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事情聴取 学院編

 校長室の中。

 今部屋の中には俺、ミリア、マリンダ先生が立たされ、豪華な椅子に座る校長とその隣に立つマイク先生がいる。

 校長はなんという名前だったか……確かルイスなんとか。


「さて、一体何が起きたんじゃ?」


 校長が問いかける。

 やべーなんだこれ、どうしてこうなった?


「じゃあ、マリンダ、まずは君から何があったのか説明してもらおうか」


 マイク先生の仕切る。


「わたしとミリアとキラ君で雷魔術の実技授業を行っていました。まず始めにスタンライザーを教え、問題なくできたため、ライジングを教えていました」


「ほう、それで?」


「まずわたしとミリアが実践し、キラ君の番の時にミリアが、自分より威力のあるライジングを打てたら認めてあげると言いました」


 ミリアが唖然としている。


「それじゃわたしのせいみたいじゃ…」


「ミリアは今は黙っていなさい」


「…はい」


 ショボンとするミリア。

 なんだか少しかわいそうな気分になる。


「それから?」


「キラ君が魔術を発動したら、まばゆい光で視界が奪われ、大きな音が響き渡りました。目が見えるようになったときには、壁に大穴が開いていました」


「キラ君はどんな魔術を使ったんだい?」


 ひ、ひぃ!

 俺にもきた!


「お、教えていただいたライジングの込める魔力量がよくわからなかったので、落雷をイメージして一瞬に多くの魔力を込めるようにしたら、ああなりました。…その、ゴメンなさい」


 怒られるのか?

 そりゃ怒られるよな?


「そうか。聞く限りはマリンダの指導ミスだね。スタンライザーの次はインパルスを教えていれば、魔力の加減もわかったろうに」


 ありゃ、俺はお咎めなし?

 ら、ラッキー!


「申し訳ありませんでした。初めての実技授業で舞い上がってしまい、あそこまでの威力がでるとは想定できませんでした」


 十年も実技授業してないんだもんな。

 そりゃしゃーないよ。

 ミリアが安堵した顔をしている。

 自分のせいじゃなくて良かったとでも思っているんだろうか。


「キラ君に質問があるんだが、いいかな?」


「は、はい」


 ゲッ!

 また俺か。


「君はどこの貴族の子かな?」


「いえ、平民です」


「ご両親はどちらに?」


「(この世界には)いません」


「そうか。婚約している人はいるかな?」


「いえ、そういう類いの人はいません」


「校長、どう思われますか?」


「ふむ、申し分ないのう。キラ君が放った魔術はおそらくはライジングの上位魔術、ライトニング。わしの祖父が使ったのを一度見たことがある」


「わかりました。学院の器物破損については、学院側の不手際ということで処理します。構いませんか?」


「それで構わん」


 た、助かった。


「それでキラ君」


「はい!」


 まだなにかあるのか?


「キミ、ミリアの事はどう思う?」


「どうと言われましても…今日会ったばかりですし」


「まあそうだね。見た目はどうかな?結構かわいいと思うんだが」


 まあ容姿に関しては結構好みのタイプだが…それ以前に両親の前で娘の悪口が言えるほどの度胸は俺にはない。


「見た目だけなら結構好きですよ」


 視界の端でミリアがくねくねしだした。

 まさか照れてんのか?


「そうか、よかった。じゃあミリアと結婚してくれないか?」


 けけけけ結婚!?

 サラッとすごいこと言うなこの人。


「申し訳ありませんが、しばらく結婚するつもりはございません」


「え!なんでよ!」


 いや、ミリアがそのリアクションするとは思ってなかったわ。


「理由を聞いてもいいかな?」


「今後、少し忙しくなる予定があります。その時は最悪王都を離れることも視野に入れていますので、軽はずみは決断はできません」


「多少のことなら手を貸すよ?これでもラスター家は四大貴族の一角。それなりの権力はある」


「……」


 どうしたものか。

 嘘はあまりつきたくないな。

 ギリギリ言えるとこまで話すか。


「あと十か月ほどで、おそらく俺は殺し合いに巻き込まれます。その時に一緒にいると、ミリアさんも巻き込まれる可能性が高いでしょう。そうなったら命の保証はできません」


「君は犯罪でもしてきたのか?」


「そういうわけではありませんが…」


「これでも王都最強一族の一角だ。その辺の輩にラスター家が後れを取るとでも?」


 気に障ったか?

 でもここは引けない。


「相手のことはまだわかりませんが、最悪の場合、俺と似たようなスペックの相手が百人近くいます」


「キラ君と同じ魔術が使えるようなら、確かに手強いけど、にわかに信じがたい話だな…」


「マイク、マリンダ、ミリア、少し席を外してくれんか?」


 ここまで静かに話を聞いていた校長が言った。


「?構いませんが…マリンダ、ミリア、行くぞ」


 三人が部屋から退出した。

 俺と校長の二人きりだ。


「…キラ君と言ったか、君は異世界人かね?」


 あうわ、喋り過ぎたか、なぜバレた。

 逃げる準備をしよう。


「そう警戒せんでも、どうこうするつもりはない」


「なぜわかったんですか?」


「五十年くらい前になるかのぅ。儂がまだ若い頃に、異世界人に会ったことがある。その時に聞いたんじゃよ、異世界人は百人召喚されていて、不思議な力を与えられて戦わされているとな」


 前のサバイバーと会ってるのか。


「その男はなんでも斬れる刀を持っておった。これが神から与えられた力だと、そう言っていた」


 校長は遠くを見るような目で、思い出すように語った。


「儂はその男と仲良くなってのう。儂とその男のコンビは最強だと思っておった。だが、儂らは負けた。何が起こったかわからなかった。気づいた時には、隣にいたあいつの頭が砕け散っていた。敵の姿はどこにもない。儂は恐ろしくなって、あいつの死体をそのままにして必死に逃げたよ」


 どんな能力の相手だよそれ。

 勝てる気がしない。


「確かにキラ君の言う通り、異世界人の戦いは常人の理解の範疇を超えておる。ラスター家といえども勝てるかはわからん」


「戦いが始まったら、学院からは去るつもりでいます。それまではここで授業を受けさせてもらえませんか?」


「構わんよ。ただ学院内で戦闘が起こる可能性が生まれたときは…」


「その時はできる限り最速でここを離れます」


「それが聞ければ充分じゃ。それまでの間、ここでゆっくり過ごすが良い。儂の学院で異世界人にモノを教えるとはのう。人生わからんもんじゃ」


「ありがとうございます」


「キラ君は四大貴族の祖先が異世界人というのを知っているかね?」


「…初耳です」


「そうじゃろうな。だが神から授かった力は子にも受け継がれるんじゃ。次第に薄まってはいくがのう。もし良ければ、ラスター家に子供を残していかんか?」


 一日三魔が薄まったら一日一魔とかになるのか?

 微妙過ぎる。

 しかし校長は随分ラスター家の心配をするなあ。


「何とも言い難い質問ですね」


「ラスター家は今、滅びかかっておる。年々血筋も薄まり、先祖に比べれば魔術師として数段劣っておる。君の血が混じれば、一族の未来は明るい」


「まあ考えておきます」


「儂の話はこれで終わりじゃ。もう行って構わんよ」


「はい。あと、今の話は…」


「もちろん誰にも口外せん」


「助かります。それでは失礼します」







 キラが部屋から出て数秒後、ラスターの三人が戻ってきた。

 すぐにマイクが尋ねる。


「何を話していたんですか?」


「いろいろと確認じゃよ。彼の力は本物、神からの贈り物じゃ。だが彼の周囲がいずれ危険になるのもまた事実じゃ」


「悪人ではないんですよね?」


「マイク、それはなかろう。彼が自分の身の安全を一番に考えるなら、ラスター家ごと道連れにするはず。だが彼はそうはせず、事情を話してくれもした。むしろお人よしじゃな」


「しかし彼の血を逃した場合、もうラスター家にチャンスは訪れないかもしれません。子が作れなくなった私が言うのもなんですが」


「それは仕方のないことじゃ、マイク。しかし、ここでキラ君をただ逃す手はない」


「私が言うことじゃないが、ミリアで大丈夫か?マリンダの方が適任だと思うが」


「確かにミリアじゃ不安ね。わたしが攻めましょうか?キラ君もわたしの体に興味あるみたいだったし」


「お母様!私だってうまくやれます!」


「でもミリア、授業の時は喧嘩腰だったじゃない。あれじゃ男は堕とせないわよ?わたしなんかすぐにマイクを堕としたんだから」


「では彼がラスター家に嫁ぐのは一先ず諦め、学院を去る前にミリアかマリンダが彼の子供を授かる、この方向でいいですか、ルイス様」


「そうだな。あとマイク、学院では校長と呼べ。なんとしても彼の血は欲しい。キラ君は十か月は学院にいると言っていた。理想は二人とも子を授かることじゃな」


「だから、私だけで大丈夫だってば!」




 こうしてラスター家によるキラ誘惑作戦が始まろうとしていた。

 ちなみに校長の名はルイス・ラスター。

 ラスター家の前当主である。

次話明日0時更新予定です。

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