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☆第二章本編完結済/120話突破☆【ゴブリンマン】~40代限界フリーランスはゴブリンになっても人間味と仕事が欲しい~  作者: 広瀬
第一章 「ゴブリンマン」誕生編

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第二話 ゴブリンと隣人と幻聴と

※冒頭部の説明が不足していると判断し、一部加筆しました。

※説明が第一話と重複している箇所、不自然な箇所を削除し、一部修正しました。

※字下げを実行しました。

 紫色の空と、ひび割れたこげ茶色の台地。

 明らかに夢うつつと分かる風景の中、洋市の意識は奇妙なほどはっきりとしていた。


【イセカイノ タマシイ カ】


 見上げるほどの巨体。

 頭から二本のねじれた太い角を生やし、黒ずくめの毛皮を纏った異形の存在、おそらく“魔王”が洋市を見下ろしていた。

 “勇者”の姿は、今のこの空間にはどこにもない。


(なんだこれ。明晰夢ってやつか?)


 洋市はフリーランス特有の図太さで、目の前の圧倒的な存在を冷静に観察しようとした。

 しかし、声が出ない。

 重い金縛りに遭ったように、指一本すら動かすことができなかった。


【強キ意思モ 気高キ使命感モ持タヌ 矮小ナ 魂】


 何だか不遜な物言いで馬鹿にされていると感じた洋市だが、それを言葉にはできない。

 魔王らしき存在が続ける。


【ダガ ソノ底ニハ 世ニ見放サレ 這イツクバッテデモ 足掻コウトスル 泥臭イ執着】


 魔王の赤い瞳が、洋市の内面――動画や新しい波に乗り遅れ、時代に取り残されつつある焦燥感や、孤独なフリーランスとしての鬱屈とした感情をすべて見透かすように光る。


【時代ノ残滓ニスガリ 泥水ヲススル 暗闇ノ弱者 ソレガ オマエノ 本質ダ】


(勝手なことを!こっちは一人で真面目に確定申告もして生きてるんだよ)


 声にならない反論を試みる洋市に、魔王は嘲笑うかのように巨大な手を伸ばした。


【オマエニ フサワシイ スガタニ シテヤル】


 魔王の指先から放たれた紫色の光が、洋市の身体を激しく包み込む。

 熱い。痛い。

 骨が軋み、肉が作り変えられるような得体の知れない感覚に、洋市はたまらず声を上げ――。



 ───────────



 夢から醒めた後、窓から差した目を焼くような朝日に、たまらず洋市は起き上がった。


「今日はずいぶん朝日がキツいな、寝覚めも悪い」


 たまらず洗面台へ向かい、鏡の前に立った洋市は――。



「とりあえず、今日が納期の案件はなかったはず……。いや、そういう問題じゃない」


 今、鏡の前で、己の変わり果てた緑色の姿に直面し、ただ混乱しているのであった。


 体感で5~10分ほど呆然とした後、洋市は何とか現実を受け止めようと、自分が何者になったのか調べようとした。


「そうだ、俺の姿を写して、その写真を検索してみよう」


 そう思ってスマホを持ってみたものの、爪が長いせいでフリック入力もおぼつかない。

 何とか撮影に成功し検索すると、検索結果はAIに要約され、次のように表示された。


 [こちらは異世界系コミックで登場する代表的な雑魚キャラ、**ゴブリン**のコスプレをした男性の画像ですね。細部までこだわるため、全身をビリジアンに塗りつぶし、爪や耳も付け爪・特殊メイクで仕上げています。非常に質の高いコスプレといえるでしょう。]


 洋市は思い出した。

 ゴブリン。

 そうだ、そんなモンスターがいた、確か。


「いやそうじゃねえのよ」


 問題は、今、現在、俺がそのモンスターになっていることだ。

 どうしてそうなったのか、おそらく昨日の夢が原因だったとして、これをどうすればいい?


 今月は10月だから、ハロウィンを理由にある程度はやり過ごせるかもしれない。

 にしても、今日は2日。

 あまりにも時期尚早。


 混乱した頭で、洋市はとりあえず考え続けた。


「とりあえず今は対面の仕事はないからいいとして、この状況を何とかしないと。いや、そもそもこれを記事にしたら絶対バズるよな」


 どうやら、思ったよりも自分はポジティブな性格をしていたようだ。


「とりあえずSNSに自分の姿をアップするか、タイトルは……毎日ゴブリン生活とか?」


 そう思いながら将来を想像すると、やはりこのままでいるのは非現実的だということに気付いた。


「……いや、日常生活に絶対支障をきたすだろこれは。警察にマークされるだろうし、最悪拉致されてサーカスで働くことになるかも……」


 正直に事態を説明したところで、誰も納得してくれないのは目に見えていた。

 とりあえず、何とかしてこの変身を解かなければならない。


 驚きから少しずつ冷静になってくると、何となく家の中が明るすぎるように感じてきた。

 ゴブリンについて洋市は詳しく知らなかったが、そういえば洞窟で暮らしている種もいたはずだと、頭の片隅にある知識を総動員して考えた。


「道理で目が焼け付くように眩しいわけだ。」


 状況はまったくつかめていないが、とりあえずこの身体をどうにかしなければ、日常生活も困難になるだろう。

 そのためには、もう一度あの秘境駅にあった“揺らぎ”を探してみるしかない。


「……せっかくなら、目立たない夜に行ってみようか」


 おそらく、終電に乗ってアクセスしなければならず、あの“揺らぎ”が見つからなければ誰もいない駅で一夜を過ごすことになる。

 しかし、こんな姿をしている奴を熊も襲わないだろう。


 そんな風に、楽観的に洋市が考えていると、隣の部屋から物音がする。

 どこか剣呑とした物音が。


 ネタを探すブロガーとしての本能なのか、はたまたゴブリンになって耳聡くなったのか、洋市は壁に尖った耳をつけてみた。



『………もうやめ……ださい!私は………と別れたんです!近づかないでください!』


『……に何言って……。………分からせないと………な。お前が俺の……を害する……』



 洋市はケンカだと理解できた。

 それも、彼氏側がDVをしているクソのタイプで、彼女はこのままだと殺されるかもしれない。



 ──関わるな、今の俺はこんな姿で、かえって問題になるかもしれない──



 そう息を殺しながら、警察に電話すべきか考えていると、瞬間、頭の中に声が響いた。



【ソレガ オマエニハ オニアイダ】



 ……は?



【オマエハ モウ ダレニモ ヒツヨウト サレナイ】



 ……何だ?



【オマエ カラ ミンナ ハナレル】



 ……何だと?



【オマエノ コトニ ダレモ キョウミナンカ モテナイ】



 ……誰だ?



【オマエニハ ソノスガタガ オニアイダ】



 ……どういうことだ?



【オマエハ ダレカラモ アイサレナイ】



 ……なぜだ?



【オマエノ シゴトハ ダレカラモ ヒョウカサレナイ】



 ……どうしてそう言える!?



【オマエハ フツウノ シゴトガ デキナイ】



 ……うるさい!!



【オマエハ イツカ ナニモカモ ウバワレル】



 ……お前に何が分かる!!



【オンナヒトリ タスケラレナイ】



 ……ふざけやがって!!



【テイヘン ダナ】



 洋市は、頭の中から聞こえてくる言葉が、夢の中に出てきた魔王のものではないかと疑った。

 しかし、日に日に落ち込む収入と、孤独の中でもがく日常が、自分にそのような声を聞かせたのだと思い直した。


「……やってやる、やってやるぞ。化け物の姿だからこそ、誰かを助けられることもあるかもしれない。後のことなんで知るか!」


 このとき、洋市は気付かなかった。

 普段の自分なら、絶対にそんな無茶な考えなど起こさなかったことに。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

ページ下部からの評価(☆)、ブックマーク、ご感想など、いつも大変励みになっております。

これからも『ゴブリンマン』をよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
人間の本質は危急の時にて試されるといいますけど、主人公は悪くない意味で発揮されたようですね…。 これからゴブリンという要素でどうなっていくか…。
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