第八十三話 はじめまして、洋市さん
洋市が久しぶりにステータスを確認すると、色々と新たな発見があった。
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[種族]
ゴブリン(変異種)
[ジョブ]
スカウト(斥候) Lv.36
[体力/魔力]
8,400 / 4,400
[スキル]
隠形 Lv.1 : 自らの姿を隠し、人間や魔物から見えなくする(明るい場所では難しい)
夜目 Lv.4 : 光がまったくない場所でも、周囲の風景を大まかに認識できる
盗取 Lv.3 : 相手に気付かれず、モノやスキルを盗むことができる(確率30%)
毒爪 Lv.7 : 爬虫類に効果的な毒を、自分の爪から出すことができる(致死率70% / 攻撃回数)
※(爬虫類以外にも効果があるケースもあるが、効きは悪い)
風刃 Lv.7 : 爪を立ててチョップしたり、爪で空気を引っかいたりすることで、風の刃を飛ばせる
身体強化 Lv.5 : 筋力・瞬発力・耐久力・跳躍力などを向上させる(5倍)
マッピング Lv.1 : 過去に自分が行って命名した場所を簡単に確認できる
※(マッピング箇所を増やすことでレベルアップ)
うわばみ Lv.2 : 陰蛇時、消化スピードが早まる
蛇睨み Lv.1 : 陰蛇時、目が合った相手の動きを止める(効きは互いの強さに左右される)
咆哮 Lv.1 : 陰蛇時、咆哮によって強烈な殺気を周囲に放ち、相手の動きを止める(効きは互いの強さに左右される)
[魔法]
○毒魔法 : 魔物が使用する毒を、魔法の形で魔力を消費して発動できる
○毒魔法リスト
・エビルスクワロルの「爬虫類毒」
→爬虫類特化型の神経系毒。他の種族でも毒は回るが、身体がしびれる程度に効果はとどまり、命を奪う効果は期待できない
・ゴブリンの「酸毒」
→モノを酸化させて使い物にならなくしたり、生物の身体から水分を奪ったり、激しい痛みを与えたりできる毒を爪から出すことができる
→イメージによっては、毒霧のように口から噴射することもできる
・ピロウリザードの「弱体化毒」
→対象の耐久力を下げ、物理、魔法、特殊能力等の攻撃を通りやすくする
・宝箱の「罠毒」
→これまで自分が覚えた毒魔法を、特定の物体または空間に充満させることができる
・セミーンの「催涙毒」
→対象の呼吸器官の機能を停止させる毒を使い、行動を一時停止させることができる
→獣人種、人間種、エルフなど、肺呼吸主体の呼吸器官を持つ種族、臭いに敏感な種族に効果的
→ゴブリン、オークには特に効果的
※(その他の毒は、レベルアップで覚えるほか、実際に自分が毒を受けて覚えることもある)
[変身時間]
3000/3000 分
[特殊スキル]
勇気の欠片(中): 日本とアルトヤ界を行き来するためのエネルギー(10/10)
勇気の欠片(小): 日本とアルトヤ界を行き来するためのエネルギー(9/15)
スキル解説(中): 現在自分が取得しているスキルの概要に、一部解説が追加される
変化:陰蛇 陰蛇の姿に変化できる
変幻:陰蛇状態の際、体長を数十メートルから数十センチ(手のひらサイズ)まで、魔力を消費して自在に伸縮・変化させることが可能になる。一回あたりの消費魔力「200」
人間離れ:魔物や怪異、神々や悪魔など、人ならざる者とのコミュニケーションが可能になる
[人間味]
75/100 : 人間寄りの思考・嗜好
[所持金]
9,700,000メル(ギルドカード内)
[持ち物]
黒鉄の堅鉈、導魔のダガー、マジックバッグ(筒型・大)、各種ポーション、水魔法
[ステ―タス開示状況] 10項目
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『いや特効なのかよ』
洋市はセミーンの毒が自分にとっての特効と知り、随分ニッチな毒だという感想を抱いた。
また、久しぶりに自分のステータスを確認し、開示項目が増えていたことに驚いた。
『自分が購入した持ち物が増えてる……水魔法って……?なんで持ち物にあるんだっけ?』
洋市には色々と疑問が残ったが、ふと、以前確認したとき、持ち物欄にあった『毒魔法』の表記が消えていたことを思い出した。
『魔法を覚える可能性について、アイテム(スキル候補)として一時的にストックされている、ということだろうか』
確信はないものの、いったんは無理やり納得することにした洋市であった。
『まずは毒魔法の説明だ』
毒魔法の説明をステータス画面で再確認し、セミーンに説明する。
「セミーンさんの毒は、敵の呼吸器官の機能を停止させる毒みたいで、行動を止められる効果があるようです。ええと……獣人種、人間種、エルフ、その他臭いに敏感な種族に効果的、とのことです」
へえー、と声を出すセミーン。
説明を読みながら、洋市はゴブリンに特効がある話をさりげなく濁した。
一方でガッタは警戒心をあらわにする。
「それ実戦で使われたら、俺が使い物にならないなー」
セミーンが反論する。
「一応指向性はあるから、使うタイミングでガッタが俺の前にいなけりゃ使えるさ。動けなくなったところで首を刈ってくれりゃあいい」
「うーん、ワンテンポ追撃のタイミングを逃せばいいかな?」
マンナも面白そうなスキルと判断して案を出す。
「そのスキルをノアの風魔法で広範囲に飛ばしてから戦えば、群れを相手にするときは楽かもね。もっとも、アンデッドには効かないだろうけど……」
ノアはむしろ、洋市が自分のステータスを気軽に確認できることについて妄想が止まらない。
『やっぱり魔王の呪いは格別……あ、いや特別なのかヌヘ?ギルドや教会にお金払わなくてもスキルの詳細がチェックできるとかヌヘ便利!でも他の人のは分からないのかな?分かるようならヌヘ貴重!これはもう洋市を我がパーティーに……ヌヘヘ』
怪しく妄想にふけるノアの様子と、他のメンバーたちの反応を見ながら、洋市もまた冷静に考えていた。
『罠毒ってのは、結構使い勝手が良さそうだ。例えば敵から逃げているときに、毒を詰めた瓶を投げつければ動きを止められるかもしれない。一見部屋に逃げたと見せかけて、閉め切った部屋に毒を充満させて、自分は蛇になってダクトから逃げる、なんて方法も取れるかもしれない』
世界を股にかけるステルスゲームの主人公の姿を思い出し、自分もいよいよスパイのようなことができるようになったな、などと妄想気味に考えていると、洋市のお腹が鳴った。
その音を聞いて、アサンの水源メンバーも自分たちのお腹を触る。
マンナが誰にともなく言う。
「ちょっとお昼にしない?せっかく結界張ったし、効果が終わるまで何か食べましょう」
全員がマンナの意見に賛同し、一行はバッグから保存食と水筒を出すのだった。
一時のリラックスタイムをはさみ、結界の効果が切れる頃、一行は身支度を整えて再び廃墟を奥へと進む。
街道を奥へ奥へと進んでいくと、やがて街の外れにすっかり荒れ果てた、しかしかつての威容をしのばせる大きな教会が見えてきた。
マンナが推測を疑問調で口に出す。
「この奥……ひょっとしてフロアボスがいるのかしら?」
「第二層でか? ないと思うが……そんな感じのプレッシャーはあるな」
セミーンは否定するが、その勢いは弱い。
洋市は、言葉の響きからゲーム用語の階層ボスのことだろうと推測した。
しかし、念のためこの世界での定義を確認しておく。
「フロアボスって何ですか?」
ノアが答える。
「普通のダンジョンは、もっと奥まで下りないといないんだけど、階によってはその階のモンスターを束ねるクラスの強さを持つ“ボスモンスター”がいるの。でもこのダンジョンはできたてだから、ひょっとしたら階層が浅いのかもね……」
ノアの推測を聞いて、洋市も得体のしれない不安を感じたが、ガッタが場を引き締める。
「こういうのは、まず行ってみてから判断しようぜ。最悪逃げればいいんだからよ」
そう言って、ガッタは札を一枚バッグから出す。
「ヨウイチさんと買い物に行ったときは、ダンジョンアタックなんて想定してなかったから買わなかったけど、道具屋にはダンジョンから出られる魔法が込められた札が売ってるんだ」
納得した様子で洋市は頷いた。
他の面々も同様に頷き、隊列を組んで荘厳な雰囲気の扉の前に立つ。
「開けるぞ」
セミーンの声とともに扉が開き、一行が明かりのついた誰もいない会衆席に陣取る。
すると、勢いよく後ろの扉が閉まった!
「「「「「!!!」」」」」
五名が急な事態に戸惑いを隠せないでいると、目の前の内陣にある祭壇前に黒い影が現れ、やがて影は小さな女性の形を取る。
そこには、狂気をはらんだ赫く煌めく瞳の、頬が真横に裂けんばかりの歪な笑顔を見せる、いわゆる“地雷系女子”がいた。
「はじめまして、洋市さん」
洋市は、今まで見たことも会ったこともない女性からの言葉に、背筋を氷点下の風が優しく撫でるような怖気を覚えた。
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