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☆第二章本編完結済/120話突破☆【ゴブリンマン】~40代限界フリーランスはゴブリンになっても人間味と仕事が欲しい~  作者: 広瀬
第二章 ゴブリンマン活躍編

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第八十話 心霊現象と機能追加

 亜希のシャワーの音で、エミは目を覚ました。


「……んっ、んんーっ……よく寝たわぁ……」


 背伸びをした後、暗い部屋を明るくするためカーテンを開ける。

 レースカーテンはそのままにしつつ、窓から周囲の様子を窺う。


『……考え過ぎか。さすがにここには戻ってこないはず』


 空のビールやチューハイ缶、おつまみの袋が放置されているローテーブルを片付けようとしたとき、ふとエミは妙な気配を感じた。


『なんか寒い……10月だから当然だけど、どっか窓開いてたりするのかな』


 記憶はないが、酔っぱらって窓を開けてしまったのかもしれない。

 そう思ってエミは寒さの元凶らしき窓の近く、開けっ放しの亜希の部屋までやって来た。


『うーん、別に窓が開いてるわけじゃ……!!?』


 亜希の部屋で、エミはこれまで見たことがない人物の、苦悶の表情が壁に映っているのを見た。


『ひっ……!!』


 部屋にある、男性アイドルグループ「Surfboyz」のポスターの横、何も貼っていないはずの壁には、マーブル状の溶けた三人組の男の顔が、ホログラム映像のようにぐるぐると回っている。

 プロジェクターか何かが動いているのかと辺りを調べるが、それらしきものは何もない。


 亜希を呼ぼうとするも声が出ないエミだったが、後ろでシャワールームのドアが開く音がすると、苦悶のホログラム映像は一瞬で消えてしまった。

 少しして、インナー姿の亜希がリビングに戻ってくる。


「ふー……あっ、おはよう! ……何かあった?私の部屋」


 エミは亜希の声に一瞬背中を震わせたが、すぐに亜希の方を向いて神妙な面持ちでアドバイスする。


「亜希ちゃん、悪いことは言わない、ここすぐに引っ越したほうがいいよ!」


 青ざめた顔で提案するエミの様子を見て、亜希は自分の部屋に何か異世界に関係するものがあっただろうかと、少し不安になる。


「エミちゃん……?」


「私、自分が霊感持ってるとは思ってなかったんだけど、この部屋、何かいるよ!」


「えっ!?ど、どこに!?」




「そこのポスターの横!人間の顔みたいな……青白いような、黒いような、ホログラムが……」




 そこまで聞いて、亜希は直感した。


 異世界の、魔王の、何かだ。


 青白黒のマーブル。


 翔が洋市さんと戦っていて、そこから逃げてきたときと同じ。




 冷や汗が流れ、背筋が凍る。


 昔の亜希なら取り乱していた。



 しかし、今はエミという友達を、何とかして守らなければならないと覚悟した。



『……大丈夫、エミちゃんは傷つけさせない!』



 頭の中で即座にシナリオを練り、エミに本当のことを悟らせないように動く。


「えー!? そんなこと聞いたらこの部屋で眠れない!」


「いやホントだってアキちゃん、あのクソ彼氏の件も、ひょっとしたらこの部屋のせいじゃない!?」


「そうかな……そうかも! 原因分かってよかったぁ! ありがとうエミちゃん!」


 さりげなくエミへの感謝を混ぜ込み、引越しするならどこがいいかとか、職場に近い場所を選ぶかとか、話を盛り上げる亜希。

 内心では、不審さを嗅ぎ取られないかと不安を抱く。


 エミとしては純粋な親切心で言っているので、案の定、本当に少し心配そうな顔をしていた。

 しかし、亜希が今日出勤日であることを思い出し、今日のところは帰り支度をする。


 玄関で、亜希とエミは軽くハグし合った後、別れの挨拶を交わす。


「じゃあ、本当に気を付けてねアキちゃん。私火曜出勤だから、それまでに何かいい物件調べとく」


「ありがとう……とりあえず私、髪乾かしたら部屋に塩撒いて掃除機かけて換気するわ!」


 うんうん、と、何の解決にもなっていないような話をしつつ、二人は玄関で別れた。




 一人になり、特大のため息をつく亜希。


『……洋市さんに何かあった?でも、魔物が自宅に入ってこなかった、ということは、そんなに深刻じゃないのかな』


 アルトヤ界の状況を少しでも把握しようと、亜希はアプリ『アルトヤ界観光ガイド』をチェックする。

 お知らせのアイコンには「2」の数字が表示されており、通知を確認する。


「……うわっ、これ、すご」


 表示された通知を一つひとつ確認すると、また亜希たちの収入源が増えるような機能が搭載されていた。


 ▶新機能『外為交換機能』が追加されました!

 ▶ギルドカードに入金されたメルを、現代日本で円に両替できます

 ▶通貨レートは『1メル=1円』の固定です

 ▶他の国の通貨を得た場合は、その通貨のレートも円換算されます

 ▶アプリ内口座への移動時は、金額に応じて手数料が発生します


 ▶新機能『異世界チャット』が追加されました!

 ▶対象者:ヨウイチ、アキ、ノア(ビデオ通話)

 ▶ヨウイチのタブレット、アキのスマホ、ノアの魔法を使って、アルトヤ界観光ガイド内でチャットできます

 ▶注意点:ヨウイチのタブレットに『アルトヤ界観光ガイド』のダウンロードが必要です


「異世界で稼いだお金を、日本円に換金できる……ってことは……ウソ!?」


 亜希はすぐさま、異世界で購入したポシェットの中から自分のギルドカードを見る。

 数字が分からないので、スマホのカメラとアプリを使って翻訳すると、今もなお【12,700,000】と数字が表示されている。


 今まで口座に入れたことのない金額を見て、意識が飛びそうになる亜希。


『……これ、Cheers!で働かなくても……いや、ずっと続けられる仕事ってわけじゃない!』


 さすがに異世界と現代日本の往復ばかりを繰り返す未来は無理があると、亜希は意識を現実に戻した。

 しかし、当座はお金の心配はなさそうだと分かり、深呼吸をしながら心を落ちつける。


『いったんチャットで洋市さんに相談したいけど、洋市さんが使ってるタブレットの仕様とか分かんないんだよねえ……』


 今のところ、洋市のタブレットにアルトヤ界観光ガイドはダウンロードされていない。

 そして、亜希にはもう一つ気になることがあった。


『ノアさんが使う魔法に関してはビデオ通話らしいけど、これってどういうことなんだろう?機能の幅が全然想像できない……』


 とりあえず、彼が帰ってきてから詳細は相談することにして、亜希は身支度を済ませた後、昼食を外でとることにした。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

ページ下部からの評価(☆)、ブックマーク、ご感想など、いつも大変励みになっております。

これからも『ゴブリンマン』をよろしくお願いいたします。

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