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勇者はいる、主人公はいない  作者: 虹鳥
第1章・のどかな草原トラストリン

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準備は終わる、その日が来る

何度目になるか分からない階段を上がっていく

いつになっても所属しているギルド「風のたまり場」のギルドマスターに会うのは緊張してしまう

1段1段のの階段がいつもよりも多く感じてしまう

けど、この街で信頼される時のように

1歩1歩と確実に進めて行くような気分

今では街で怯えられることは無くなった

1番信用されてなかった人とは、秘密の恋バナをするぐらい仲良くなった

短いようで長いような時間

けど、いつかは終わりが来る

元々の目的があるけど、それ以上に大切で

勇者らしさとかではなく、心から思う「救いたい」気持ちで

現状を良いものにして行きたい

思っている内にギルドマスターの部屋前にたどり着いた、数回ノックをする


「失礼します」

「待っていたぞ、さあ入って欲しい」


そう聞いて入って行った、中にはギルドマスターと

想像通り領主様がその場にいた


「あ!領主さん!」


元気いっぱいに声をかけた品子さんの様子を見て、領主ツキウス様は深々とお辞儀をした

……立場的に逆な気がするけど、気にしないでおこう


「勇者達よ、この度は本当に多大なるご迷惑を……」

「領主さん!」

「うぉ!?なんじゃ!?」


あら、これはもしかしていつものが……?


「ごめんなさいはもう言わなくていいの!

代わりにね!湖の事も何とかするからその時に『ありがとう』って言ってね!」

「わ……わかった」

「ははっ、親父は随分と押されているな」


相手が上の立場であったけど、品子さんのいい意味で勢いのある問答で緊張感のある場が和んで本当に良かった

さて、真面目な話も聞かないと

部屋に入ってきた俺たちは、以前のように椅子に座っていった

ギルドマスタースイトと領主ツキウス様は前方の椅子にそれぞれ座っている形で話し始めて


「勇者達よ、紆余曲折あったが

ようやく、こちらの準備が整った」

「つまり、以前に試着したガスマスクの事も

領主様の『街を観る』ことも終わったという事ですね」

「ああ」


そう、堂々と頷いていたけど

ちょっと領主様の顔が明るくない?


「あの…………領主様………?」

「あっ……どうしたのじゃ?」

「何か…………ありましたか?」

「……」


蜜巳さんも気になって聞いてみたけど、余計に俯いた?


「ああ、街中に出て人々に話を聞いておったのじゃ

たしかに、娘の言う通り不満を持つ者もおったが

わしが来て直接謝罪をしたらな……

『出てくるのを待ってました』と歓迎のような事をされたんじゃ」

「歓迎………ですか」

「街の人達は待っていたことを知ったら、またも申し訳ない気持ちになってな」

「それだったら!

これからも街を観て行ったらいいよ!

ヒューラルのみんなも領主に会いたい気持ちがいっぱいあると思うから!」

「ははっ、だそうだ親父よ

湖の事が解決しても街を見て行こうじゃないか」

「……そうじゃな」


前勇者の奴らで塞ぎこんでしまった領主の心も、開かれて本当に良かった


「それで本題に戻るが、こちらの準備が整った」


そう言いながら、机の下から取り出したのは

あの薄い青色をしている首飾りがあった


「私としては、明日行けるなら今すぐに貸す

でも、今日いきなり呼び出したことだから

何日か準備が必要だったらそれでもいい

どうする?」


……明日にでも、か


「私は大丈夫だよ!」

「私も…………大丈夫です」

「俺も大丈夫ッス」

「千斗は?」

「俺は……ちょっと明後日にしてもいいか?」

「どうし………たんですか?」

「正直、最近あまり戦ってないのもあるし

一旦魔物と戦う依頼でもして準備運動をしたい」

「ソラアミセント?もしかしてセメリさんとのプライベートの約束があったりするッスか?」

「あー……」


準備運動をしたいのは事実だけど、ちょっと遠回しな誤魔化しは効かないか

でも、セメリさんには「1日置いてから」って言ってしまったから

いきなりの予定変更はセメリさんも焦ってしまうだろう


「それもあるけど、セメリさんにとある頼みごとをしたんだ

それは個人的な事だしプライベートな事だ

討伐し終わったらじきに分かるから今は置いといて欲しい

けど、準備運動したいのは事実だ」

「そうだね!よく分からないけど、頼んだことが終ってない時に湖に行っても集中できないからね!」

「分かったッス」

「それだったら、いい依頼を用意しとくよ

あの城には魔物がいるか分からないけど用心するに越したことは無い

ウォーミングアップにピッタリな奴でも探して置いとく」

「はい!ありがとうございます!」

「それじゃあ、この首飾りを貸すのは明後日でもいいかの?」

「はい、それでもかまいません!」


1つの約束をしてギルドを後にした

明後日にいよいよ本番を迎えることになる

あの湖の城にて何が起きいるのか分からない

魔物はあの周囲にはいないけど、前勇者どもが去ってもあの汚れがずっとある

汚れを出す魔物でも召喚したんだろうか?

それとも変な魔法をかけて魔物を使った人体実験でしたんだろうか?

ともかく、行けば分かるかもしれない

本日は準備に関する話が終わり部屋を後にした


「勇者達」

「はい」「ん?」「なんで…………しょう?」

「明後日は頼むッス

ヒューラルを救って欲しいッス

俺に出来るのは湖の近くに送るぐらいッス」

「謙遜はしなくてもいいよ、タスメさん

ここまでこの世界の事を教えてくださりありがとうございます

これからも、他の国行った時もよろしく!」

「もちろんッス」

「湖までいったら、あの首飾りで飛べばいいのかな?」

「しーちゃん………その前に探そう……………沈んでいるアミルクリスタルを」

「そうだったね!」


結構緊張していたけど、みんなはちょっと楽しみな気分に見える

いや、もしかすると世界平和に大きく近寄れるから嬉しい気持ちもあるのだろう

俺も緊張している所もあるけど……ちょっと嬉しい気持ちがあった

ランク2の手続きを済ませた後、ギルドを後にして

宿に行って、いつも通り会話をしながら寝て次の日に

鎧に着替えて宿を後にしてギルドに行って入っていくと


「いらっしゃいま……あ!勇者さん方!」

「おはようございます、どうしましたか?」


ギルド風のたまり場に入った瞬間に受付嬢に呼ばれた

もしかして、昨日言っていた依頼の事だろうか?


「本日、ギルドマスターより

『この依頼とかどうだ?勇者達なら今の実力なら問題ないだろう』

とおっしゃってました」


そう言われて一枚の依頼板を渡された

内容は、ちょっと街の外れに出かけて多めの魔物と戦う依頼らしい

頭数は確かに多いけど、王都セカンドルトの防衛戦に比べたらそんなに数はいなかった


「ありがとうございます!早速この依頼を受けます!」

「はい、ではよろしくお願いします」


まだ朝のピーク前だったから人も少ない

依頼版を受け取ってすぐに手続きが終わった


「千斗?何の依頼なの?」

「ちょっと街の外れに出て沢山いる魔物と戦う依頼だ

防衛戦の時より数は少なそうだし今の俺達なら大丈夫そうだな」

「分かりました…………私は弓矢もインもヨウも…………アルジも使います」

「それなら、さっそく行くッスか?」

「……ちょっと1回寄りたい所に行ってからでいいか?」

「いいッスけど、もしかしてセメリさんの所ッスか?」

「その通り」


昨日伝えたからタスメさんはすぐに分かったらしい

街の外に出る前にセメリさんの所へ向かっていく


……

……


少しの時間が立って、セメリさんとシキギさんの家にたどり着いた

家の前にはセメリさんのみが立っていて、何かジャンプなどをしてウォーミングアップをしていた


「品子さん、蜜巳さん、タスメさん」

「どうしたの?」

「どうし………ましたか?」

「どうしたッスか?」

「プライベートな話をこれからしてくるから、ここで待っててもらってもいいか?」

「いいよ!」

「待って…………います」

「分かったッス」

「じゃあ、行ってくる」


3人から「行ってらっしゃい」と見送られながらセメリさんの所に近寄っていく


「はっ、はっ、ふっ、ふっ」

「おはよう」

「はっ、ふっ……え?」


俺がいるとは思ってなかったからか、さっきまで集中していたのか少しキョトンとしている


「え?ソラアミセント?今日も依頼に来たのか?」

「いや、ちょっと昨日の事で話があってな」

「ああ、ところで……」


そう言いながら、俺の背後に目線が行く

仲間たちを見ているのかな?


「……昨日の事って、仲間には話してないんだよな?」

「ああ『プライベートな事を話した』ってだけ言った」

「知りたいとか言われなかったか?」

「もちろん、だから会話が終わって戻っても変に深く聞かれないし安心して欲しい

それに聞き耳も立てないと思うから大丈夫だ」

「それなら良かった

んで、俺の告白の話か?」

「いや、そうじゃなくて」


俺は一旦深呼吸をして伝える

セメリさんにとっても急な話になるから


「急で申し訳ない

実を言うなら、領主様とギルドマスターの準備が終わり

本日はウォーミングアップの為に戦いの依頼をする

そして、明日に湖の城に行くことになった」

「…………その深呼吸でなんとなく覚悟したけど

本当に急な話だな」

「そうだけど、でも真面目な事なんだよな

いつかは来るって思っていたし」

「はぁー……」


セメリさんはもう一度、後ろの遠くで待機している仲間たちの事を確認して

話しを続ける

絶対に聞こえないように念入りに確認をしている様子だ


「今日は心の準備って言ったけど

もう言ってられないってことか」

「まあ、そうなるな

けど行くのは明日だ、明日俺たちが湖に言っている最中に勇気を出してくれたらそれでいいと思う」

「たしかにな

まあ『いつか』ってのがいきなり明日になっただけだ

それぐらいで怯えてんじゃ『怖くない』ってのも嘘になる」

「俺達は『勇者』だ

俺のいた世界の言葉では『勇』気のある『者』と書いて『勇者』と言うんだ

俺らは湖の城に行く、何が起こるか分からないから怖さもあるけど勇気を出して行く

セメリさんも勇気を出してシキギさんに告白して、勇者になって欲しい」

「……はははっ、俺も勇者か

『勇気のある者』か

俺が勇者になったらシキギが喜ぶかもしれないな」


セメリさんが勇者か

正直、あの1年前の事件で積極的にシキギさんを助けに行ったことを考えると

俺からして見たらとっくに勇者だと思ってはいるけどな


「俺らがこの街ヒューラルを、いや

魔王を倒してこの世界を去った後は

セメリさんはこれから先の未来を守る人の1人になって欲しい

このヒューラルを守る勇者になって欲しい」

「もちろんだ、家族もヒューラルも……そして特にシキギを守ってやるんだ」

「その意気だ、頼んだぞ」

「はい!」


いつかはこの街を去る、仲良くなったセメリさんと別れもいつか来ると思うとちょっと寂しい気持ちにもなってくる

けど、子どもでありながらも街を守る決意をまとめていると思うと

本当に大人で頼もしい


「ところで」

「ん?何だ今度は?」

「なんか準備運動していたけど、どうしたんだ?」

「……笑わない?」

「真面目な事だと思うし笑わない」

「シキギの事を考えるとモヤモヤが止まらないから、体を動かしてごまかしているんだ」


でも、脅威に対しては勇者でも、恋愛に対しては年相応な模様だ


「……気持ちは分かる

もしかすると、俺が準備運動をしたいと領主様方に言ったのは

俺も実は緊張しているのかもしれないな」

「まあ、アンタらも緊張がとけるように祈っておくよ」

「ありがとうな、じゃあ俺たちは準備運動に行ってくる」

「ああ、行ってらっしゃい」


そう言いながら、3人の所に戻って行った

戻った後は「楽しそうに話していたね!」「気になりますが……………プライベートなので……………聞くのを我慢します」「じきに分かるって言っていたッスね?後で聞くッスよ」と言われながらそのまま依頼へ向かった

じきに分かる……セメリさんにちょっと悪いけど、2人が付き合ったら仲間の3人は雰囲気で分かってしまうだろう

そして、俺に相談したことも後々にわかってしまうかもしれない

どういった感じになるんかは分からないけどな


そう思いながらギルドの依頼

ウォーミングアップには本当によい依頼であって

様々な種類の魔物が出てくる様子ではあったけど俺たちの戦い方であったら特に問題は無かった

それぞれ武器を使った戦い方を

そして、魔法も使った戦い方をして行き

ちょっと忘れていた戦いは体が完全に思い出した

そうして魔物を倒してタスメさんの素早い手腕で解体して魔物の素材も集めて依頼を完了した

ギルドに報告して本日の仕事も終了

宿に帰ったら食事と風呂を済ませ、雑談や会議などは控えめにして早めに寝ることにした


…………そうして、湖へ行く当日になった

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