の壁を作りながら徐々に近づいてくる。
「魔術師か」
エイジは手榴弾の使用を考えたが、ここは平地。
少し間違えれば自分にも被害が及ぶ。
アサルトライフルを三点バーストからフルオートにセレクタを変更。
氷の壁ごと打ち抜くことにした。
ダダダダダダダダダダ……
氷の壁の破壊に成功するが、二人の姿はない。
エイジに対して斜め四十五度に氷の壁を形成しながら、壁ごと前進してくる。
「チッ!」
舌打ちをしつつ、すばやく空になった弾倉をはずし、新しい弾倉をセット。
その隙に氷の壁から鎧を纏った剣士が飛び出し、身を低く屈めながら地面を這うようにエイジに迫る。
エイジは、鎧を着た男がこれだけ素早く動くという事実に驚愕しつつ、ライフルを男に向ける。
エイジが引き金を引くコンマ数秒前に、男の持つ剣が鋭く振られ、まだギリギリ届かないと踏んでいた剣がまるで鞭のように伸びたような錯覚。
剣先でライフルが弾かれた。
「な!!」
エイジが慌てて後ろに跳ぶ。
エイジの首があった場所に男の剣が振られた。
首の皮が薄く切られた気はするが、同時に勝ったと確信するエイジ。
素早くハンドガンを抜き、男に発砲。
パンパンパンパンパン!!
エイジは目の前で起こったことに再び驚愕する。
男はエイジが撃った弾を剣で弾いたのだ。
だが、男は剣で弾くのが精一杯なのか、距離を詰められない。
「ゴッ!」
目の前の男に集中していたエイジの腹に、横から氷の槍がぶつかる。
もう一人の男が放った魔術は、エイジの防弾チョッキを貫通するには至らなかった。
しかし、その際にできた隙を、剣士は見逃さなかった。
剣士が振った剣はあまりに早く、エイジには何が起こったのかわからなかった。
気づいた時には、エイジは自分の体を見上げていた。
首がなくなった自分の体を。
「ふぅ~、死ぬかと思ったわい」
ライアンは深く息を吐いた。
まるで今まで呼吸ができていなかったかの如く。
「ライアン殿、お怪我はないか?」
それに近づくローブを纏った魔術師。
彼の名はアルガリド・グランドー。
現役『王の盾』であり、防御力は王都ナンバーワンと言われている。
「なんとかのう。愛剣にはヒビが入ってしまったが」
そう言って手に持った剣を見下ろす。
「まさかあれを剣で防ぐとは。まだまだ現役ですね」
「いやいや、アルのアイスランサーがあと一歩遅かったら、死んでいたのは儂だったかもしれん」
「私だけではやられていましたよ。まさか、私のアイスウォールがあんなに容易く突破されるとは」
「ふむ。アイスランサーを食らってもダメージはなかったようじゃ。これが異世界人か。恐ろしい奴よ」
「警備隊との交戦情報がなかったらやばかったですね」
「初見でコイツに勝てる奴はそうおらんじゃろうなあ。さて、さっさと帰還するぞ」
「ライアン殿、異世界人の遺体を持ち帰るように言われてますが」
そう言ってアルガリドは二頭の馬の死体に目を向ける。
「儂はそんなこと言われてないのう。持ち帰りたかったらそうするが良い」
「え!?手伝ってくれないんですか!?」
半泣きのアルガリド。
彼は生粋の魔術師。
肉体はさほど鍛えられていない。
「年寄りに無理をさせようとは、グランドー家も落ちたもんじゃのう」
アルガリドは心の中で「貴様のような年寄りがいるか!」と憤慨しつつも、先輩である元王の盾の言うことには逆らえなかった。
二人が王都に帰還したのは、この二日後である。
人間の体は、重いのです。




