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勇者はいる、主人公はいない  作者: 虹鳥
第1章・のどかな草原トラストリン

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思いはある、勇気はない

セメリさんの魔物と戦う訓練を見学した次の日

今日はギルドの方に赴いた

タスメさんも品子さんも蜜巳さんもそれぞれはそれぞれでやりたい仕事をしていて俺もやりたい仕事をしようと来たけど……


「うーんむ」


最近落ち着いてきたガーゴイルの依頼を再度確認しに来たけど今日も無かった

ちょっと、創作意欲があったけど勝手に作るわけにはいかないし

たしかにヒューラルに来て結構な日数が経過して沢山のガーゴイルを作ったけど

もう、いっぱいになってしまったのかな?


「それだったら、何か普通に済ませそうな依頼でもしてみようかな?」


そう思いながら、依頼の黒板を見て吟味していると……見覚えのある人が見えた


「あれ?セメリさん?なんでこんなところに?」


ギルドはそもそも子供の人がいることがあまりない、だからこそ小柄な姿が結構目立って見えてしまう

初心者いびりがほとんど確実にある創作上のギルドとは違って危ない場所ではないけど、基本的に手続きとか大人の人が多いからガン見してしまう、どうしたんだろう?

手には依頼板と思わしき黒板を持ってキョロキョロとしているけど、親が毎日依頼板を出している所を手伝うように来たのかな?


「ん?あ、いた」

「へ?」


俺を探していたのか、こっちを見た瞬間にやって来た

え?何か頼みがあるのかな?


「勇者ソラアミセント」

「セメリさん、どうしたの?

何か依頼したいことがあるのか?」

「あーえっと……」


……あれ?なんだ?いつものセメリさんの様子じゃない?

なんかもじもじしてる?

一体どうしたんだ?


「え?どうした?」

「…………」

「大丈夫?調子が悪い?」

「元気だ」


それに何かキョロキョロしている?何かか誰かか探しているのか?


「俺以外の仲間を探しているのか?もう依頼に行っちゃったから戻ってくるのは結構後に……」

「いや、今はオマエだけか?」

「え?そうだけど?

誰か探していたのではなく、誰もいないかキョロキョロしたのか?」

「……うん」


俺だけに用が?何かそんな……秘密の相談みたいなことでもするのか?


「もしかして、周りに人がいると気になって相談できないやつ?」

「うん……」

「じゃあ場所を変えよう、誰もいない場所に」

「でも、ちょっとまって」


そう言うとセメリさんは持っていた依頼板を持って受付の方に持って行った

小言ではあったけど「依頼板を外に持ってていい?」と話していた

普通に受付の人が了承を得ていたけど、受付の人にも俺にもその依頼板の内容を見せないように体に隠していた


「じゃあ、ちょっとついて来てほしい

ちょっとした秘密の場所があるから」

「秘密の場所?俺が行っていいのか?」

「ああ、あの場所を知っているのは俺とシキギだけだから」


そう言いながらギルドを出てその場所に進んで行った

少しの間、歩いていたけどどこに向かうんだろうか?

このヒューラルにいて結構な日数を過ごしているけど秘密の場所ってどこだろうか?

まあ、いわゆる秘密基地とかそういった物だろう

そう思いながら進んでいると、見覚えのある場所にたどり着いた


「ここだけど、入れるか?」

「え?ここか……」


今となっては懐かしい気持ちになる

あの初めてやった依頼のペット捜索、その時にペットたちがいた塀に囲まれている場所だった


「どうした?知っているのか?」

「まあ、ちょっと中に入ってから言うよ」


這いつくばって2人で入っていく、セメリさんは結構身軽で四つんばいでも結構早く簡単にたどり着いた

俺も立ち上がって裾を払った


「ここは俺がちょっと1人になりたいときに来る所、時々シキギと一緒に来て遊ぶ時もあるんだ

ちょっと前までは3人が来る時ぐらいまでは動物たちがいたけど……最近どこかに行っちゃってな

何かそれも知っているのか?」

「えっと、俺達が冒険者になった時だけど

最初にやった依頼がペットの捜索でな……依頼者のペットがここでいつも遊んでいたからここの場所を教えてな……すまない」

「そうだったのか、まあいつかまた戻ってくると思うし

その依頼者の家を教えてもらえばいいよ」

「遊びに行って、ペットたちと遊ぶのか?」

「そんな感じ」


まさかのこの場所がセメリの秘密基地だったとは、当時ばったりと出会わなくて本当に良かった……あの当時だったらめちゃくちゃ嫌われてた可能性があるし、猫に引っかかれまくって血まみれになったけど綺麗にしといて本当に良かった


「それで、相談したい事ってなんだ?」

「それ……なんだけど」


セメリさんは、誰も回りにいないのに再びキョロキョロして回りを見る

こんなにも、注意深くなる内容なのか?


「えっと、これ」

「ん?」


そう言われて依頼板を差し出されて見てみると……


「え?」


書かれていたのは「告白の手伝い」であった

自分の心臓が大きく鼓動するのが分かるし、緊張感のあった雰囲気だったのに口元が笑いそうになってしまう

危うくトキメキや限界化で大きな声を出しそうになるけど近くに誰がいるのか分からないし、聞かれたら入られるか問いだたされるから口を抑える


「……むぐ」

「……なんだよ、そんなに俺が告白とか言うのおかしいか?」


そう言わて、手で口を抑えたまま顔を横に振った


「いや、そういった話題になるとは思ってなかっただけだ」

「そうか」

「それで相手ってやっぱり……シキギさん?」

「っ!?知っていたのか!?」

「いや、いつも一緒にいるから

セメリさんと1番仲良しな女の子って見た感じ1人だけだし」


……本当は違う理由だ

カプ厨、もとい関係性オタクの俺は思うけど

友好関係と恋愛関係って全く違ってみんないいものと思っている

よく、男女や同性であっても「いつも一緒」ってキャラがいた場合

二次創作などで友人関係の2人が恋愛関係になるモノがあったりする

でも、俺の場合だと「この2人恋愛関係だったらいいな」って思う2人であっても、友人関係のまま物語が完結してもそれはそれでいいと思っている

だからこそ……品子さんと蜜巳さんの幼馴染友好関係という「現実の人(ナマモノ)」に萌えている俺は、セメリさんとシキギさんの友好関係にも普通に萌えていた所もある

けど、男女であっても普通に接しているから「友好」の関係と思っていたが「恋愛だったらいいな……」って思うこともあった

……つまりまとめると、付き合って欲しいっていう願望があるってことだ


「それに2人がもっと仲良しだったらいいな……って思うこともあってな」

「……はぁ

前に雑談で言っていたけど、なんだっけ?そっちの世界の言葉で『関係性オタク』とか言っていたよな?それって、普通に俺たちの事もなのか?」

「……ああ、2人が友人であっても恋人であっても仲良しだったらいいな?

って思ったからな」

「それにアンタ、彼女がいるんだっけ?だから相談したかったんだ」

「ああ、玲香がいる

彼女の所に戻るために俺はこの世界を救うつもりだ

だからと言って、目的の為に他をおざなりにはしないぞ?

アミルクリスタルだけを手に入れて湖を直さないのは俺の気が済まないし、彼女もそんな勇者を認めたくないからな」


俺の彼女、玲香は物事を正直に言う

勇者とか魔王とかに憧れている所もあるけど

最近はアニメとかで「勇者」って書かれているものは余り見たくないらしい

理由としては

「勇者らしくない勇者とか魔王らしくない魔王とか……最近流行っているの?」って言っていて

やっぱり勇者は勇者らしく魔王は魔王らしくしているのが好きだし

ダークヒーローな勇者も好きだけど

最近の変わり種と言わんばかりにただの最強系主人公に踏み台にされていたり、目的を達成しても報われなかったり、挙句の果てに俺がほとんど読まない「追放物」にて「勇者パーティー」って言葉がよく使われていて、三流の悪役にされることがかなり許せない……って言っていた

すごく気持ちが分かる

自身が現在進行形で勇者になっているから尚更分かる


「それだったら、そのレイカって人もアンタが勇者としてこの世界を救えばもっと好きになるよ

結婚とかするんじゃない?」

「いや、俺から告白して『結婚を前提に』って言ったから結婚するのは確定だ」

「………そんな恥ずかしいことを平気で言えるアンタがすげえよ

でも、俺の知っている彼女持ちとかアンタしかしらなかったんだよ」

「まあ、たしかにそう言った経験は俺しかしていないからな……」

「依頼板でギルドに張ったら、誰に見られるか分からねえし

……俺ら、ちょっとこの街で有名だし」


……そうだな、前勇者の被害者の中でも最も大きい被害を受けた2人だし


「変に、はやし立てられるのもウゼえし

お父さんもお母さんも相談したら速攻でシキギに伝えるかもしれねえし

だから俺はソラアミセントを探していたんだ

だから……この依頼受けて欲しいんだけど」


そう言われてセメリは依頼板を差し出した

……たしかに関係性オタクとしては、セメリさんがシキギさんと付き合うのは嬉しい気持ちになる

不幸な目に遭った2人が幸せになる

そうなるなんて、この上ない幸せな気持ちが俺にも感じることだ

……けど


「セメリさん、申し訳ないけど

その依頼を受けることはできないな」

「え?は?」


俺が拒否をすると、セメリさんは半分怒っているような信じられないような表情をしていた

けど、これに関しては俺は本当に心を鬼にしてハッキリとさせてもらう


「変に気を悪くしたらごめんだけど、依頼って形ではやりたくは無いな」

「そうなのか?じゃあどういった形でやって欲しいんだ?」

「そうだな……これは冒険者とか勇者とか関係ない

友人としての相談でだったら告白について聞くよ」

「……告白の手伝いは」

「それは……」


正直に言うと、俺自身は確かに関係性オタクではあるけど

干渉はしたくない、それは手伝いと言う形でもあってだ

何というか……2人の歩幅で仲良しになって欲しいって気持ちがあるからこそ、変に自分を含めた“部外者”が手をつけて仲良くなるってことは“あまり”したくない

俺自身は「こういうのはどうかな?」ってアドバイスぐらいだったらしてもいいと前向きに検討することを善処したい気持ちはありますって感じだけど

告白の時のフラッシュモブになるとかは絶対にしたくない


「……検討はする」

「はぁ……大丈夫かよ」

「セメリさんが望む形にする分には頑張るから」

「分かった」


ひとまずの納得は得られた

でも最終的には「手伝って欲しい」ではなく「自分の力で頑張る」って声を聴きたい


「それで、取り合えずだけど

シキギさんのどういった所が好きになったの?」

「わかんね」

「わからない?」


……ムズムズする、いい意味で

こんな甘酸っぱい青春をこの異世界で堪能できるなんて

ニヤついてしまいそうだけどグッと我慢する


「なんか、1年前にあの事件が起きたけど

その前からシキギと一緒にすごしたいとか

大人になってもいたいとかそんな気持ちがあった

結婚とか分からないけど

お父さんとお母さんみたいな仲良しの関係になりたいとか

そんな気持ちになった」


……なるほど、セメリさんは結構11歳でありながらも大人びている様子がよく見えていたけど

全然年相応に恋愛について悩むこともあるんだな

セメリ自身の中でも「恋愛ってどんな気持ちなんだろう?」って分かってないのかもしれない


「シキギは、すぐ転ぶしすぐに疲れる

変に放置とかしたらどっかに行っちゃいそうで……

あの1年前の時もあいつらにさらわれそうになったし

……怖いもの知らずだったのにアイツがいなくなるのが怖くなったんだ

死んだけど、近くにいて……本当は安心した気持ちもあった

これが『好き』って気持ちなんじゃないか?って思ったんだ」

「それは、本当に恋愛の意味で『好き』って気持ちだな」

「だったら、俺はどうしたらいいんだ?」


……よかった、変に手伝いとか言われないようで良かった……のか?


「そうだな……普通にシキギさんに告白するってのは難しいのか?」

「うっ……それができたら苦労しねえよ」

「正直いうと、俺としては相談を受けることはできるけど最終的には『自分の力』で告白して欲しいんだよな」

「いや、それはするけど」


その言葉を聞きたかった、これで本当に安心した


「でも、告白できないのには何か悩みがあるのか?」

「……いや、え?分からねえのか?」

「ん?なにが?」

「そう言った時って葛藤とか普通はしないのか?

その……告白に失敗して…………ゴニョゴニョ」


……セメリさんは、怖いモノなんてない!って言っていたけど

告白に関しては流石に身がすくんでしまうらしい

ちょっといじりたくなる気持ちもあったけど、セメリさんにとっては大真面目な話だから絶対に言わないでおきたい

口から漏れる可能性もあるが


「まあ、たしかに告白に関しては怖い気持ちはあるな」

「ってかソラアミセント!アンタも怖くなかったのか!?

アンタから告白したんだろ!?どんな気持ちだったんだ!?」


おっと、急に俺に向いてきた


「あー、そうなんだけど

実を言うならちょっと特殊な状態で」

「それは異世界だからか?それともグラーフィアと変わらないのか!?」

「多分変わらないな、どんな感じだったかっていうと……」


そう言われて、俺はあの時の事を説明することにした

一度夢の中で見た、俺たちが恋人になったあの話を

まだ、品子さんと蜜巳さんに話していないことを

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