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勇者はいる、主人公はいない  作者: 虹鳥
第1章・のどかな草原トラストリン

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領主はいる、節減はある

5人で階段を上がり大きな扉へ

その先の廊下を進んで行く

そうしてもう1つ扉が見つかり、開くと謁見室の部屋に領主様らしき姿があった

ちゃんと姿を見るのは初めてで

年齢は思った以上に若くて50代半ばぐらいに見える

少し白髪が混じった髪はほとんどが赤色になっており、綺麗に整えられている

結構な高身長でギルドマスターの遺伝を引き継いでいるみたいだ

顔つきも真剣な目つきの所は似ている、けれども弱弱しい様子になっている

そして、謁見室は……まるでギルドマスターのいた部屋と似ている

校長室のように真ん中にテーブルがあって、向かい合うように椅子が左右に3つづつの6つ置いてあった

そして奥のの椅子に領主様が座っていた

ギルドの方とは違って本は置いてなかったけど、ある程度はどっちかがどっちかを参考にして部屋のレイアウトを考えたのかな?


そう観察していると、領主様が立ちあがって深々と頭を下げた


「勇者達、これまでの無礼をすまなかった」

「いえ、セメリさん達からも前の勇者と同じものと思われましたし……

今と前が違うことを理解していただければそれでいいです」

「そう……か」


俺とギルドマスターのスイトが領主に一番近い所に座り、俺の隣にタスメさん

ギルドマスターの隣に順に品子さんと蜜巳さんが並んで座った


「まず、現在知っていることについて教えてもらえるか?

はい、昨日セメリさんとシキギさんの家に行った時なのですが……」


ギルドマスターにも話したけど、セメリさんから聞いたことを話していった

やはり親子なのか、領主ツキウス様も静かにうなづいて聞いていた


「そうか、まだそこまでなのか……」

「やはり、俺達の知らないことが沢山あるのですね?」

「ああ、こちらの知っていることを説明しよう」


領主は1回座り直して話し始めた


「まず、去年と少し前に魔王城が現れたんじゃ

そして世界中の魔物が急速に増えたんじゃ

ここまではいいかの?」

「はい」

「魔王城が出たのは本当に突然で、そのタイミングで空を見ていたギルドメンバーから本当に急に……パッ!って感じで出たって言ってたな」


そんな1フレームで現れるもんなのか?

いや、地球でもないグラーフィアでもない魔族のいる世界……いわば魔界での技術がそこまで発展している可能性もあるんだろう、建物ごと動かす転移魔法とか


「その後だけど、空に夢中になっていたら

魔王城そのものから欠片のように複数の物体が飛んできてな」

「その1つが、湖の方に飛んで来たんじゃ

飛んで行ったのは魔王城の一部らしくて、それ湖のド真ん中に落ちて来たんじゃ」


セメリさんは基本的にヒューラルにいて、街から外の様子は多分知らいないはずだ

街の外はあくまで親とか人伝てに聞いた事だけだろう


「それが落ちた後はにデカいゴミが来たような状況だったけど、そこから世界中に魔物が急速に増えていったんだ、ここらへんだとあの湖を中心にな」

「あの城から魔族が召喚しているモノと考えておるのじゃ、他の国からの連絡でもその城周囲を中心に魔物の数が増えているからの」

「天空の魔王城から地上に降りた城を経由して魔物が召喚されている……と言う感じでしょうか?」

「そうゆう物ッスか?この世界の魔法ではそこまで強い魔法は無いッスし」

「あくまで予想の中ではだな……魔王城がこことは違う世界から来たとするんだったら

グラーフィアよりも発展した魔法を持っているかもしれないし

俺からしみると、自分の世界とこの世界を比べたら『魔法って何でもあり』って考えている」

「いつもの……ライトノベル知識による…………考察ですね」

「千斗の得意のだね!」


まあ、どちらかと言うとゲームの知識だけどな

魔物の出てくる転送装置(ポータル)があったりするんだろうかな?

逆に地上から行くことは……多分できないだろう、そうだとしたら地上にあるほかの城から天の魔王城に行ってとっくに解決しているのかもしれない


「その可能性が高いのう、それで魔王城が出てからあの湖の城を何とかしようとしたんじゃ」

「……その時は、湖は汚れていなかったんですか?」

「そうじゃ」


湖は汚れたのは前勇者が去った後だったな……


「私たちは行けないからギルドの人達に頼んでいくことにしたんだ

魔物が出てきても湖が綺麗だったから普通に冒険者たちは船を出していこうとしたんだ」

「え?『私たちは行けない』どうゆうことですか?」

「それは私と親父の2人でこの街を覆っている結界を“常に”張っているんだ

街の人を守るためでもあるし、外の魔物でいちいち城壁を壊されたら金がかかるからな」

「……へ?」


え?大きい街を?覆っている?結界を?常に?


「凄いね!あの私たちと戦っていた時みたいにやっているんだね!」

「ああ、あんな感じだ」

「ちょっと待ってください!」

「どうしたソラアミセント?」

「え?常に張っているんですか?この街結構大きいですけど!?」

「そうだが?マナの心配をしているのか?親父と共にしているから造作もない」

「…………俺達や普通にこの街に入れましたが?見た感じ結界の壁があるように見えませんし、俺たち以外も他の人達も普通に通れてますが?貼っているのですか?」

「魔物は通らないで人は通れる結界を張っているからのう

代わりに人は通れるから罪人とかも通れるのが問題だがのう」

「………」


……規模が大きすぎる、あまりの大きさに想像がつかない

たしかにチート系主人公ってとんでも規模をいくらでも見たことがあったけど、常に大きな結界を張る事をするとか流石に見たことが……多分ない


「って、まさか俺達と戦った時に張った結界って、二重に張れててなおかつ俺たちと戦ったという事ですか?」

「まあ、常に結界の中にいるからまだ平気だ」

「…………」


アミルクリスタルを扱えていたら普通に魔王城も簡単に壊せていたんだろう

リベンジする気は無いけど、多分魔王を討伐しても絶対に勝てない負けバトルにしか思えてこない

こちらのステータスやレベルが高くても戦闘経験の差で絶対に勝てる気がしてこない


「逆に言えば自分よりも離れた所に結界を張っていると消耗が激しいことになる

結界を張ったまま一度街を出た時は、一気に枯渇したぐらいだ

片方残って……ってやったら共倒れしかけたぐらいだったし」

「だから、冒険者の人達に頼んだという事ですね」

「そうだ、けど行く前に王都セカンドルトの方から通達が来て……

『別の世界から勇者を召喚し、その人たちに任せて欲しい』と書かれていてな

冒険者たちの手を煩わせる訳にも行かないし、幸いにも魔物が大量発生しても外に行かずに街にいれば何とかなるし、その勇者達に任せようとしたんだ」


けど結果は……この惨状を見れば火を見るよりも明らかだろう


「そうして少し待っていたら勇者たちが来たんだ

救ってくれると思って歓迎しようとしたけど……ここから先は一度聞いたなら言わないほうがいいか?

アンタらにとっては昨日すぐに来れなかったぐらいの事だったからな」

「はい…………お願いします」


街に来て、2人が殺された事だ

この話は……何回も聞きたくはない


「これ以上の被害を抑えるために、湖の城の事は置いといて早く街から出そうとしたんじゃ

目的を聞いて、アミルクリスタルが欲しいと言ったんじゃからすぐに渡そうとしたんじゃ

そしたら意味が分からないことを言っていて『何かして欲しいことを言えよ』と言っていたんじゃ」


口調は非常に悪い、たとえ権力を持っている優しい人相手でも、敬語を使うつもりが一切ないような奴なのが聞いて分かった

厄介払いと思われて言ったのか、恩着せをするために言ったのかどっちなんだろう

いや、カスの事を考えても無駄だ、どうせどっちもだろう


「だからの、余計なことはして欲しくなかったんだが

仕方なく湖の城の事について言ったんじゃ

面倒ごとを頼んでいるはずなのになぜか意気揚々としていたんじゃ

船の運転を扱える人に頼もうとしたんじゃが……あんな奴らと共に居させるなんて操舵手の負担が大きすぎるんじゃ……だから、いったん説明を省くがあるやり方で前勇者のみで行ったんじゃ」


一旦説明を省いて?すぐにでも聞きたかったけど、相手のペースに合わせることにしよう

すぐにでも分かりそうだし


「そういえば、前勇者共って何人いるんですか?」

「9人じゃ」

「……俺達より多いと聞いていましたが、思った以上ですね」

「あそこまでの人数いたなら、誰であっても戦おうとは思わないだろう

……あの少年は本当に良くやったと思う、勇者が別の世界から来て世界を救うとかそんな宿命を負ってなかったら、私だったら容赦なく皆殺しににしていたし、したかったよ……クソッ」


非道な奴らが9人もいたら普通に立ち向かおうと思うわけないか……勇者だからこそ変に機嫌を損ねたら世界を救わなくなってしまう、アミルクリスタルを使って天空の魔王城に行けるのは勇者のみ

ふざけた犯罪者相手に接待をしないと世界が救われない

詰んでいるにもほどがあるだろ

でも、悲しいことにこの世界の人は悪くない

……この世界の人“は”だ


「そいつらは行って、その城の事を解決したらしくて

ここでアミルクリスタルを回収したら行ったんじゃ

…………魔物は確かに減って行ったんじゃが

それと同時に、湖が汚れてしまったんじゃ」

「……」「……」「……」「……」


あらかたはセメリさんからも聞いていたけど、やっぱり胸糞が悪くなる話だ

それだけ暴れて、逆に環境が悪くなったってんなら

俺たちと同じ者と考えたらに怯えられるのもそうだったし、セメリさんみたいに密かに恨んでいた人もいたんだろう……だからこそ、リスクを考えて日ごとに宿を変えたりしていた


「あのクソ共のせいで、アンタらが信頼を得るのに時間がかかってしまったようなものだしな

ギルドに来たのは予想外な所はあったけど、結果としては街の人達を安心させる結果になったしな……ありがとう」

「どういたしまして、その……質問なのですが?」

「なんだ?」「どうしたんじゃ?」

「その、一旦置いといたことに対しての質問ですが前勇者どもが船を扱えなくても行けた理由を聞きたいのですが……?」

「ああ、実はこれなんじゃ」


そう領主様はいうと懐に手を入れて何かを出した

チェーンのような物が首の方に繋がっていて首飾りになっている

ぶら下がっている物が何かアミルクリスタルのような形をしていたけど少し色が薄い青色をしている?


「これは、アミルクリスタルを真似て作った魔道具なんじゃ」

「マネして作ったモノ?」

「アミルクリスタルを増やそうとしたの?」

「ちょっと違うんじゃ」

「アミルクリスタルを増やしても…………この世界の人達にはまだ扱えませんし…………」

「ああ、だから試行錯誤を繰り返して『節減』して作ったのがその首飾りなんだ

アミルクリスタルほどでないにしても、負担を減らし強い力を出せるものをな」

「いつの間にそう言ったのを開発したんッスね?王都でも聞いた事無いッス」

「魔王がまだ出てない頃、結構昔に『完成したら伝える』とは言っていたんじゃ

もしかすると、まだそちらが生まれる前だったかの?」


それってここの世界換算で26年以上前ってことになるのでは?


「聞いた事ないッスから……まだ完成前だったッスか?」

「ああ、アミルクリスタルは私にだって親父だって扱えないけど、それでも大きい力が出せる奴が欲しくてな、その為に時間をかけて作っていたんだが……まだまだ未完成の時に魔王城が出るのが先だったとはな……」


王都の方で「何かあった時の為にアミルクリスタルを作ったけど、この世界が平和で昔よりも弱くなってしまった」って聞いた時はズッコケるぐらいツッコんだけど

でも、魔王城が出てない状況下であったとして、何かあった時の為に転んでもただは起きないなりに試行錯誤していたんだな……


「じゃあ、その首飾りを使って魔法を強くして結界を貼っているってことですか?」

「え?」「え?」

「え?」


ん?なんでそこで親子共に疑問に感じたんだ?

どうゆうことですか?


「別に、結界を貼ること自体は造作もない」

「ああ、それぐらいは魔道具が無くても2人いれば問題なんじゃ」

「そうなんですか!?」

「まあ、この首飾の魔道具は作っている最中だからな、ある程度の時間はグラーフィアの人達が扱うことはできるけど、常にとか長時間の使用は負担になる

私が自分で試したことはあったけど、使っててちょっとした時間で動きにくくなるぐらいだ

これを使って街の外に出て行動できるか?と試したことはあったけど、結果はまだ改善の余地ありって状態だった、湖まで行くのはまだ遠い話だ」

「…………そこまでの負担って、俺達には大丈夫なんですか?」

「あのカス共が使えたんだ、アンタらにも使える

……試し撃ちでここの一部とギルドの一部を壊されかけたけどな」

「……そう……でしたか」


あの壊れた後、そのような経緯があったとは……

しかし、地球の人でも長時間使用による体の負担が無いか心配な所はまだある

まだアミルクリスタルを手に入れてないのに何か後遺症を持っ元の世界に戻るなんてしたくないからな


「その、前の奴らってネックレスみたいなのを使って行ったの?」

「ああそうだ勇者アキハラシナコ、これがあるとのマナに関する身体能力や魔法が強くなるから……いっそのこと湖を一時的に干上がらせたり、湖の端から城まで跳躍して行ったんだろうな」

「その…………魔道具をよく返してもらえましたね……………?

昨日もそうですが………………前勇者のやつらって…………そういった強い装備を………………借りパクすると思いましたし」

「いや、返されてない」

「え………じゃあこの魔道具は………?」

「簡単に言えば、2つあった内の1つなんじゃ……この魔道具はな」


蜜巳さんは絶句している、そこにフォローするかのようにタスメさんが会話を続けた


「ということは、持っていかれたって事ッスか?」

「ちょっとちがうんじゃ」

「ちょっとッスか?」

「ああ、さっき飛ばしたとこをを順を追って説明する

湖について説明した後、操舵手が誰も行かないから

親父と私で持っていた魔道具の内、私のを持って行かせたんだ……あくまで貸すっと言ってな

使い方をある程度聞いて、湖に行ったらしく……そこの魔物を倒していったん戻って来たんだ

イヤな気分になるような得意げに嬉しそうな顔をしていたから本当にあの城で倒した様子なのは分かった

それでアミルクリスタルを渡して、魔道具を返してもらうとしたら


『アミルクリスタルの下位互換でいらないからそこら辺に捨てた』

って言ってたんだ」


ふざけてやがる!

何をそこまで非道な真似ができるんだあの奴らは!!

机に拳を叩きつけたくなるけど、それは我慢する


「殺したかったけど、それは抑えて奴らは次の国へ行ったんだ

その後に冒険者の人達に探しに行かせたけど……いまだに見つかっていないんだ

湖も汚染されて、探しきれない状況になってしまってな

主に探せたのはヒューラルから湖までの道と湖周辺ぐらいだ

捨てられたって言っていたけど本当は盗んだかもしれないし、あの湖の中に投げ入れたのかもしれない、冒険者に首飾りを持たせて無理をさせたくないしな」


でも、湖内にあったとしてもあそこまでの汚染具合、果たして見つかるのだろうか?


「って感じなのが、大体私たちの前勇者について知っている事だ

前勇者どもは誰がいたか?とかまではあまり分かっていない、後は王都に行けば全部判明するのかもな……」

「……今回の勇者は、本当に話を聞く人たちだの」

「話を聞くのは普通だもん!」

「私たちは……………別の世界の人達なので…………分からないことが多いのは怖いです…………………なので、人の話はちゃんと聞きます」

「ほんと、アンタらが最初の勇者だったらよかったな」

「俺もそう思うッス、街でここまで凄惨なことになっていたって知らなかったッス」

「……………」


更なる前勇者どもの悪行を聞いた

正直な事を言うなら「地球とも違う異世界から来た」奴らの仕業と思いたかった、そんな平気で子供を人殺しをして、家々を破壊して、人の物を勝手に捨てる

そんな奴らと同じ世界にいると思いたくない……本当はそう思いたかった


「……勇者ソラアミセント、大丈夫か?」

「…………なにがですか?」

「お前、涙がたれているぞ」


そう言われて周囲の人達が一斉に俺を見る

手で拭うと頬が涙で濡れていた

……静かに泣いていたのか?俺は?


「大丈夫!?千斗!?」

「千斗さん………大丈夫ですか!?」

「ソラアミセント、無理しないで欲しいッス」

「いや、ごめん

その、カス共が最悪すぎて

俺の元々いた世界で見た面白くない作品の登場人物のような人間味を感じない奴らが本当に“いた”って事実が…………受け入れなくて」

「……今日で話はやめておくかのお?」

「いえ、聞きます

明日は丸一日休むかもしれませんけど……」

「まあ、アンタが止めないならそれでいいが」

「それで、さっきまでの質問はあるかの?」

「あの、ヤッパリ地上で今でも迷惑をかけてますか?」

「もちろんじゃ、詳しいことはまだ聞けなかったが

いろいろな所で相当な迷惑をかけているらしい」


ほかの国との連絡手段が限られているから、全貌は不明なんだろう……

いち早く仕留めたいけど、目の前の困っている人を放置なんてできない


「それで、改めて聞くがアミルクリスタルはどこにあったんかの?」


……そうだ、湖に沈んでいるアミルクリスタル

それを何とか引き上げる方法を聞かなくては

多分節減のネックレスは干上がらせることができると言っていたし使えば行けるかもしれないけど

…………最後の1個を借りられるのか?

思った以上に長くなったので次回に続きます

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