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透明人間を探せ!



「よし、では出発だ、キラ」


 白いシャツに黒いボトムスを着こなす、一見すると赤い髪のイケメンホスト。

 これが女なのだから世の中わからない。

 今日は鎧を着てないせいか、よく見ればウエストや腰のラインは女性的だが、それでもイケメンオーラが凄まじい。

 正直一緒に歩いていると自分が情けなくなる。


「はぁ」


「ん?どうしたキラ?」


「いえ。まずはどこから見るんですか?」


「まずは商業区の大通りから行こうと思う」


「了解」


 大通りは朝から人通りが多い。

 ここで透明人間探し?


「クリス、ここに目標はいないと思うよ?」


「なぜそう思うんだ?」


「透明人間ってことは相手から見えないんだよ?こんな人通りが多いところでまともに歩けるわけがない」


「なるほど、一理ある。もう少し人通りの少ない通りに行くか」


「ほいさ」


「ちなみに丸腰だけど、クリスは素手でも戦えるの?」


「相手の力量にもよるが、大方問題ないだろう」


 すっごい自信だな。

 羨ましい。


「他に透明人間が行きそうな場所は、どこか思いつかないか?」


「う~ん。俺が透明人間だったら、酒場の酔っ払いとかを狙うかなあ」


「酒場は夕方まで開いてないだろう」


「盗難事件はどこで起きたのかだいたいわかるだよね?」


「ああ、おおよそわかるぞ。一件ずつ回るか?」


「それがいいかもね。同じところじゃやらないかもしれないけど、相手の考えてることがわかるかも」


「わかった。一件目はこっちだ」



 それからクリスに連れられ、事件現場と思われる場所を歩き回った。

 特に店の種類などは選んでないようで、宿屋や酒場、雑貨屋や武器屋など、手あたり次第盗みまくっているという印象だ。

 さすがに疲れた。


「ちょっと休憩しません?」


「そうだな、昼食にするか」


「あ、近くにニャコブの屋台あったから、あれにしよう!」


「ニャコブ?なんだそれは」


「え!?食ったことないんですか?」


「う…その、屋台で買い食いというのをしたことがなくてだな」


「あー、一応クリスも貴族だもんね」


「一応とはなんだ」


「こりゃ失敬。試しに食べてみればいいじゃん」


「お、おう」


「おっちゃん!いつもの二つ!」


 犬耳のおっちゃんはニャコブを二つ、さっと出した。

 早い。

 これぞファストフード。


「キラはいつも来てるのか?」


「たまにだけど売ってる物が一種類しかないからきっと何言っても同じのがでてくるよ」


「適当だな」


「貴族様にはない適当さでしょう?」


「ふふ、そうだな。お、意外とうまいな」


「そうでしょうとも」


 マイフェイバリットフードだからな。

 マズいなんか言わせねーよ?


「ところで一点、気になったことがあるんだけど」


 そう言って俺は雑貨屋で買った地図を広げる。


「クリス。この地図に今まで事件が起きた場所を記しつけてもらえる?」


「わかった」


 クリスが地図に事件現場の印をつけていく。


「ん?これはまさか…」


「最初に発覚した現場はどこ?」


「ここだ」


「一番最近のは?」


「ここ……これはまさか」


「そう。多分犯人は商業区の通りを端から順に盗み歩いてるんじゃないか?」


「てことは次に盗みが起きるのは…」


「「ここだ」」


 俺とクリスが同時に一つの通りを指さす。


「こうしてはいられん。すぐに行くぞ」


 クリスが立ち上がり、走り出した。


「にゃ!」


 あーあー。

 急に走り出したから通行人とぶつかってしまった。


「おっと、すまない。ケガはないかな、子猫さん」


 おわー、なんてセリフを平然と吐きやがるんでしょうか。

 あ、違うな。

 ぶつかった相手が小柄な猫族なだけだった。

 クリスは相手が転ぶ前に抱き留めたようだ。


「は、はひ!ダイジョブれす!」


 あちゃーかわいそうな猫族の乙女よ。

 顔を赤くして、うるうるしながらクリスの顔を見上げている。

 ありゃ惚れたかな。

 しかし残念、そいつは女だ!


「兄貴!さっさと行きやすぜ!」


「誰が兄貴だ。すまなかったな、お嬢さん」


 一方的に別れを済ませて、俺たちは次の犯行が行われると予想される通りに向かった。


「この通りか」


 宿屋、酒場、飯屋が三つ。

 あとは住宅だろうか。

 店が少ないため、人通りも少ない。


「あの宿屋の二階からなら、向かいの店二つも同時に見張れるな」


「どうする?一回戻って武器を取ってくる?」


「いや、もしそれで透明人間を逃がしたら場合、この通りの次は大通りだ。お前の読みが当たっていれば、大通りには現れないはずだから、次の犯行場所が読めなくなる危険がある。このまま宿屋に部屋を取って見張ろう」


「了解」


 こうして午後の張り込みが始まった。

 宿屋の二階の窓から通りを監視。


「ちなみに犯人がいたら、攻撃してもいいの?」


「問題ない。殺さない程度に無力化しろ。それができなければ確実に一撃で殺せ」


 殺せって、簡単に言ってくれる。

 てゆーか、俺ら素手なんだけど。

 俺は一日三魔があるからいいけど、クリスはきついだろう。


「これ、持ってて」


 クリスに物質化で作ったロングソードを渡す。


「ついに剣まで作れるようになっていたか。ありがたく使わせてもらおう。キラの分は作れないのか?」


「俺は最近魔術の授業でいろいろ習ったんで、そっちでいくよ」


「ちょっと見ない間に、随分と頼もしくなったな」


 よせやぃ、照れるべ。


「俺は丸腰だから警戒されないだろうし、宿屋の一階を見張るよ。もし透明人間を見つけたら魔術で攻撃するから、そん時は援護よろしく」


「わかった」


 クリスは宿屋二階から、通りを監視。

 俺はその死角の宿屋一階を監視。

 この位置なら、向かいの酒場の入り口も見える。

 さて問題は現れるかどうかだな。



 監視開始から六時間経過。

 もうすっかり日が暮れ、向かいの酒場は多くの人で賑わっている。

 宿屋一階でずっと見張り続けてはいるが、さすがに疲れた。

 意外と張り込みって体力いるんだな。

 宿屋の店主には物凄くいやな顔をされたが、金貨一枚払って見逃してもらった。

 お腹すいたなぁ。

 なんか飯でも頼もうかな。

 いや、でもクリスも飲まず食わずで見張っているはずだ。

 俺だけ悠長に晩飯食ってたら、さすがに怒りそうだ。

 もう帰りたいなあ。

 まさか泊まり込みで見張るわけじゃないだろうな。

 てゆーかクリス、まさか寝てないよな?

 寝てたらドン引きだぞ。


「ん?」


 向かいの酒場のドアが開いたが、誰も出てこない。

 風か?

 でも店内側から開いてるし。

 まさか……。


「!!」


 巾着袋が宙に浮いて酒場から出てきた!

 でやがった!

 透明人間だ!

 俺はゆっくりと巾着袋に指を向ける。

 放つ魔術はライジング。

 無力化するだけでいい。

 威力はなるべく小さく。

 射線に誰もいないことを確認して…

 バリリッ!


「があああああああ!」


 絶叫が響き渡ると同時に、裸の男が姿を現した。

 所持品は巾着袋のみ。

 変態だ!!

 いや違う。

 こいつ、服は透明化できないのか!

 なんて残念な能力してやがるんだ!


「なんだなんだ?」


「おい、なんだあいつ!マッパだぞ!」


「きゃあああああ、変態よー!!」


「あ、あれ俺の財布だ!」


 や、やばいな、騒ぎになってきた。

 俺が狼狽してると、裸の男が動き出した。

 しまった!

 威力を抑え過ぎたか!

 見物人の剣を奪った裸の元透明人間が、通行人の女性に剣を突き付け、人質を取った。


「てめえら!それ以上近づくんじゃねえ!こいつがどうなっても知らねえぞ!!」


「きゃああああ!助けてえええええええ!」


「なんだ!?強姦魔か!?」


「うるせえ!俺の財布返しやがれ!!」


 裸の男を中心に人の輪ができあがった。

 マズい、人が多すぎて魔術が打てない。

 この状況、どうすれば…。

 その時、空から人影が輪の中心に飛び降りてきた。

 一瞬だが、あの赤い髪は…


「まさか、クリスか!?」


 急いで人を掻き分けて行くと、頭から血を流して絶命した裸の男。

 そして赤い髪の剣士と、礼を言う人質だった女性。

 俺がクリスに渡したロングソードは血に塗れている。

 クリスめ、本当に一撃で殺しやがった。

 あのロングソード、俺が使ったときはすぐに折れたのに、これが技量の差か。

 一撃必殺、慈悲はない。

 まあ人質を取った時点であの男の未来はなかった。

 さっさと逃げれば、猥褻物陳列罪と窃盗の容疑だけで済んだかもしれないのに。

 いや、俺のミスだな。

 俺がライジングで気絶させることができれば、この男は死なずに済んだ。

 せめてサバイバーかどうかは確かめておきたかった。

 ……もうやめよう、考えてもしかたのないことだ。


 俺がそんな風に悩んでいると、突如裸の男の死体の鳩尾が光りだした。


「なんだ?生きてるのか?」


 光は段々と形を成し、黒くて小さなスマホへと変化した。

 画面にはこう書いてあった。


『サバイバー撃破おめでとう』


「な!!」


 慌ててスマホを手に取る。

 が、同時にクリスがこちらを振り返った。


「キラ、どうかしたか?」


「今、こんなもの見つけて…」


 ヤバいかと思ったが、こんだけ周りに人がいるんだ。

 今更隠せはしない。

 おとなしくスマホを見せる。


「なんだ手がどうかしてのか?」


「え?これですよこれ!」


「ケガでもしたのか?よくわからないが…」


 なんだこれは?

 クリスにスマホが見えていない。

 これも透明化能力の一部か?

 とにかく回収しておこう。


「ん?どうやら警備隊の連中が来たみたいだな」


 大通りの方から見覚えのある警備隊の鎧が、五つほどこちらに走ってくる。


「クリス、悪いけど後の事まかせていいか?」


「ああ、大丈夫だ。あとは警備隊の仕事だ。今日は助かったよキラ」


「どういたしまして。それじゃあ俺はこれで!」


 俺は逃げるようにその場を離れた。

 とにかくこのスマホを早く調べなけれないけない。

 急いで学院の寮に戻らなければ。






次話0時更新予定!


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