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勇者はいる、主人公はいない  作者: 虹鳥
第1章・のどかな草原トラストリン

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69/72

共有はある、衝撃もある

重要な説明をあまりダイジェストにしたくないので出来る限り相槌を打たせていただきます

宿にたどり着く、いつも通り男性と女性の2人で分かれて部屋を確保し

風呂と晩御飯を終えたのちに1つの部屋に集合する

俺の様子を見て、暗い状態のまま晩御飯を迎えたくないと品子さんは思ったのか気をつかわれてしまった、申し訳ないがそれと同時にありがたい気持ちになった

ある謎を解くのも晩御飯(ディナー)の後って言うし


「すうううぅ……ふぅ」

「千斗?大丈夫?」

「深呼吸は…………いくらでもして…………いいと思いますし」

「……大丈夫、覚悟は決まった」


俺の準備は終わった、けどまだだ


「なあ、品子さん蜜巳さん」

「なあに?」

「どうしたの?」

「事前に言っておく、俺がセメリさんとシキギさんから聞いたことは絶対にショックを受けることだ

俺がそれを聞いて絶叫したぐらいだった

その覚悟を持ったか?」

「私は大丈夫、みーちゃんは……」


と、品子さんが心配そうに蜜巳さんの様子を見たとたん

蜜巳さんは品子さんに抱き着いた


「これで…………頑張ります」


ホラー映画をぬいぐるみを抱きながら頑張って見るような光景

普段通りだったら尊さを感じたかったところであったけど

今はそれどころではなかった

チラリとタスメさんの様子を見ると、静かに頷いて覚悟ができたと合図をしていた


「分かった、じゃあ話すけど……」


俺は気を引き締めて話すことにした


「まず、はっきりと言ってしまうけど

俺達は召喚された勇者だ、でも元々は俺たちより前に違う勇者がいた」

「私たち3人以外に?」

「ああ、何人いたかは分からないけど、俺たち以上の人数でいたらしい」

「…………だとしたらおかしいですね?

もしその人たちが………………魔王討伐に成功していれば…………私たちは召喚される事はなかったはず…………」

「まだ詳しいことは分からないけど、多分失敗したと思うんだ

……でも、ただの失敗だったらここまで怯えられることは無かったんじゃないかな」

「どうゆうこと?」

「どうゆうこと…………ですか?」

「…………」


チラリとタスメさんの顔を見てみたけど、目を逸らしていた

多分知っているんだろうけど、言えないという苦しみを感じているんだろう


「前の勇者、アイツらは………

この世界に相当酷いことをしたうえで失敗したんだ」

「相当って……?」

「………………」


一度大きな深呼吸をする、2人もさらに真剣な目になって覚悟を決めたらしい


「前勇者はな、この街に来て救いに来たのではなく

破壊の限りを尽くしたんだ

ヒューラルにあった破壊の後は前勇者が壊した後だし

色んな物も盗まれたらしい」

「ひ……ひどい…………」

「そして…………あいつらは殺しもしたんだ

シキギさんとセメリさんを殺した」

「はっ?え?ええ!?

そんなっ!?なんでっ!?」


品子さんは混乱と疑問で涙を流し

蜜巳さんは品子さんにしがみ付いたまま震えていた

俺自身も、話す覚悟をもってしても相当精神的にクるものがあった……本当に胸糞悪い


「マジ……ッスか」


タスメさんでも、やっぱり予想外過ぎたのか青ざめている


「何で…………殺しちゃった…………の?」

「……端的に言えば、邪魔されてムカついたって感じらしいんだ」


俺は再び深呼吸をして話を続ける

伝えなければいけない、俺達が勇者として共有しなきゃいけないことだ

それからはセメリが話していたことを伝えた

元々勇者に憧れがあって興味があったこと

大人たちに秘密でセメリとシキギで見にいった事

でも、最低な人たちであった

その様子を見て帰ろうとして……


「逃げようとしたけど、シキギさんは捕まってしまったんだ

アイツらは……理由は考えたくないけどシキギさんを連れて行こうとしていたんだ

大人たちは怖がっていたのか動けなかったけどセメリさんは必死に助けようとしたんだ」

「勇気あってすごいね……」

「ああ、本当に怖くはなかったらしい

セメリさんは物を投げるのが得意で、ありったけの石を投げて抵抗をしていたんだよな

……けど」


もう一度、深呼吸をして話を続ける


「人数も多くて、相手は悪い意味で躊躇をしない奴らだったらしく

投げられた石を叩き落とされて……殺された

そして、報復と言わんばかりにシキギさんも殺されて家を破壊されてしまったんだ」

「…………」「…………」「…………」


絶句、失望、そのような感情が表情から読み取れる

俺も……絶叫をしたし、しばらく動けなくなったし…………涙が止まらなくなった


「千斗」

「どうしたんだ……?」

「まず、辛い中

教えてもらってありがとう

みーちゃん……も言って欲しいけど」

「無理しなくていいよ」

「うん、後で言おうね?」


蜜巳さんは品子さんにしがみ付いたまま泣いている

品子さんの問いかけに辛うじてうなづいている様子が見えた


「それで千斗、なんでアイツらはこんなにもひどいことしたのかな……?」

「多分、ゲーム感覚だと思う」

「ゲーム?どうゆうこと?」

「まあ、説明をすると

ゲームに出てくるキャラクターって、言い方はアレだけど好き勝手できるよな?

助けることもできれ迷惑をかけるような行為を」

「う……うん?」

「でも、ゲームだったらリセットをしたりしてやり直しをできたりするし

逆に言えばゲームの中だからといって色々と試せる

そしてここは異世界で魔法とか剣などがあって、現世からして見たらまるでゲームの世界だと感じることもあるだろう……」

「でも、千斗は散々言っていたよね?

元の地球と異世界では考えが違っていても命とか死とかの重みは一緒って…そんな感じの言ってたよね?」

「ああ、言っている

でも、前勇者の奴らはそんなの考えてないと思うんだ

こういった世界に来て、物語の主人公になった気になって

最初はいいことをするかもしれないけど、それで褒められたりとかしたら……調子に乗って

ちょっとしたミスを許されて、そこから綻びが大きくなって

最終的にやりたい放題になってしまったような……多分そんな感じ」


出来の悪い物語で何回か見たことがある

仲間が全肯定する作品とかにあるけど、そうなると主人公ではなく「作者が」調子に乗ってやりたい放題をするような内容、単純に癖な流れになるのであったら見ていて楽しいけど

本当に邪知暴虐な振る舞いになる場合もあって……そっちは見苦しくなる


「友達関係とかで気を付けなきゃいけないことだよね……何だったかな、仲が良くてもちゃんとマナーを守るみたいなことわざって?」

「『親しき中にも礼儀あり』のことか?」

「そう!友達同士で仲良くするのは大切だけど、仲がいいからって何でもしていいわけじゃない

それこと『ごめんなさい』や『ありがとう』は絶対するってこと

みーちゃんとそれをずっと守って仲良くしているし」


友情に関してそういった事も大切だし、最も大切なことはお金に関するやり取りをしないことだ

2人はそのまま仲良くしていて欲しい

……まだ蜜巳さんは話せる状況じゃなさそうだけど


「それで、そいつらは今はどうしているの?」

「……多分その辺りは、ギルドマスタースイトや領主ツキウス様が詳しいと思う

俺があくまでセメリさんと…………ギルド依頼が終わった時にシキギさんにも聞いたけど

アイツらはアミルクリスタルを回収したらしく、生き返った後はいなくなった

でも、その後に川や堀が汚れて、そうして勇者はクソって偏見を持った

俺たちが何も知らずに街に来た時は『前の勇者』と『俺たち』が同じ物って考えていたから石を投げてたらしい」

「……そうだったんだ」

「でも、俺達がギルドに入って行動していたのをほとんど見ていたり聞いたらしいんだ

それで前の勇者と俺達は違う物とちゃんと理解をしたって感じなんだよな」

「本当に……今回の勇者達の選択は違わないッスね」


タスメさんは明確に「今回の」と話していた

……それに触れるのは後回しにしておこう


「あのさ、ここからは本当に個人的な事を2つ話すんだけど」

「いいよ、ゆっくり話して」

「まず1つなんだけど、明日はギルマスと領主様の所に行くとしてもすぐに湖の方には行かないと思うんだ、準備とか空いた時間にギルド依頼とかすると思うし

俺はその隙間時間に、セメリさんやシキギさんい会ってもいいか?特にセメリさんと」

「どうして?」

「放っておけないとか、普通に勇者としてとかではなく友好的な関係を築きたくて」

「じゃあ私もそうしたいよ!シキギちゃんにまだ教えてない遊びを教えたいし!」

「ああ、それいいな」

「そして、もう1つな何なの?」

「それは……」


コッチは結構重い方の話だ

1回深呼吸をして、落ち着いた後に話し始める

もしかすると、意見が食い違う可能性もあるし

その時の覚悟もしておく


「セメリさんもシキギさんもお願いしていたんだ

無我夢中だったから前勇者の誰か分からないけど『自分達の(かたき)を取って欲しい』

って言っていたんだ」

「…………」

「俺は正直、敵をとるつもりではあるけど

まだ考えがまとまらなくてな……そのっ」

「勇者達」


急にぴっしゃりと話を遮られてしまった

声を出したのはタスメさんだ

急にどうしたんだ?


「え?タスメさん?どうした?」

「…………王様、命令に背くことをお許しくださいッス」

「大丈夫!王都セカンドドルを出る前にカイザムもナリアン先生もガリウスも背いていたから!」


タスメさんはどこか遠くを見ながらボソッと話したつもりだったけど、思いっきり俺にも聞こえていたし品子さんにも聞こえていたらしい


「その、敵に関しての話しッスけど

俺が依頼をしている時に聞き込みをし回ったッスけど

ヒューラルとその周辺にはいないみたいッス

それに……前勇者の真実を聞いて、みんな混乱していたり心が落ち着いていないと思うッス

その敵をどうするかに関してッスけど、王都に戻ってから詳しく聞いた方がいいと提案するッス

……意見が割れる可能性もあるッスし」

「……タスメさん?どうして急に前勇者関係の話に入って来たんだ?

今まで王の命令で言えないってのは分かってるけど……どうして今回?」

「…………ハァ……今回の勇者達は優しくてよかったッス

ちゃんと正しい行動をしていたとしてもッスが、俺が知っているのに秘密にしている様子に苛立ちを感じたりしてい無いッスよね?」

「もちろんだよ!」

「決して不快に思ってないよ、王に命令されているならしょうがないと思うし」


蜜巳さんは泣きながらもうなづいていた


「……本っ当に優しくてよかったッス

正直に言うッスけど、言いたいのに隠し続けている事と……ソラアミセントから聞いた、想像以上の奴らの悪行に結構気が滅入ってしまったッス、大事な話をしているのにワガママ言ってて申し訳ないッス……それが理由でちょっと中断してしまったッス

でも、話してもらってありがとうッス」


タスメさんもずっと抱えていたんだな……申し訳ない気持ちになって来る


「いや、俺から言っておきながらアレだけど、ギルド依頼とかで信頼を得るって言って時間をかけてしまってすまなかった」

「いや、謝らなくていいッス」

「わ、分かった、話は早めに切り上げるようにしよう

特に敵討ちに関しての話題は端的にする

でもいくつか質問に答えて欲しいんだ……王の命令で無理でなければ」

「背くからできる限りは答えるッス」

「その『前勇者がまず生きていてこの世界にいる前提』で言っていたけどそれは……?」

「……この世界にまだいる、とは言っておくッス

でも、真っ先にそいつらを倒しに行くとかまだ思わないで欲しいッス

今は目の前のヒューラルの事を完了してからにして欲しいッス」


やっぱりこの世界にまだいるんだな


「ただ……敵に関する事ッスけど

……多分戦って敵を取ることになると思うッス」

「え?敵は取れるのですか?」

「言っておこうと思ったッス、ソラアミセントっていつもは優しいッスけど盗賊などの悪人に対しては容赦をしないような感じが見えたッス、勝手に『悪を許さない人』と思っているッスけど」

「まあ、それはあってる」

「それでもし『前勇者とは戦えない』と言ったら、嫌な気持ちなのに発散されないようなことになったと思うッスから」

「お気遣いありがとうございます

本当にそれを聞いてちょっと安心できた」

「よかったー悪い人は止めないとね!」


少し驚いた、品子さんはコミュ力高いからこそ復讐や(かたき)に対しても話し合いをする可能性をちょっと感じていたし、それで意見の食い違いが起こるんじゃないかと思ったが

この辺りは相違の無いことになりそうで良かった


「……あ…………の」

「え?蜜巳さん?大丈夫か?」


ずっと品子さんにしがみついていた蜜巳さんがちょっと声を出した

まだ、品子さんに顔をうずめているから表情が見えないけどどうしたんだろう?


「あの…………私からも………………辛いことを……………………教えていただき…………………………………ありがとう…………ございます」

「……どういたしまして」

「みーちゃん、がんばったね」

「………うん」


無理をさせてしまったかもしれないけど、それでも言っていただきありがとう


「最期にタスメさん」

「どうしたッスか?」

「タスメさんは、前勇者の事を知っているのは分かったけど

これって……どこまで知っているんだ?

もしくはどこまで話せるんだ?」

「……王都からの事ッスけど、それぞれの国の事情までは俺どころか王都も理解してないことが多いッス、他の国もそれぞれの事で手一杯ッスし」

「そういえば、王様と話した時に聞いたな……」

「あくまで『前勇者がそれぞれの国で迷惑をかけた』ことを知っていただけで

詳しくは知らなかったッス」

「つまり……湖の事や子どもたちの事は知らなかったってことか?」

「そうッス」

「分かった、本当に教えてもらってありがとう」


その後は解散になった、風呂に入って涙を流して

寝床に入った

………けれど、今回聞いた真相

非常に残酷な真実

聞いた時のショックは、相当精神に影響をしていたのか中々眠りに入れなかった

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