表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/33

空飛ぶ銀貨




 目が覚めた時、俺は見知らぬベッドの上だった。

 なんだか体が少し怠い。

 確かミリアと飲み比べをして、先にミリアが酔いつぶれたところまでは覚えているが、その後の記憶はない。

 もう日が昇り始めている。

 毛布をどかすと、なぜかパンツ一丁だった。

 いつ脱いだんだっけか。

 俺の服が畳んで置いてあったので、それを着る。

 俺も酔いつぶれて寝てしまったのだろうか。

 だとすると、ここはまだラスター家の屋敷内か。

 今日は剣術の授業の日だ。

 学院に戻らないと。

 そう思い部屋からでて廊下を歩いていると、マリンダさんと出くわした。

 風呂上がりのようで、しっとりした髪の毛がなんともセクシーだ。

 今日は肌もいつもよりツヤツヤしている気がする。


「あら、おはようキラ君」


 満面の笑顔だ。


「おはようございます、マリンダさん。今日はなんだかご機嫌ですね。いいことでもあったんですか?」


「ふふ、おかげさまで。昨日の夜は最高だったわ」


「昨日の夜……すいません、ミリアと飲み比べをした後から記憶がなくて。俺、何か失礼な事しませんでしたか」


「素晴らしい夜だったわよ。でも、覚えてないのは残念ね」


「楽しんでもらえたなら良かったです。俺はこれから剣術の授業があるので、学院に戻りますね」


「あら、もう行っちゃうの?送りましょうか?」


「道は覚えているんで大丈夫です、お世話掛けました」


「いいのよ、またいつでも来てね」


「はい、ではいってきます」


  






 剣術の授業は、全体の七割くらいが参加しているようだった。

 まずは木剣を持ってのランニング。

 剣を持ちながら走るということが重要らしい。

 次に木剣での素振り。

 掛け声に合わせて振っていく。

 地味だ。

 まあ何事も基本は大事だ。

 サボらずがんばろう。

 結局その日は延々と地味な基礎を繰り返して終わった。

 まあ部活とかでも最初はどこもこんなもんだろう。






 翌日、久々の休日なので、マートン商会のトムさんを訪れることにした。

 かれこれ一か月ぶりだ。


「やあキラ君。久しぶりだね」


「どうも、トムさん。すいません、一か月も来れなくて」


「なに、元々何日に一度、なんて明確な決まりは作ってなかったからね。君の予定に合わせるよ」


「あれから異世界人の情報って、なにかありました?」


「どれもまだ噂で、裏がとれてない情報しかないけど、いいかい?」


「大丈夫です」


「一つ目は、空飛ぶ銀貨。王都内で空中を移動する銀貨を見たって目撃情報が結構ある」


「魔術かなんかですか?」


「それがよくわからないんだよ。掴もうとした人もいたらしいんだけど、見えない何かが銀貨を覆っていて、銀貨は取れなかったらしい」


「見えない何か?」


「そう。王都警備隊は、このところ犯人不明の盗難事件が急増してるのと関係があるとして捜査中だそうだ」


「それはいつからなんですか?」


「だいたい一か月くらい前からだね」


 むーん。

 サバイバーがこの世界に来た時期とも近いな。

 なんらかの能力かもしれない。


「二つ目は昨日届いたばかりの情報なんだけどね。魔族に不審な動きがあるって話」


「魔族?それってなんかマズいんですか?」


「魔人族、通称魔族は過去に人間と戦争をして負けたんだ。人間からしたら何世代も前の話だけど、魔族は長生きなのが結構いるからね。そいつらは未だに負けたことを根に持ってるのもいるのさ。もし彼らを率いる圧倒的な力を持つ魔王が現れたりしたら…」


「現れたら?」


「再び戦争を仕掛けてくるかもしれない」


「せ、戦争?」


 ゴクリ。

 そういえばギフトは権力も手に入るって言ってたっけ。

 ま、まさかサバイバーが魔王だなんてこと…ありえるのか?


「そうなったら武器や防具の値段が上がるから、今のうちに買い溜めしといてもいいかもね」


 呑気だな、おい。

 まあそれでこそ商人か。


「そんなわけで、今日は武器でも使ってもらおうかな!」







 マートン商会を出た後、久しぶりに買ったニャコブを頬張りながら、少し情報を整理してみた。

 気になったのが、空飛ぶ銀貨だ。

 俺が他のサバイバーがどんな能力を選ぶかと考えたときに、思いついたことが三つある。

 一つは、相手の考えが読める能力。

 これは戦闘以外でもかなり役に立つだろう。

 二つ目は、時間を止める能力。

 これは最強クラスだが、暇神のNGが入る可能性が高い。

 そして三つ目が、透明人間、これだ。

 攻撃、逃走時、セクハラなど、様々な分野で活躍する能力だろう。

 そこで、空飛ぶ銀貨に話は戻る。

 透明人間が銀貨の盗み、持ち去ろうとした。

 しかし銀貨は透明にはならなかった。

 透明人間が持っていた銀貨を掴もうとした人は、透明人間が邪魔で銀貨を掴めなかった。

 こういうことじゃないだろうか。

 この推理、なかなか自信がある。

 金を盗むということは、使う予定があるということだ。

 透明人間のままでは盗みはできても買い物はできない。

 つまり、透明化を解除できるということだな。

 おそらくは自分の意志で透明になれる能力だろう。


 しかし、もう少し情報が欲しいな。

 トムは、王都警備隊が捜査してるって言ってたな。

 たしかクリスが王都警備隊で働いてるはず。

 師匠に挨拶がてら、情報収集に行くか。


 カーマイン家に着いたがクリスは仕事でいなかった。

 夕食の時間には戻ってくるので、良ければご一緒にどうですか?と言われ、ありがたく了承した。

 それまで師匠に暇つぶしに稽古してもらった。

 日が落ち始め稽古を終えた頃、ようやくクリスが帰ってきた。


「ちーす。あれ、クリスなんだか疲れてるみたいだけど大丈夫?」


「キラか。いや、疲れてるわけではないんだ。慣れない仕事で、少し行き詰っているんだけさ」


「慣れない仕事って?」


「最近、王都で頻発してる盗難事件は知ってるか?」


「ああ、空飛ぶ銀貨ね」


「なんだ、そこまで知っているのか。その犯人の捜査が今の任務なんだが、警備隊の結論ではその犯人が、他人の目から見えなくなる魔術が使えるという結論になったんだ」


 ほう。

 俺以外にもその結論に辿り着く猛者がいましたか。


「そんな魔術あるんですか?」


「誰もそんな魔術知らないと半信半疑だが、状況からして透明な何かが盗みを働いている可能性が一番高いというのが警備隊の結論だ。だが目に見えない犯人を捜すなんて、雲を掴むような話さ」


「もしかして、お兄さんのジェイムスさんが帰ってこれないのはそのせい?」


「兄上は副隊長で、仕事量は警備隊の中でも一番多い。きっとこの件が解決するまで帰ってはこれんだろう」


「その盗難事件は王都のどの辺で起きているの?」


「全て商業区で起きている」


「ならなんとかなりそうですね」


「簡単に言ってくれるな、相手は目に見えないんだぞ。盗難が発覚した頃にはもう犯人はどこに行ったかわからないんだ。警備隊がいる時は盗難事件も起こさない。実に厄介だ」


「まあそりゃそうでしょうね。警備隊はみんな同じ鎧着てるからすぐわかるしね。いっそ私服で張り込みでもしたら?」


「警備隊の鎧は市民を守っているという証と誇りだ。脱げと言われていい思いをする者はいないだろう」


「俺には良くわかんないけど、別に誇りを守るのが仕事じゃないでしょ?」


「……そう言われるともっともな意見だな。よし、今度兄上に進言してみよう」


「なにか手伝えることがあったら言って下さいね。授業がない日なら力になれるから」


「それはありがたい。明日は授業はあるのか?」


 急だなおい。


「明日は授業ないよ」


「私も明日は休日なんだ。キラの言う私服で警備をやってみようかと思うんだが、手伝ってくれないか?」


 休日に進んで仕事をしようだなんて、クリス、恐ろしい子。


「オッケー、やっと恩返しができるね」


「よし。では明日は朝から出発だ。キラ、今日は泊まっていけ」


「アイアイサー」


 こうして、ついに俺はサバイバーと思われる人物を探すための行動を開始するのであった。









 一方、その頃。

 ラスター家では家族会議が開かれていた。

 参加者はマイク、マリンダ、ミリアである。


「では、マリンダ、ミリア。作戦の報告を聞こう。まずはミリアから」


「お父様に言われた通り、キラをわたしの部屋に連れ込んだわ!」


「ほう、やるじゃないかミリア。それで?」


「その後、お風呂に入りました。キラも誘ってけど、断られたから一人で行ったわ!」


「それでその後は?」


「一緒に夕食を食べたわ!お母様と一緒に」


「違う。その前だ」


「ゆっくりお風呂に入って、部屋に戻るころには夕食の準備ができたからキラを連れて行ったわ!」


「はぁ」


 マイクは重たいため息をついた。


「え?お父様に言われた通りに、キラをうちの夕食に誘って、わたしの部屋に連れ込んだじゃない!作戦成功よ!」


「…ゴメンなさい、マイク。そういえばミリアにちゃんと子供の作り方教えたことなかったわ」


「……あとで教えておくように。それでマリンダの方は?」


「ミリアとキラ君と夕食に同席して、キラ君を酔い潰すことに成功しました。その過程でミリアも酔い潰れたけど。その後は客室のベッドの上で五回搾り取りました」


「おお、見事だマリンダ!」


「ありがとう、マイク。しかも、都合のいいことにキラ君の方は酔い潰れてから記憶がないらしいわね」


「ねえお母様、何を搾り取ったの?」


「あとで教えたげるわ、ミリア」


「よし。あと何度かこの方法でいこうか。バレた場合は誘惑して、キラ君の方から襲わせるように仕向ける作戦に移行だ」


 この後、ミリアに対してマリンダによる保健体育の授業が開かれたのであった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ