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勇者はいる、主人公はいない  作者: 虹鳥
第1章・のどかな草原トラストリン

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3人は揃う、2人も出会う

一応目が覚める、でも全く寝た気がしなかった

タスメさんも同じだったのか少しふつらふつらしている


「……大丈夫ッスか?ソラアミセント」

「……ちょっと、しんどいかも」

「ギルドマスターの所へは行けそうッスか?」

「それぐらいだったらなんとか行けるかもしてない」


戦いとか激しい運動は今日は出来そうにもないけど、でも話なら多分聞ける

前勇者の事になるから結構な重い話になりそうな気がするけど……


「とりあえず、女性陣が大丈夫かどうかを聞いてからでもいいかな?」

「そうスッね、行くのもしんどいなら俺がギルドマスターの所に行って『ちょっと休ませてほしい』と伝えるッス」

「お手数をおかけします」

「そこまでかしこまらなくっていいッスよ」


そう思いながら女性陣の部屋をノックするとすぐに出てきた


「おはよー」

「おはよう………ございます」


いつもよりも元気がない雰囲気がした

あまり寝てないのか、それとも夜の間泣いていたのか2人の目の周りが赤くなっている


「その、一応今日でギルドマスターの方へ行こうと思っているんだけど

難しいなら別日に……」

「私は今日行きたいな、このまま縮こまっていたくないし!」

「私も……………このまま嫌な気持ちのまま……いたくない!」

「……2人にやる気があって良かった」

「そうッスね」


それぞれの準備をして宿を後にして出かけることにする

馬車に乗ってギルドに向かっている最中、いつもだったら楽しく雑談をしている様子だったけど……今は無言だ

その状態のままギルド風のたまり場にたどり着くと……


「あれ?」

「どうした、タスメさん?」

「ギルドの前の方、あの人って?」


不思議がっているタスメさんの声を聴いて身を乗り出しながらギルドの方を見てみると……


「あ!ギルドマスター!?」

「え?ギルド前に!?」

「私たちを…………待っていたのでしょうか?」


入り口の方にギルドマスタースイトがいた、え?蜜巳さんの言っている通り待っていたのか?

まだ朝の混むときではないけどギルドの方は大丈夫なんだろうか?


「…ん?来たか?」

「ギルドマスタースイト、おはようッス」

「おはようございます」

「おはよー!」

「おはよう………ございます」

「ああ、おはよう

朝に戻って来るかと思って待っていたんだ」


そういえば、本来は依頼が終わったらギルドに行かなきゃいけなかったんだっけ……昨日聞いたことが衝撃的すぎて忘れてた


「夜に戻らなくてすいません!」

「気にするな、むしろ持ち逃げするような輩もいるし

予定された日以上に延滞するのとかいるし、むしろ勇者達は今まで勤勉にしていたぐらいだ

それに昨日の事を聞いて……結構頭がいっぱいになったらしいな

ダウンする可能性も考慮していたんだ

昨日来たとしても『また明日来ます』と言うと思っていたしな」


そこまで、想定していたとは思わなった

ギルドマスターは例え異世界人相手であっても人の事をよく見ているらしい

とりあえず、昨日しそびれた手続きを簡単に済ませた

一応、1日ぐらいのちょっとした間ならばギルドマスターがギルドを開けても大丈夫とは言っていた


「私から知っていることを伝える……って本当はしたいけど

親父は領主としての自覚を持たさなきゃいけないからな

アンタたちはちゃんと街の人達の為に動いていた

だからこそ、ちゃんと今回の勇者達の様子を見せなければな」

「俺達の事をですか?」

「ああ、『ふぁらんくす』って感じに引きこもってたんだろ?私は街の様子を見て勇者達の事を理解したけど、一度親父の所に行ったけど勇者の事になると逸らしたり無視したりして話を聞かずに取り付く島もないって感じだった

実際にアンタらが来た方が分かりやすいと思ってな」

「それなら……………いきましょう………私たちは前の勇者とは違うことを…………伝えに行かないと」

「いつも以上に丁寧にすればいいよね!」

「そうだ、何かあったら私が守るからな」

「頼もしいです……………よろしくお願いします」


と話しながら、向かって行く

本当にその「何か」なんて大事(おおごと)が起きなきゃいいけどな……

馬車に乗って領主の館に進んでいる道中、俺はギルドマスターにセメリさんから聞いたことを伝えた

俺達がどこまで聞いたか?を伝えている間

ギルドマスターは静か相槌を打つようににうなづいていた


「……多分ヒューラルで1番勇者の事が嫌いであったセメリ、彼からのイメージ払拭できた様子は見えたか?」

「そうだと思います、じゃなかったら会話もできなかったと思いますし」

「……そうなったなら良かった、だから私は会わせたかったんだ」

「やはりそうでしたか……まだこの街にいる間、個人的にですが友好的な交流をして行きたいです」

「ああ、いくらでも仲良くなって欲しい」


そうして領主の館にたどり着いた時、改めて横側にあった崩れている所が「改めて」目に入った

外側から内側になるほどひどい有様になる状況

昨日の前勇者の事を聞いて、その様子がなんとなく想像ついてしまう

何人いたか分からないけど、ここまで非道なこと

普通に生きていたらしない

異世界召喚作品で「主人公が弱いからと迫害される」作品の時

主人公ではない選ばれた方の人は……見苦しいぐらい滅茶苦茶調子に乗る

ああいったやつらがいたんだろうか?

ちょっとでも気に障った瞬間にあたるようにしていたんだろう

本当に最悪の存在だ


「ソラアミセント?大丈夫か?そんなに瓦礫を見て」

「あっすいません、ちょっと改めて被害の様子をみて、嫌に想像をしてしまいまして…………」

「そうか……こういった壊れた所は街の外側から直している

ここは中心で私や領主のような力あるものが多いからこそ一般人の多い街の外側を優先的に行っているんだ」

「だから、外側から内側になるほど結構な状態になっていたんですか……」


ギルドマスターも暗いような怒りのような表情をしていた

そう見ながらも領主の館にたどり着く


「ん?あれは?」

「え?また来たのか?」


始めて来た時に対応した門番さん達もなんだか動揺しているような反応をしている、けど今は


「って……ギルドマスター!?」

「そ、そっちもまた来たのか?!それも勇者と!?」

「こんにちは」

「こんにちは!」

「こんに…………ちは」

「こんにちはッス」


ギルドマスターもいる、「また」って言っていたけど「1回行った」ってさっき言っていたしな……


「こんにちは

とりあえず、親父に合わせて欲しい」

「は!はい!ただちに!」


少し慌ただしくしながらも、以前のように会うまでの手続きをしていた

玄関横の細長い箱の中にそれぞれの武器をしまっていき……あれ?


「ギルドマスター?武器をしまわないのですか?」

「ギルドを出た時から元から武器は持っていない、小手も必要ないからな

何かあったとしても素手で何とかする」


そう言って何もしないまま進んで行く、けどギルドマスターがいるときでも同じように玄関にて待機させられた

待機して待っている所は、以前と同じバ○○○ザードの1作目スタート地点のような中心に大きい階段の見える構図

待っていると2階の大きな扉が開かれた、前の時のように頭を下げるようにしようとしたが


「しなくていい」


手を差し出されて止められた

そうしていると、2階の扉が開かれて領主さまの姿が現れた

その姿は……やっぱりファランクスだ

やっぱりガシャンガシャンと音をたてながらも隙の無い陣形で来ている


「娘よ今は話なんて」

「いいから聞け、今は勇者もいる」

「なっ!?は?!」


どうやらギルドマスターしかいないと聞いてなかったらしく、俺達がいたことに声だけで分かるぐらい動揺していた

それでもファランクスは動じていなかったが


「はい、空網千斗です!」

「秋原品子だよ!」

「小沼……蜜巳です」

「タスメもいるッス」

「……勇者、本当にいるのか」


その声は、疑問って感じには聞こえなかった

なんだか怒りのような風にも聞こえる?

そこまで勇者の事が嫌いなのか?

好きの反対は無関心、街の人達は結構俺たちに対して肯定的な気持ちを聞いてきたけど

領主は「関わりたくない」と言う気持ちを感じて来る

まるで「早くこの時間が終わって欲しい」と思っているような雰囲気


「こんなところで何をしているんじゃ?まだアミルクリスタルは見つかってないのか?」

「見つかりました、けど入手できる状況ではありませんでした」

「それは、わしの手助けが必要なのか?」

「分からないよ!あの湖の中にあるけど取れないからこの街で探しているの!」

「それなら、わし以外に聞けばいいじゃろ」

「そうですけど…………それに、私たちは……………………色々と聞きましたが

この世界で何があったかも……………しりたいですし」

「だから、それは自分の目で確かめて欲しいと言ったじゃろ?」

「……そうッスけど、やはり一番の権力者に聞くのが早いと思うッスし」

「ワシでなくてもそこにいるギルドマスターの娘がいるだろ?」


ギルドマスターの言っていた通り、本当に領主は取り付く島もないって感じだ

本当に俺たちが早く去って欲しいと思っているようなそんな様子


「……チッ、やっぱり腹が立ってきた」

「ギルドマスター?落ち着いてください」

「勇者達、選択肢を2つ与える」

「何でしょうか?」

「1、今から私が大声を出して突撃して無理やりにでも話を聞かせる

2、勇者達で説得する

すぐに選んでくれ」


ギルドマスターの顔を見れば、非常にイラついている顔をしていた

親父さんの態度に我慢の限界が迫ってきている……でも


「2でお願いします、ちょっと俺は強い言葉を使うかもしれませんが」

「それなら任せる、私の限界が来るまでが時間制限だと思ってくれ」


大声を出して無理に話を聞かせることもできるだろう

でも、親子の関係としてもこういった力比べやねじ伏せで決めるのはよろしくない

ちゃんと通じる可能性はあるかもしれないけど……それに賭ける!


「千斗?いける?」

「すぅーはぁ、行ける」

「無理は……しないでくださいね?」

「……念のために耳は塞いでおく準備をしてくッス」


俺は、一歩前に歩く

ファランクスは一瞬ガチャンとなって警戒するような要するに見える

でも、俺は決してひるまない

ここでひるんだら、怯えていると思われれるし説得力が落ちてしまうから


「領主ツキウス様」

「な、なんじゃ改まって?」

「ツキウス様の領主の仕事はなんですか?」

「それは、今のアンタらに関係……」

「関係あるかないかは俺たちが決めます、教えてください」

「……領主は、トランスリンに住む人たちが快適に暮らすように仕事をする

これでいいかの?」

「では、そのトランスリンに住む人たちが快適に暮らせるようにはどうするのですか?」

「もちろん、貿易とか街の人が欲していることを聞いて…………」


「街の人」と「聞いて」って言った

ここだ


「食い入るようにですいません領主様

では、街の人から話を聞いて……と言いましたが

今の街の人達の意見は聞いていますか?」

「……何が言いたいんじゃ?」

「親父、アンタそういった黒板に書かれた資料越しでしか見てねえだろうな?」


黒板越し、つまりは文面上でしか俺たちの事をまだ知らないんだろう

正論のいい追撃をありがとうギルドマスター


「…………」

「では領主様、ギルドマスターの意見を聞いて更に疑問に思いましたが

領主様自身は『街の人達は今の勇者の事をどう思っている』か知っていますか?」

「悪い印象を持たれているのだろう?」

「ええ、最初はそうでした

けど、今はギルドに入って人々の為に行動をしています」

「ギルド?!何をそんな悠長にしているんじゃ!?」


領主の反応はまるで初めて聞いたような反応をしていた

街の人達にはもう知れ渡っているのにもうギルドに入って結構経つというのに本当に知らなかったんだ

そこまで引きこもっていたんだろうか?そんなにも勇者が怖かったんだろうか?

それに「そんな悠長に」とも言っていたけど、今まで誰にも言われてないし「急いでほしい」って態度も見たことが無い

領主自身は本当に急いで「世界を平和」にしてほしい訳ではなく、急いで街から出て欲しいんだな……


「それは違うよ!そのアミルクリスタルを手にいれて世界が平和になっても

この街の人達から信頼されないの嫌だもん!」

「勇者は………危険な魔王や魔物だけでなく…………………困っている人を助ける…………ものだと思っていますので」

「だっ……だからこそアミルクリスタルを……」

「領主様、お言葉ッスが

勇者達の言ったアミルクリスタルを取るだけのやり方ではなく街の人達を安心させる方法に賛成したッス

前の奴らとは全く違うッスし」

「ギルドに入ってからの行動も見てきたけど

私からして見ても勇者と言う立場抜きに勤勉で真面目だ

結構な日にち働いてもいるし、他の冒険者からの信頼も街の人達からの信頼も厚い

むしろヒューラルで信用してないのは親父アンタだけじゃないのか?」

「…………」


正論を言われたからなのか押し黙ってしまった?

品子さんも蜜巳さんもタスメさんもスイトさんも反論をありがとう

ネットにいるようなの主体性の無い、人の意見しか言わないし従わないような奴らにはなって欲しくない

ダメ押しのトドメを言ってみるか


「領主様、お願いがあります」

「………なんじゃ」

「俺達より前に勇者がいたことは聞きました

そいつらがこの街で非道な事をしたことも聞きました

でもそれは去年の事

俺たちは今年来た前の奴らとは違う3人の勇者です

そのファランクス……隙のない陣形に籠って外部から聞いた情報とかだけでなく

ちゃんと自分の目で街の人達を、俺達を見ていただけませんか?

ヒューラルに住むトランスリンの領主として、ちゃんと街の人達を『観て』ください

そして、何があったかを…………

まだ全貌が分からないからこの街で何があったかを教えてください」


そう言い渡した、少しの間無言の時間が流れた

俺もスイトさんも静かに領主を見据える

品子さんも蜜巳さんもタスメさんもじっと見ていた

ファランクスを作っている傭兵の人達はちょっと居場所が悪そうにしているけど、解放されて欲しい


「分かった、けど少し時間が欲しい」

「親父、それはどのぐらいだ?」

「昼までには終わる、陣形を解いて働かせていた傭兵たちを休ませておきたいからな……」


そう言いながが二階の扉に去っていく

扉が閉じられたけど、説得が上手く行ったらしい

これでこの街で知る限りの前勇者の話が聞けるだ………ろ………


「あ、れ?」

「千斗!?」


急にふらつく、めまいか?

おもった以上に緊張してたらしい

駆け寄ってきた品子さんは回復魔法をかけながら駆けつけて来た


「あ、う、ありがとう

ちょっと緊張の糸が切れてしまったらしい」

「無理しないで!昨日は話を聞いて私たちに言っていたし、今回は私たちだけで聞いて後で話すから!!」

「まて、そこまではさすがに大丈夫だ

さっきの回復で立てるし……ここまで来て引き返したくない」

「無理しないでね!」


と話していると、ギルドマスターまで近寄って来た


「勇者ソラアミセント」

「どうしましたか?」

「ありがとう、親父の説得をして」

「どういたしまして

街の人達に信頼されたいと言いましたが

それは領主ツキウス様も含めてですから」

「……本当にアンタらが最初だったらよかったな」

「本当にそう思います」


立ち上がって2階の方を見ると、傭兵の人達がぞろぞろと出てきた

多分ファランクスをしていた人たちだろう

俺たちと目が合うと

「ありがとうございます」「領主さまをお願いします」

と小さな声を言いながら持ち場の方へ行った

そして最後に歩いていた人は


「ではみなさま、2階の領主様の所へ行ってください」


と言われて、全員で進むことにした

いよいよ明らかになるのだろう

一年前の前勇者どもの事で

何があったかを

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