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勇者はいる、主人公はいない  作者: 虹鳥
第1章・のどかな草原トラストリン

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告白はある、スタンダードではない

この過去回想の夢の内容を見て

違和感を感じた方へ……


正解です

セメリさんに説明をする

あの時の学校の帰り道、俺と玲香はいつも通り学校が終わって放課後の時間帯

いつものように趣味の話をして、いつものように正直な事を言う玲香の話を聞いていた頃

いつもと様子が違っている様子

正直者なのに正直になれない、それだけの姿は何が言いたいのかよく分かった


「………あー!ちょっと聞いて欲しいけどこういった事って勇気を出さなきゃいけなくてなんだか難しいの!!

正直になりたいのに!正直になりたいのに!」


急に玲香は子供のようにバタバタし始めた、可愛らしいけど

もはや何が言いたいのか分かりやすすぎるけど、楽しくて見守ってしまう


「あー、俺は待っていた方がいいのか?それとも相槌を打った方がいいのか?」

「………正直に言って欲しいけど、何を言いたいのか分かっちゃった?」

「まあ、そんなにも分かりやすい表情とか話し方とかしていたから」

「……………もう!それなら言わせてもらうからね!

私ねっ!」

「分かっていながらもすまない!ちょっと待って欲しい!」


俺は、この大事な時

まるで鈍感系主人公が相手の思いを踏みにじるような、急用で話を止めるようなことをしてしまった


「ちょ……なんで!?

何が言いたいのか分かったんじゃないの!?

分かった上で止めるの!?」


玲香は泣きそうな顔をしながら怒りをあらわにしていた

けど、情けない形でありながらも

不器用な形であってもどうしても言いたかった


「ごめん、その言おうとしている言葉

“俺から”言ったらダメか?」

「えっ……え!?」


玲香は一転して、困惑している顔をしている

俺はそのまま、ひと呼吸して

平静を装う感じに伝えることにした


「玲香、言おうとしていることは分かる

だからこそ俺から言わせて欲しい

……すぅーーーーはぁーーー

玲香、俺はアンタが好きだ

結婚を前提につき合って欲しい

どうかお願いします!」


そう言いながら俺は腰を90度に曲げて頭を下げて言いきった

……予防線も張っているし、相手からの告白を遮ったし、もし告白じゃなかったらとんでもない自意識過剰になる

もしこれが恋愛作品のクライマックスだったら猛烈な批判意見が飛んできただろう

言葉だってシンプルではあるけど、特徴が無い

……でも、中二病をこじらせているオタクなりにでも精一杯な言葉だった

玲香は……


一度正面を見てその顔を見る


「…………」


両手で口を押えて顔を赤くしながら、瞳を潤わせていた

正直、告白を遮ったから、いわゆる「勘違いされている方のカエル化?」という物になって気分が変わりフラれれるんじゃないか?なんて気持ちも後からあった

けど……


「千斗…………私だって

さっき言おうとしたことだけど!

私だって千斗のことが好きなの!

……私が先に言いたかったけど」

「本っっ!!!当にごめん!

でも俺も先に言いたかったんだ!」


難聴系主人公だったら「え?なんて言った?」って返しそうになる小さな声で「先に言いたかった」って聞こえてしまった

本当に申し訳なかった、このまま失望されてフラれたら受け入れる覚悟もしていた

けど……


「……ふふ」

「え?」

「ごめん、この時に笑うっておかしいけど

なんだか、主人公の告白とは全く違うような告白だなって

そう思ったら、笑いがこみあげて来ちゃって」

「……ははは、そうだな

ダサい感じのする告白だしな」


そう言った後に2人で笑い合った、さっきまでシリアスな空気だったのに

朗らかな雰囲気になって言った

お互いの緊張がとけた感じになったのかもしれない


「はぁーーーーーー

本当に笑っちゃったな」

「ああ、本当にな

それで」

「ん?」

「俺の告白の答えはどうする?」

「ふふふっ…………」


そう言いながら夕陽を背にして

満面の笑みをしながら


「『末永く、喜んでお願いします』

だね」


そう言っていた玲香は、美しい白髪はプラチナの様で美しい姿を象っているようにも見えた


「ありがとう……」


さっきまで笑っていたはずだったのに、なぜか俺の目から涙があふれていくような気がした


「ちょっと!なんで泣いているの!?

こういう時って私が泣いて『おかしいな?嬉しいはずなのに涙が出てくる』って言う所じゃないの!?」

「…………うううう……正直

こんなにも、嬉しい気持ちになると思わなくって……」

「……じゃあ、私も」


そう言っていた玲香はさっきまで笑っていたけど、俺の胸に飛び込んできた

俺は動揺をしたけど、しがみ付いたまま震えているのが分かって……そのまま抱きしめた


「……ありがと、ちょっと……うう……泣いている所を千斗以外に見られたくなくって」

「……分かった、好きなだけ俺の胸で泣いていいよ」

「そーする」


夕日に照らされた帰宅道、誰かが通ることも心配に思っていたけど

この間、本当に世界には俺達しかいないと思うぐらい静かだった

これが、お互いの事しか見えてないっていう事なんだろうか?

心の中がポカポカと温かくなるような感覚がした


「千斗……制服で拭いちゃってごめんね」

「大丈夫だ」

「……その、やっぱりさ

抱き合ったけど……恋人らしいことしてもいい?」

「…ああ、いいよ」


言わなくても何をしたいかが分かった、玲香は涙を拭いた目元を中心に赤くなっている顔を見上げて

目をつぶった

ちょっと力が入っている様子で目に力が入って眉間にしわが少し入っていた

……とても愛しい

今俺の顔はどうなっているのだろうか?涙でぐじょぐじょなんだろうか?

そんな情けない顔で……いや、そんな迷いなんていらない

両手で玲香の頬にやさしく触れると……震えている

押さえるようにではなく包むように触れてそのまま


俺たちはキスをした

そのキスは、涙で濡れていたけど

暖かくて、心の底から幸せになるものだった


……

……

…………


「って、感じだったんだ

正直俺ながら、ダサいやり方だと思ったけど

それでも、玲香と付き合うことになったし

この幸せは本当に結婚しても続いくつもりしかない

今はこの世界に来て勇者をやっているけど

元の世界の時間が止まっていると王様が言っているし、帰って再び会う

そして笑い合って互いに笑顔になって毎日をすごす

それが目的だ」


そう、セメリさんに言った

自分自身の失敗しながらも成功した告白

セメリさんから何かを言われるって思った

彼にとってのお手本を本当は言いたかったけど

でも、彼女とのことは嘘をつきたくない

異世界(趣味)の事を話すときに嘘をつきたくない、以上の気持だ


「……すげえな、アンタ」

「へ?」


予想外だな?まさか普通に褒められると思っていなかった


「ソラアミセント、そっちの告白に関して『ダサい』とか『普通はこうじゃないのか?』って言っているけど、俺は正直『何が普通なのか分からない』

感覚とか命の重みとかってそっちの世界と似ているけど、センスまではどうなっているのか分からないから」

「あー、そういえばそうだな」

「俺からして見たら、彼女からの告白を待つより

滑り込みで自分から告白できていたし

……正直、怖い物なんて無いのに告白が怖いって思って今でもシキギに言わずにアンタに相談している

それなのに自分で言えるのがすげえよ」

「……そういう視点もあるんだな……どういたしまして」


…………すこし、安心する気持ちにはなった


「まあ、俺の方はちょっと勢いで告白した所もあるけど

他にどういった告白があるかっていうと……」

「あるかっていうと?」

「例えば、いつも遊んでいる所で『大事な話がある』って真剣に向き合って告白をしたり

どこかに待ち合わせして2人きりになって告白したりとか

時と場合によっては、いつも通り過ごしている時に『俺、アンタの事が好きだ』って普通に話すときもあるけど……真剣に考えているなら、やっぱり向き合ったりとかして言うのがいいと思う」


時折文通とかの間接的な手段で告白するってシーンもあったりするけど

遠距離恋愛など伝えられない状態で言うのはいいとしても、普通に会って言えるのに直接伝えないのは苦手だ

ちょっと自分のエゴを押し付けることにはなるけど、セメリさんは直接で気持ちを伝えて欲しい


「……うーーーん」

「まだ迷っている?

シキギさんへの告白をするかしないかを?

失敗するのがやっぱり怖いのか?」

「……それもあるけど」

「けど?」


他にも理由があるんだろうか?


「…………俺は、あの時

1年前のクズ共がこの街に来た時

シキギを守りたかったけど……正直な?

俺の中でもアレは『守れなかった』って思っているんだ」

「…………」

「前にソラアミセントから、そっちの世界とこっちの世界での常識について言っていたけど

そっちでは『死んだら終わりで命も体も大切にしなきゃいけない、蘇生魔法を初めて見た時、この世界では命は大事にしているけど死はそんなに重く思っていない』って言っていたでしょ?」

「ああ、あの時は品子さんも蜜巳さんも『死んでも大丈夫』って楽観的な考えを一瞬持ってしまって、ちょっと怒ってしまったし

けど今は、この世界の基準とか基本とか常識に口出しをするつもりはない」

「ああ……たしかに俺もシキギもあの時は死んだけど

そっちの世界だったらトラウマとかになるけど、俺らは『大人になったらいつか死ぬ経験はする』って思っていたし、そーゆー気持ちだ

……癪ではあるけど」

「…………うん」

「それでもな……


シキギを守れなかった、殺された


って気持ちが離れないんだ」

「…………」


………なるほどな、それが一番の悩みになっているのか


「シキギの家が壊されて、一緒に住むことになったけど

一緒の部屋で寝るたびに思うんだ

側にいて安心した気持ちにはなったけど

『一緒にいるのは守れなかった結果なんだ』って

守れていたら、別々の家にまだ住んでいたし

近いはずなのに、遠くに感じるんだ

俺には……告白する権利ってあるんだろうか……」


……権利か

その言葉を聞いて俺はハッキリと言わせてもらう


「権利は、告白には関係ないと思うな」

「……え?どうした?

なんかそんなにも即答で言うなんて」

「ああ、ちょっとびっくりさせてしまったなら申し訳ない」

「いや、それぐらいビックリはしないけど

でも、権利って告白には関係ないのか?」

「ない」


少し大きめな声でハッキリを伝える

塀やら壁に包まれている場所であるけど、風の音が激しく聞こえる気がした


「権利って悩んでいるところ悪いけど

シキギさんは権利については特に考えてないと思う」

「……って、シキギが言っていたのか?

あまりアンタはたまにしかシキギと遊んでないし、いつも他の2人の勇者と遊んでいるけど

そんな2人から聞いたのか?」

「いや、女の子同士は女の子同士で楽しんで欲しいし、俺はその場所に踏み入れてはいけないと思ってな」


単純に女の子たちの所に自分と言う異物を入れたくないだけなんだけどな……それに関しては「自分は踏み入れられる“権利”は無いと」思っているし


「だったらなんで?」

「ただの推測だけど」

「どこからだ?」

「そうだな……」


周りの大人たちの様子を見る限り、セメリさんに対して「守れなかった人」って考えている人はいなかった、聞いたわけではなくセメリさんに対しての気持ちからの推測だけど確実にあっているだろう

でも、回りからのではなくシキギさんの気持ちと関係者……両親たちの気持ちを汲み取って言わないとセメリさんは納得しないだろう


「あの1年前の時、セメリさんは守れたと思うんだ」

「でも、死んでしまったし家を壊されてしまったし」

「あのクソ共が来た時に唯一動いたのはセメリさんだった、もしセメリさんが行かなかったらシキギさんはそのまま連れていかれたかもしれないし……」

「それは分かっているんだ

でも結局……」


やっぱり、納得していない

だったら追撃だ


「俺の世界の時だけど、寝ている時って人間でも動物でも一番無防備な状態になるんだよな」

「え?何の話だ?急にどうした?関係あるのか?」

「いや、関係ある話だ

セメリさんはシキギさんと同じ部屋で寝ているんだよね?」

「え?そうだけど?」

「そこで推測をしたんだけど」

「ああ……?」

「その、シキギさんはシッカリ寝れていると思うんだ

同じ部屋なのに、最も無防備な状態になる睡眠の時に一緒の部屋で過ごしている

両親も許している証拠だし、シキギさんも眠れているなら安心している証拠だと思う」

「……っ!?」


セメリさんは気づいたのか驚いている顔をしている

よし、もう一声だ


「権利とか悩んでいるけど、側にいるのは出来なかった結果じゃない

守れたと思うし、それでシキギさんは安心している証拠だ

俺はそう思うよ?」

「……ふぅーーーー」

「……まだ権利に悩んでいるか?」


少しの間、空を見据えた後

何回も深呼吸をして、まばたきをして

……何かを振り払うように顔を振る

少し迷いがなくなったかな?


「ありがとうソラアミセント、権利に関しては納得した

心に引っかかっていたモノが取れた感覚だよ」

「それだったらよかったよ」

「でも、やっぱり告白に関しては怖いんだよな……」

「うーん」


セメリさんが告白に乗り出すまであと少しだな

でも、勇気を出すのは本人の問題だ……


「……だったら、今度は怖い話になるけど」

「怖い物は無い、でもなんだ?」


さっきまで正直に「怖いことがある」って言ってなかった?って言いたかったけど

グッとこらえる


「あんまり、先延ばしにしないほうがいいともう」

「なんでだ?」

「それは……」


普通の11歳だったら絶対にしない話

セメリさんはちょっと大人な性格だ

だからこそ……脅迫になりかねないけど

立ち止まったままでは悲しい結末をしてしまう可能性もある

だからこそ、ディープな事を言わせてもらう

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