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勇者はいる、主人公はいない  作者: 虹鳥
第1章・のどかな草原トラストリン

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訓練はある、丁寧は無い

真相を聞いてから数日、あれからセメリさんと会ってのんびりと話し合う日々を過ごした

自分の世界の事を話したり、玲香の事を話したり……

精神状況も戻ってきて、ギルドの依頼も達成していく日々も過ごしていった

ギルドマスターにドラゴン討伐に行けるかどうかの進捗について聞いてみたが

ガスマスクに関する制作に関しては完了していた、サイズが合っているかどうか?も問題なく

湖に出向きながら呼吸してみると、普通に息ができるし会話も普通に出来る

呼吸に関しては問題なくできて戦いに関しての影響も、ちょっと視界がゴーグル越しになるだけで問題なく戦える

後は……


「親父の気持ちの問題だ」


と、ギルドマスターが言っていた

領主ツキウス様が俺たちを信じきって、あの首狩りを貸すようになるまで

今まで籠っていた分、街の人達を観る事を続けるらしい

でも、娘の視点で見た様子ではもう少しらしい

それに、ギルドマスタースイトも何回も領主ツキウス様に「親子として」何回も会って話し合いをしている

以前に比べてスイトさんも、柔らかい表情をする様になった気がした


そんなこんなでセメリと会って話していたある時


「稀に街に出るって言っていたけどどうゆう時に出るんだ?」

「そりゃ、魔物を戦う練習の時だ

俺もいつか冒険者とかになって自分の仕事で魔物を狩ることになるかもしれないからな」


11歳の年齢でもう?なんて思ったけど、この世界で働けるのは15歳からで……現実の換算だと12か?現代だったら労働基準法とかでうるさく言う奴らがいるかもしれないようなぐらい早い段階だ

ともかく、もう働く4年前になるなら将来の為の体力作りは必須になる……そんな異世界の基本なんだろう


「練習か……セメリさんは持ち味とか生かしているの?

『投擲が得意だ』って言っていたし」

「ああ、一応棒とかを振って剣の練習とかもしているけど

俺は投げる方が得意だ、石だけでなくナイフも練習で使ってもらえるし

棒も振るよりも投げるのが得意なんだ」

「ふむ……」


ふと、思ったことがある

投擲と遠距離武器、実際に使った感じって全然違うけど

俺が今練習中の武器(スリング)とか使えるようになったらどうだろう?


「次に、街を出るのはいつなんだ?」

「え?ちょっと聞いて来る」


近くにいたセメリの父親に聞くとすぐに戻って来た


「明日だって?それがどうかした?」

「明日か……」


俺は自分の予定を脳内で確認した

この街で結構な数を作って来たガーゴイル像

もはや街で見かけない日がないくらい沢山作った

そのために結構落ち着いたのか、最近はあまり作って無く

明日にガーゴイル作りの依頼が無いか考えてみたら、よし、無い


「明日は俺の予定がないから、その、良ければついて行ってもいいか?」

「え?俺はいいけどちょっと待って?」


と、再び父親の所に向かおうとしたらいつの間にかそこに立っていた


「明日の特訓について行きたいのか?

アンタら仲良くなったんだし、セメリがいいならついて来ていいぞ!」

「ありがとうございます!」

「ああ、家で待っているからできる限り朝早く来て」


思った以上にすんなりと話が通って本当に良かった

いままでも、セメリさんとよく話をして

蜜巳さんと品子さんはシキギさんと会話をして

その様子を街の人達が見ていて、なんだか安心しきった様子も見えるようになった

でも決して信用の打算的な理由で一緒にいるわけではない

交友関係を結びたかった……って思ったけど、今では本当に仲良く会話ができる

タスメさんと異世界コミュニケーションを取るのも楽しかったけど

セメリさんと会話するのも、また違った楽しさがある


その日は普通に雑談をして後々に解散

宿に戻る前に、貯まったお金でスリングをいくつか購入した

剣よりも安くお手軽だ

宿に帰った後、タスメさん達に「明日はセメリさんたちの魔物狩り訓練についてく」と相談したら普通に了承を得られた

むしろ「楽しんでね!」と背中を押されるように言われた、本当に感謝する

そうして次の日、体感的にいつもよりも早い段階で起きて

置き手紙ならぬ置き黒板に「今日の事が終わったら、ギルドに行く」と書いて、外用に鎧を付けて早めに宿を後にした、もちろんマクスラスを忘れないように

そして、セメリさん達の家に向かうと


「あ、来た」


もう待ってる!?この世界には「○時○分」みたいな具体的な時間が無いから、体感的に早めに出たけど

待たせてしまったか?


「わりい!早めに出たつもりだったけど……待たせてしまったか?」

「いや、俺が早いだけ

何ならお父さんの準備が全然まだだし」


そう言っているセメリさんの格好は、肘当て脛当てに胸当てが付けられている身軽そうな恰好をしていた

子供用の装備もあるんだな?練習用としてなのか軽量的な雰囲気もある

そう思っていると、中から父親が慌ただしく出てきた


「遅くなってすまね……あれ!?勇者さん!?もう来たのか!?」

「いえ、俺はさっきついたばっかりですし

息子さん、気合十分ですね」

「ははは、セメリもな!実を言うとアンタと街の外に行くのを楽しみに……」

「言うな!お父さん!!」

「あ、ありがとうございます」

「今聞いたのは忘れてくれ!」


そうやり取りをしながら街の外に歩いて行く

出かける約束をする時に「タスメさんの馬車に乗っていくか?」って提案をしたしけど、歩いて足腰を鍛えたいという希望だったので歩いて行くことにした

畑作業をしているから十分では?って一瞬思ったけど、畑作業と歩きでは使う筋肉が違うんだろう

風を感じながらある程度街道を歩いて行ったあと、外れの道を歩いて行きそこからしばらく歩いて行く

たどりついた場所は普通に草原だったけど何匹かの不気味な外見をしている魔物がいた

体は小さくて体の色は茶色になっていて頭がデカく見える、もはやどうやって体をさえているのか分からない、おまけみたいな体のつき方をしている

そして、変にその場所だけ地面が草ではなく土になっていて広場になっていた


「なんか、おあつらえ向きに場所ができあがっている?」

「ここはな、街に近いし弱い魔物が出てくる場所でヒューラルに住んでいる人にとって初めて魔物と戦うのにぴったりな所なんだ」

「俺も子供のころ、昔こことかで練習したな」

「2人以外にも訓練している人っているのか?」

「ああ」

「だから場所ができあがっているんだな……

とりあえず、まずはいつもはどのような感じに戦うのかを拝見してもいいですか?」

「いつも通りか、分かったよ」

「昔に比べたら結構戦えるから、最近は普通に見ていることが多いんだ

息子の事をよく見ていて欲しい」

「分かりました」


そう言って、セメリは近くに落ちてある石や木の枝を手に取った

魔物達は俺達の事に気が付いていないから不意打ちするなら絶好のチャンス

石を持って投擲できる距離まで近寄っていき、石をそのまま投げ……


「死ねえええええええええええ!!!!!!」

「がっ……ギャァ!」


え?

……派手に罵倒の言葉を言って、魔物は気が付いたけど狙った一匹は普通に仕留められた

しかし、その叫んだ罵倒の言葉によってほかの魔物が気が着いてしまう……って


「魔物が複数体気が付いた!?助けないと!」

「まあ、待て、これぐらいだったら我が息子は問題ないさ」

「……え、そういうのモノですか?これが普通ですか?」

「ああ、だから安心してみていて欲しい」

「……でしたら待ちます、でも、我慢できないようなピンチになりましたら乱入しに行きます」

「心配しなくていいって」


そう思いながら視界を正面に移すと


「死ね!死ね!殺してやる!

てめえら!くたばれぇ!!!」


……めちゃくちゃ言葉が汚い、でも本当に年齢で考えても強いからなのか

複数の魔物攻撃を避けながら石や木の枝

挙句の果てには魔物の頭をちょっと大きな石に見立ててぶん投げていた

荒々しい言動とは打って変わり、その狙いは正確で魔物の急所や、魔物の動きを鈍くしようと足を集中的に狙っていて、本当に投擲に関して非常に強いのが分かる

言動が荒く無ければカッコいいと思っていたかもしれない

荒くなければ……うん

そう思いながら眺めている内に魔物達は全滅していた、周囲には死体しか残っておらず

父親は解体に向かう


「手伝いま……」

「大丈夫だ、勇者ってこうゆう作業は余り慣れていないんだろ?

あのタスメからよく聞いたぞ、ゆっくりとセメリと話をして欲しい」

「ああ、分かりました」


たしかに慣れていないのは事実だ、街で冒険者をやり始めてからしばらく解体はしていない

ナイヴォさんの時も任せてばっかりだったな


「ふふう、こんなもんか」

「お疲れ様、大丈夫?」

「怪我してねーから大丈夫だ」

「本当に、投擲の能力強いんだな?いつからそんなに強くなったんだ?」

「わっかんね、物を投げて遊ぶのが昔から好きだったけど

それがキッカケかな?」

「なるほど、好きこそ物の上手なれって感じか」

「えっと、多分そんな感じだ

ところで……」


と言った後になぜか少し離れて手招きした、なんでだ?ここで話したくないのか?


「あのさ、お父さんには聞こえない声で聞きたいんだけど」

「え?ああ、わかった」


父に聞かれたくない?どうしたんだろう?


「勇者、本当の本当に正直に言って欲しい

俺の戦いってどうだった?」

「え……父親には聞かれたくないのか?」

「お父さんはな、いいことしか言わないんだ

『文句なし!』とか『完璧』とかしか言ってないけど、そんなんじゃ強くなれる気がしない

何か欠点があったらそこを直して、前勇者のようなクズをぶちのめしたいから本当の意味で完璧にしたい、お父さんにいくら『悪いとこないのか?』って言っても言わないからな

もっと強い魔物がいる所に行きたいって言ってもダメって言われるし、勝手に行くわけにはいかないし、ヒューラルの門には門番がいるから出られないし」

「まあ、子供が大切で褒めたいからかな?」

「だから、正直に行って欲しい」

「ふむ……」


でも、たしかに強いのは事実だ

魔物に囲まれても回避できているし、狙いだって正確

俺自身はマナによる身体能力向上で強くはなっているけど、そんな俺よりも正直強く見えてしまう

……ただ


「良い所と悪い所、どっちを先に聞きたい?」

「良い所から」

「セメリさんは狙いが正確だし、石だけでなく重い物とかを投げられるようになったら、武器で弾かれないから一方的に攻撃ができる最強の戦い方になると思うんだよな、敵に攻められても回避しながら当てていて、正直成長したら俺は普通に負けると思う」

「ふーん、めっちゃあるじゃん

じゃあ悪い所は?」

「言葉が汚いというか……まあ、口調に関しては生まれつきだったりするし、それはいいんだけど……」

「けど?」

「せっかくの不意打ちだったのに、いきなり背後で大声出したら意味がないと思う」

「でも、気づいてもいきなり行動は出来ないから不意打ちと変わらないんじゃないか?」

「まあ、たしかにそうだけど」


アニメとかでも背後から不意打ちをするシーンの時、最後まで無言で攻撃するのはカッコいいと思うけど

攻撃する直前とかに「喰らえ!」「おりゃあ!」とか言ってかわされてしまうのを見ると「お前なに叫んでいるんだ!」って登場人物にツッコミを入れることもある


「でも、もっと強いモンスターなら、その叫びでかわされてしまうことも多いし何なら反撃も喰らわされてしまうかもしれない」

「じゃあ、攻撃した後に叫べばいいのか?」

「いや、他の魔物がいるならそいつらに自分の居場所を教えてしまうような行動になってしまう

もう見つかって乱闘になるなら叫んでもいいと思う」

「ふーん?分かった

それで強くなれるなら直すよ」


そういえば、俺達に石を投げた時も「ばけもの」って叫んでいたしな

叫んでいなかったら普通に命中していたかもしれない


「ところで、これは個人的な事だけど」

「どうした?」

「魔物に恨みとかあるの?なんか『死ね!』とか『殺す!』とか叫んでいたし」


言葉に関しては直すのを強制しているわけではない、だけどもどうしても気になってしまう


「いや、別に恨みなんてない

ここにいた奴らも初めて見たばっかりだし

言葉遣いが良くないとか言いたいのか?」

「そう言う訳ではない……その辺りは親の役目だし

まあ、気になったというか」

「まあ、戦う時にお父さんに言われたんだけど、魔物と戦う時は相手を嫌いな物とか人とかだと思って戦えば、怒りで力が増して戦いやすい……ってお父さんが言ってたんだ」

「えっと、つまり嫌いな奴って……」

「もちろん、俺達を殺した奴らだ」

「そりゃ、威力が半端ないことになるね」


内心思ったけど、確かに前勇者と思えば怒りで力が増す、狙いが非常に悪くなりそうな様子はあるけど

セメリさんの正確さは結構なモノだから誤差の範囲かもしれない

あと、セメリさんは魔物を前勇者と重ねて全力の殺意を持って戦っているけど

元をたどってみたら、魔王が出て魔物が増えて……それをなんとかしようと前の勇者を召喚したから、元凶であることには間違いないな


「ところで、ここにいた魔物は全滅したけど

もう帰宅するのか?」

「いや、ちょっと待つか別の場所に行って新しい魔物と戦う」

「じゃあ、次の戦いで試してみたいことがあるけどいいか?」

「え?いいけど何だ?」

「それは、戦う時になったら話す」

「ふーん?分かった」


と2人で会話している時に父親が戻って来た、さっきセメリさんが言っていた別の場所とやらに向かう

セメリさんの戦い方も見たし、次の場所でスリングを試してみることにしよう

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