勇気を出す、背中を押す
「なんで、先延ばしにしないほうがいいんだ?」
「……ハッキリ言うけど、BSSになってしまうと思うんだ」
……一応、この話って成人向けの作品とかにある……らしい!けど
普通に全年齢向け作品でも、起きるんだよな
超大嫌いな展開であるBSSが
「びー?えす?えす?
なんだそれ?
そっちの世界の言葉で言わないでくれ」
「ああ、そうだったな、わりい
今のBSSは略称で略さないで言うと『僕が先に好きだったのに』って言葉なんだ」
「……なんか嫌な感じのする言葉だな」
「ああ、本当にな」
略称って言ったけど、この世界でローマ字とかの変換とかの説明は難しい
この辺りは言わなくていいだろう
「俺の世界にある物語とかである展開なんだけど
例えばで……」
一瞬身近の人を例えようとしたけど
流石に俺も嫌だしセメリさんも石を投げるほど嫌な事だと思うしやめておいた
「ある村があって、その村では……そうだな
疫病が流行っているとする」
「うん」
「疫病の原因は近くの山にある魔物が振りまいている状態だとしよう」
「そいつは、村人には倒せないのか?」
「そうだな……故郷を離れなれないから住んでいるけど、日々魔物が撒いている病気で弱っているとしよう」
「それは、確かに戦えないな」
「ヒューラルで言う所の領主様やギルドマスターのような非常に強い人も村にいない」
「誰も戦えないな、詰んでるって奴か?」
「その通り
俺が現世で読んでいる物語では時折ある展開なんだけど
主人公である勇者様御一考がそんな街にやってきて、その様に困っていることを聞いて
ちゃんと優しい対応をして、原因となる魔物を倒すことができました
って話になるんだよな」
「ああ………それとびーえすえす?が何の関係があるんだ?」
ここからが、重要なことになってくる
真剣な顔つきになり、声をワントーン落として話し始めた
「もちろん、ただ勇者が解決して
村から感謝を告げられて終わる……それだけならいいが
物語ってシンプルに出来てないんだよな」
「てゆうと?」
「その村で
例えば女の子と男の子がいたとしよう
男の子は女の子が好きだけど女の子が男の子を好きかは分からない
そんな関係の2人がいるとする」
「俺とシキギのような感じか?」
「いや、自分達で例えないほうがいい
後で嫌な気分になるし、俺も俺と玲香で例えないから」
「え?ああ、分かった」
1回深呼吸をして、自分の心も整える
「そんな、片思いっぽい気持ちを抱えている状態だったけど
勇者が来てちょっとした交流があって、そして後々に村を救うのでした」
「うん」
「そうしたら、男の子からしてみて女の子の様子がおかしいと思いました
どうしたのか聞いてみると『勇者様が好きになった』と話していました」
「は?はぁ!?」
「そんな片思いをした相手は勇者
実際問題、村で困っていたことを助けたのは勇者だから
すごい助かることをして好きになるってのも、なんとなくは分かる
……オエ
男の子が自分に振り向かせようともどうすることができない
そのまま、勇者達について行きたいと去ってしまう展開もあったし
……おえ
村に残ったままだったとしても、男の子の事は一切眼中に入らず心ここにあらずな状態になってしまう」
やばい、話していて非常に気分が悪くなってきた
伝えている最中なのに胸やけがすごい
「嫌な気分になる話だな……ってかソラアミセント大丈夫か?
吐くならあっちにして欲しい」
「いや、これぐらいは水を飲めばダイジョェブだ」
本当にやばくなった時はセメリさんの指した排水溝に吐くことにしよう
「大丈夫かよ……」
「ああ、話をつづけるけど
その時の勇者は普通に村を解決しただけだし、言ってしまえば何も悪くないんだ」
「それはもちろん分かっている」
「でも唯一『そうならないために』って方法があってな……」
「それが……勇者が解結する前に告白すればよかったってことか?」
「そのとおりだ」
告白をすれば、女の子は男の子が自分を好きなんだってことを知る
例え返事を保留にされてしまったとしても、その状態で別の人が好きになるって事は少ないだろう
それで別の人が好きになるってなってしまったら、むしろ簡単に流される人なら別の人を見つけたほうがいいと思ってしまう
「シキギは……」
「ん?」
「シキギは、誰かの事を好きになるのだろうか?
もしくは、俺に対してどう思っているのだろうか?」
「それは本当に分からない
シキギさんは実はセメリさんの事が好きかもしれないし
恋愛の事を何も考えてないかもしれないし
もしかすると、品子さんや蜜巳さんが相談を受けているのかもしれないな」
「2人には聞けないのか?
……いや、聞かなくていいけど」
「ああ、女の子同士のプライベートに踏み入るわけにはいかないし
恋愛の事を聞くつもりはない
セメリさんは男らしいから、聞かないのは分かったけど
もし聞いて欲しいって言われても、俺は絶対に聞くつもりはない」
実を言ってしまえば シキギさんを女性陣に任せていたのは仲のいい様子を邪魔したくないのはガチで事実だけど
シキギさんが外部から来た人に惚れるなんてことは絶対にないし、自意識過剰なのは分かってはいるけど
シキギさんだけでなくこの世界で出会った人たちが自分に惚れたりしないように、深くかかわらないように意識して行動している
俺には玲香がいるし相手が告白してきたら絶対に断るつもりしかないけど
それでも告白を断る以上、相手を傷つけることになるし
そう言った役は絶対になりたくない
……予防線とか張りまくっててダサいな
「まあ、ソラアミセントがそういった人なのは知ってたよ」
「俺は湖の事が終わってひと段落ついたら王都に帰る予定だ
俺たちがヒューラルを去ったとして、それでもシキギさんが誰のものでもなかった場合はまだチャンスがあるけど
その後は成長したり何かしらの職業に入ったりして大人になって……シキギさんはいろんな人に会うだろう
告白をして結ばれたらいいけど、言わなかったら……そのこれから出会う人にシキギさんが惚れてしまうかもしれない
シキギさんがセメリさんの事が好きって可能性もあるし、シキギさんから告白をする可能性だってあるけどそれは博打だ
そんな中でBBSのリスクを聞いたうえでシキギさんに告白をすぐに出来るか?
今日とかじゃなくて、せめて俺達がヒューラルを去る前に」
「……」
セメリさんは無言で考える、塀に囲まれているこの場所
外には人々が歩いているはずだけど誰もいなく感じる
街の外で響いている風の音だけが聞こえてくる気がする
「……そのビービーエスにならないように先延ばしにしないほうがいいんだろ?」
「ああ」
「……なんでだろうな」
「……」
「……そこまで聞いているのに、怖いって気持ちがまだあるんだ
告白って、死ぬよりも怖いだな」
死ぬよりも告白が怖い……異世界基準だけど
何とも不思議な比較なんだろうか
「……ソラアミセント」
「どうした?」
「最後のなにか、もう1つ最後の一押しになることを言って欲しい」
「えっ!?」
「迷っている気持ちはあるけど、ソラアミセントに相談して結構楽になった
けど、まだなんか足りない感じがするんだ
だから、何か言って欲しい
何なら強い言葉でもいいんだ」
「えっと……ちょっとまって」
どうしようか?急にこんな無茶ぶりを受けるなんて思わなかったな
でも、思い浮かぶことは言ったしあとは何を言えば……そうだ!
「じゃあ、最初に言ったことを撤回するようなことを言うけどいいか?」
「最初に言ったことを撤回?何のことだ?」
そういって、俺はセメリさんの持っている黒板をそっと手に取った
「じゃあ、この依頼を条件とか色々と変えて受け取ることにしよう」
「え?相談じゃなくて依頼になると?」
「ああ、けど逆だ
俺が依頼人でセメリさんが冒険者だけどな」
「え?なれるのか?年齢が足りないのに?」
「今だけの臨時みたいなものだ、ちょっと書き直してもいいか?」
「構わないけど……」
そう言われて、俺は書き直す
セメリさんがポケットにチョークや小さな黒板消しを持っていたのでそれらを利用する
そうして書き終わった後、それを見せた
……ある程度依頼書を見ていたから書き方もなんとなく分かる
「じゃあ、これでよろしく」
「えっと……『俺がシキギに告白する依頼』で
報酬は『湖の原因を明らかにする』
って、は!?」
「まあ、俺の世界にあった物語でも
こういった粋な依頼をするなんてシーンがあってな
ちょっとやって、みたくなったんだ」
「いやいやいやいや!?
やる事の依頼としては余りにも破格すぎないか!?
いいのか!?」
「いやいや、元々湖の事をやろうとしていたし
実質無償なことをしようとしていたんだ
そこに報酬って形を追加しただけなんだ」
「う……まさか、逆に言うと
俺が告白しないと湖を治さないって事か?」
そう考えてしまうか……だったら
「いや、セメリさんが告白しようとも告白しなくても
俺たちは、湖に行く」
「それだと、依頼した意味はあるのか?」
「依頼にはな、ちゃんと依頼をしなかった時に
達成できなかった罰みたいなもので、お金を払わなきゃいけないとかあるんだ
違約金って名前があってな」
「じゃあ、俺がお金を払わなきゃいけないってことなのか?」
「それは流石にできないな、まだ働けない年齢でそれはできない
だからお金とは違った形で罰をする」
「何をするんだ?」
「それはな……」
相手は子供だ、だからこそ思い切ったことを言わせてもらう
「俺らが帰ってきた後に告白で来てなかったら、セメリさんの両親にそれを伝えることにする
俺のいる世界で言う所の『チクる』ってことをする」
「なっ!?チクるって……それはっ!」
この世界にはチクるって言葉があるんだな
申し訳ないけど反応が面白く思ってしまった
「もしかすると、セメリさんがシキギさんのことを好きってことを知っているかもしれないけど
そうだったら今した相談の事もいう、なかなか言い出せないことを両親に話すことに……」
「くあぁ!!?」
なんかダメージを受けているけど、最後の一押しとしてはちょっと強すぎたかもしれない
けど、告白したい気持ちがあるなら全力で背中を押させてもらう
それも転んでしまうぐらいのレベルで
「言うな!分かった!確かに最後の一押しっていたけどそこまでしろとは言ってない!」
「結果としては、ほとんど強制的な形になってしまったけど
でも俺が『セメリさん自身が告白できるようにする』最大減の譲歩なんだ」
「……っっっ…はぁ
分かった!やるよ!
今日は難しいけど!」
「セメリさんが大きく前進できて本当に良かったよ」
本当に良かった、これで明日にでも告白してもらったら……
「……んで、その湖の原因を探すのって、いつになるんだ?」
「分からないな、でもギルドマスターの方では準備は終わっているし後は領主様の準備が終わり次第だから、本当に明日にでも行くかもしれない」
「そうか……少なくても明日か」
「心の準備を1日置いてからがいいかもしれないな」
「分かった頑張ることにする
だからこそ、今日相談したことは誰にも秘密な!」
「もちろんだ、男同士の大事な約束として
俺たちが湖の依頼をして、そのご褒美としてよろしくな」
そう言って今回の相談は終わった
これで2人がのちに付き合ったらいいけどな……
ギルドに変える最中に黒板をセメリさんから「これ、返してもらっていいか?」と貰って俺はそのままギルドに、セメリさんは自宅に帰っていた
……
……
ギルドに帰った後、今回は結構早めに終わったのか
品子さんと蜜巳さんとタスメさんが待っていた
綺麗にした黒板を戻しつつ3人と合流する
「お帰り千斗ー!」
「お帰りなさい………」
「千斗、お帰りッス」
「ただいま」
「千斗は今日もガーゴイルだったの?」
「いや……そうじゃなくて」
セメリさんとの約束だ
3人だったら分かってくれるだろう
「今日依頼を見渡していたら、セメリさんがいてな」
「えっ?
セメリさん……………何か依頼したがっていたのですか?」
「そうではあるんだけど
内容は男同士のプライベートな事だったから、話せない」
「プライベートッスか、それだったら深くは聞かないッス」
「でも!そんな2人でしかできない話ができるなんて、すっごく仲良くなったみたいで良かったよ!」
「私たちも………シキギさんにいっぱい…………遊びを教えられて良かったです
…………今日は依頼でしたが」
お互いに充実した1日を終えたらしい
今日も依頼が順調に終わったとして、そのまま宿に行こうとした時
「勇者様方!お待ちください!」
「えっ!?」
カウンターにいたはずのギルドの受付嬢さんが近くまでやってきていた
え!?どうした急に、こんなにもガツガツ来るもんだったっけ?
「要件が2つあります
まず、これまでの功績が実り
ランク2に昇格しました」
「本当に早いな!ありがとうございます!」
嬉しさと驚きでちょっと大きい声が出てしまった
「やったぁ!」
「……よかった」
「嬉しいッス!」
「ああ……それで受付嬢さん
もう1つの要件とは?」
「できれば今すぐギルドマスターに会っていただきますか?
昇格の手続きはその後にします」
「手続きを後回し…………」
これは……もしかしてついに準備が?
さっきまで喜んでいた3人も今の事を聞いて察したのか真剣な顔つきになった
「分かりました、ではギルドマスターの所へ行ってきます」
「はい、行ってらっしゃいませ」
そう見送られながら階段を上がっていった
これはいよいよ、湖の事が解決に向かうことになるのだろうか?




