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勇者はいる、主人公はいない  作者: 虹鳥
第1章・のどかな草原トラストリン

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教えはする、覚えは早いか?

次の場所にたどり着く、そこにも同じ頭でっかちな魔物が複数匹いた

さっきの場所と比べてみたら、ちょっと数は多いけど誤差範囲だろう


「ソラアミセント」

「ん?」

「んで?試してみたい事ってなんだ?」

「ああ、これなんだけど」


俺は昨日買った新品のスリングを差し出した


「なにこれ?」

「前にあるパーティと共に依頼を行ったとき、教えてもらった武器なんだけど

これを使って戦ってみるのとかどうかな?」

「……わりい」


申し訳なさそうに謝っていた、道具を使うのは合わないってことなのかな?


「あーやっぱり素手で投げたいのか?」

「いや、そうじゃなくて、それの使い方が分からないってことだ」

「あ、そっち?」

「ああ、剣とかは斬ればいいのが分かるけどそれってどうするんだ?投げるって言ったけど、これを投げればいいのか?」

「えっと……」


どうやって教えようか悩んでいると、父親が1つ肩をポンと叩いた


「セメリはな、見て覚えるのが得意なんだ

だから勇者さんが1回戦ってみてくれないか?

俺も分からないし」

「分かりました

では、見ていてください」


………そういえば、アレをしばらくしていなかったし

最近結構うずくしやってみるか


「クックック、久しぶりだな」

「えっ!?」

「なっ!?」


2人は驚いている、初めて見たのかもしれないけど

関係ないと言わんばかりに俺はそのまま続ける


「我が名はウルティマ・ザン・ガーゴイル

いつもは我が槍マクスラスだが新たなる武具を扱わせてもらう!

我は究極の召喚獣!ウルティマ・ザン・ガーゴイルだからな!」

「……お父さん?あれって何か分かる?違う人になっているみたいだけど?」

「知らない、勇者さんの趣味か住んでいる世界の文化かもな」

「我が戦いを見るがいい!」


そう言いながら歩いて行って、足元にあった石を1つ取った後にスリングにセットして回していく

合同で行った依頼で初めて使った

その直後に前勇者の事を聞いたけど、それ以降からスリングの練習を行っていた

結構慣れていったから、普通に実践でも戦える……ロールしながらは初めてだけど


「ああやって石を入れて回して……近づいて引っぱたければいいのか?」

「否!我が手腕から放たれる閃光で奴らの脳髄に破壊を!」


そう言いながら回している石を放って1体の頭に直撃させた

思いっきりぶつかった石はシッカリと後頭部を捕らえて命中して倒した

思いっきりウルティマ・ザン・ガーゴイルで大騒ぎをしていたけど、とても奥だったからか他の魔物は特に反応する様子はなかった


「ふぃ……ってのがスリングを使った戦い方だ

セメリさんが石を投げるのが得意なら上手く行くと思って進めたんだけど……どうだ?」

「……オマエ」

「ん?」

「その前にさっきのはなんだ?

ガーゴイルって好きとか聞いたし、それなのか?

しかもさっきのアドバイスで攻撃する前に喋らないとか言っていたのになんだ?」

「ん?セメリ?アドバイスってなんだ?」

「ちょっと後にして!お父さん!」

「はいはい分かった、後で聞く」

「…………」


しまった、うずいていたから普通にウルティマ・ザン・ガーゴイルをしていたけど

教えるときに余計なノイズになってしまうからやらないほうがよかった!

俺のバカ!


「ごめん、やり直させてほしい

俺は戦う時に時々好きなもの……『ウルティマ・ザン・ガーゴイル』になって戦うのが大好きなんだ

今度はちゃんと普通に戦うからそっちを参考にして欲しい

今見たのは忘れてくれ」

「……恥ずかしいからか?」

「違う『ウルティマ・ザン・ガーゴイル』は俺だけだから……マネしたくても何か別のにして欲しい」

「覚えられないからマネしたくてもできねーよ!」


気を取り直してちゃんとスリングの戦い方を見せることにした


「まず、スリングを端の方を持って

真ん中の方に石をセットする」

「うん」

「敵を見て狙いを定めながら手元で回していく」

「結構速くでもいいのか?千切れないのか?」

「簡単には千切れないから大丈夫だ

疲れない感じに回していって」

「うん」

「狙いを定めて、石を投げるときに敵に当てるようなのと同じような感覚で……スリングの片方を離して放つ!」


そう言いながら、石を放ってもう一体の敵に命中させた

当たった敵はそのまま動かなくなり倒すことができた


「今のがスリングのやり方だ

行けそう?」

「えっと、その前に言いたいこと言っていいか?」

「えっと……いいよ」


念のために身構える、なんとなく予想できるから


「最初っからそのやり方でしろ!

よく分からないガーゴイルの方は必要なかっただろ!」

「ごめんなさい!どうしてもやりたかったから……」

「はぁ……」


大きなため息をしながら気を再び取り直した

本当にどうしてもやりたかったんだよ……しばらくやってなかったし


「まあ、俺も1回やってみるから貸して欲しい」

「いや、新品のがあるからそれをあげるよ」

「え?いや流石に悪いよ」

「いやいや、結構安いしあげる

俺も教えてもらったパーティの人達から新品をもらったし」

「そうなのか?」

「貴重なものではないのか?」

「よくありますし、簡単に買えますよ?

武器屋とかに行くと剣よりも安く売っています!

何なら複数個買いました、予備にもう2つもどうぞ」

「あー折角だから貰うよ」


俺は新品のスリングを合計3つ渡した

自分の分の予備もあるし、多分ほかの街にも売ってあるだろう


「ふーん……こんな感じか」

「長さは大丈夫そう?」

「大丈夫そうだな、ちょっと試してみるよ」

「ああ、後ろで見てるよ」


魔物は少し遠い場所にいるけど普通の投げてもいい距離にいる

セメリは俺のマネをする様に手元でグルグル回していく

回しているスリングはちょっと左右に震えていたけど、段々と真っすぐになってきた

え?慣れなのか?結構早くない!?

そう思いながらも回していって、そのまま


「死にやがれクソカスがあああああああ!!!!!」


……さっきよりも荒々しい言葉使いで石を放っ……放って…………え?


「な、へ?」


飛んで行った石は敵からは外れている位置に飛んで行った

でも初めてにしては方角はあっていて、結構な適性があるのを感じた

俺が洞窟内でチルスさんから教わって、始めて投げた時は天井に当たってしまった

本当に方角に関しては本当に凄かった……

ただ……


「あ、外れたか」

「セメリ、多分練習したら結構上手く行くと思うぞ」

「……」

「ソラアミセント、どうした?」

「いや」

「下手だったか?」

「逆だな……めっちゃ上手すぎる」


速度が尋常じゃないほどは早かった

たしかに、普通に手で投げた時も早かった

けどスリングを使った時の速度は本当に早く、地面に当たった石が埋まり陥没して

石そのものは粉々になっていた

これが当たっていたら、削り取られるんじゃないかと思うぐらいの速度だった


「……本当にこの速度だったらどこまでも飛びそうだ、魔物を狙って当てれば一撃で粉々に出来るんじゃないかって感じで……ってかどうして謙遜して『下手か?』って言ったんだ?」

「速度に関しては自身があったけど、当てられてなかったからミスったと思ってな……」

「いや、俺は初めての時は洞窟の天井に当たっていたから方向もぶっちゃけ俺よりも正確すぎるんだ」

「そうなのか?」

「ああ、本当にこのまま練習したら本格的な戦力になれる」

「やったなセメリ!勇者のおかげでもっと強くなれたな!」

「ああ、本当に良かったよ!」


そうなった後に、再び石を持ってブンブン回した後に「ぶっ殺してやる!」って言いながら石を投げると

今度は命中

遠目だからよかったけど、魔物の頭が破裂したんかと思うぐらいの体液の飛び散り方が見えて思わず目をそらした

魔物を倒すことに関しては慣れているつもりだったけど、まだまだ残酷なことに関しては慣れないな……

それからは複数体倒したら解体と掃除をしてまた次の場所へ向かった


「そう言えば質問があるんだけど」

「どうした?」

「今俺は石を投げているんだけど、それ以外に投げられそうなのってあるか?

それも、スリングにセットして投げらる物とかって?」

「そうだな……」


まずはチルスさんのしていたあれかな?


「俺にスリングを教えた人は、毒入りの瓶を使っていたんだよな」

「毒?」

「そういうのも店にあるんだけど、魔物が沢山いる所に思いっきり投げて割って

散らばった毒で魔物どもを弱体化させるって戦法だったな?ちょっと俺は毒が怖くてまだ使用する予定は無いけど……」


チルスさんは一緒に戦っていたナイヴォさんとヒノムさんごと毒を浴びせていたからな……「怪我は治せばいい」ってこの世界の考えを持っているからこその戦い方ではあったけど

治るとしても俺は仲間に攻撃はしたくないな……もちろん、この世界での戦い方にケチをつけるようなことはしないけど


「ふーん?他には?」

「ナイフとか投げてる……って言っていたけど、俺の背負っているマクスラス……じゃなくて投げる用の槍もあるんだ」

「その槍は投げるのとは違うのか?」

「これは振り回す為の槍だな、投げる用のは先端が真っすぐ鋭くなっている感じだと思う」

「それなら遠くに飛びそうだな」

「後は俺の知識内で考えると……」


本当はいっぱいある、けれどこの世界に無いのは作れそうにないな

流石に武器を作るなんて知識は持ち合わせてないし、言えたとしても鍛冶屋の人……例えばギルドマスタースイトに、こうゆうのがこっちの世界にはありますって「提案」することだけしかできない

某素晴らしい異世界転生作品も、主人公がモノづくりできる人にコタツとかをお願いしたように発想があっても技術者が必要になる


「石とかは掴んで投げるものがあるけど、全体が刃物になっているのを指で挟んで投げるのもあったりするんだ」

「どんな感じだ?」


そう言われて、風に乗って飛んできた葉っぱを一枚掴んだ


「例えばこの葉っぱの周りが刃物になっていたとして……

人差し指と中指で挟んで回転をかけるように、前に投げる」


そう言いながら実行するように投げた

葉っぱだったから明後日の方向に飛んで行ってしまったけど、伝わったかな?


「そうゆうのも便利そうだな、それこそナイフとかその投げ方をしたらいい感じに真っすぐとかグルグル回ってよく飛びそうだな」

「ああ、そんな感じに試してみて欲しい」

「分かった、じゃあ次の場所では全部の魔物にスリングを使って戦ってみるから」


そう言いながらたどり着いた場所

今までと同じようにいい感じの広場に数匹の魔物がいた

セメリさんはスリングを持ちながら


「死ねえええええええええええええぃい!」


大きな声で物騒な事を言いながら戦っていた

最初に戦っていた石を投擲した時と比べると、魔物を一撃で仕留めるときが多く明らかに威力が上がっていた

……本当は、何も言わずに戦えば暗殺とかできそうだけどうしても「死ねえ!」って言いながら戦っていた

それに、普通に素手で投げた時に比べると明らかに罵倒の声が大きい

そのせいか、スリングで投擲の飛距離が伸びたのに魔物に気づかれる範囲も広くなっていた

再び「欠点は無いか?」とセメリさんから聞かれて、声に関して指摘したけど


「……意識していたはずだけど難しいな

なんか勝手に声が出てしまう」

「それは、もうルーティンなのかもな」

「ルーティン?」

「習慣と言うか慣れと言うか……要は、そう言った戦い方じゃないと全力を出せないって所なのかな?」

「じゃあ、直せねえってこと?」

「そうかもしれない、それだったら強みである投擲の上手さを伸ばしていくのがいいかもな」

「分かった」


そうして、様々な箇所で戦う事数回

特に何の問題もなく街に戻って解散となった

俺はほとんど見てみてアドバイスをしただけではあったけど

結構有意義に過ごせたと思う

前の勇者は俺達が何とかするけど、俺達が街を去り……最終的にに魔王を倒してこの世界から去ったとしても、その投擲能力でシキギさんも家族も両方守っていって欲しいな

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